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女王陛下の憂鬱

こんばんは GWとやらが終わるようですね まぁ関係ないんですけどねぇ

「 ねぇねぇ シローちゃん 」


「 ダメだよ ルー  そんな簡単な話じゃないんだから 」






森である、 いったいどのくらいの広さがあるのか検討もつかないほどの広大な森

その森の ほぼ中心と思われるところに、一際巨大な木が聳えている


その巨木の根元で大人が何人手をつなげは その見事な胴回りを囲めるのだろうか

100人か200人か それ以上か


天にも届かんとする その大樹は 始まりの芽と呼ばれる木


それがいかなる種類の木なのか 誰も知らず

それがいつからこの地にあるのかも 知る者はいない


現存する最高齢のエルフが幼子の頃に すでにその始まりの芽と呼ばれる大樹は今と変わらぬ大きさと威容を誇っていた。


伝説によれば、生命神がこの世界に降り立ったときに その服の裾に付いていた種が地に落ちて芽を出し 喜んだ生命神の祝福を受けて10日の後に今の大きさになったとされている。


そしていつの頃からか、その森はエルフの里となり国となる

始まりの芽は、歴代のエルフ女王が住む場所となった






現女王とその配偶者も、例外なく 始まりの芽 その大樹の根元にある王宮に住んでいる



王宮といっても 華美を好まないエルフのそれである 


人族の想像する物とは懸け離れている


2階建てで 部屋の数は5つ程


使用人はおらず 女王と配偶者が暮らしているのみ




そもそもエルフには財産という概念が希薄であり、土地や家にも所有権という概念があまりない


当然のことながら階級や役職にもこだわりがほとんど無い




ただ、太古の昔ならそれでも問題の無い時代はあった

今より世界の人口は少なく、エルフは隔絶した森の中だけで暮らしていけた



だが 時が過ぎ この世界には人が溢れ始めた

エルフと言えども 多種族との関わりや軋轢の中で生き抜かねばならない時代となり


歴史の中で幾度かの望まぬ争いも経験し 少なくない血も流れた


そして エルフ女王国は誕生し 

歴代の女王が他国との政治的闘争や実力行使によって

勝ち得た地位が、現在のエルフ女王国の立場に繋がっている



すなわち 手を出さなければ 基本的に静観してくれる巨大国家

卓越した魔法力を持ち 優れた文化を生み出す超大国

良質な魔道具と魔法知識の宝庫 謎の多い美しい国


ここ数百年に渡って、エルフ女王国に手を出そうとした国は無い


ちなみに最後に( 数百年前に )エルフ女王国の侵略を企てた愚かな国家は

開戦3日で侵攻軍3万の全てを失い

20日後に首都で反乱が発生し

2ヵ月後に滅んだとされている






「 だってぇ リックちゃんの赤ちゃんよぉ 最初のお嫁さんのマーサちゃんに4人も生まれたらしいのぉ 孫の顔がみたいぃぃぃ  !! 」


ここは 念のために申し添えるが エルフ女王国の王宮である

繰り返すが ここにいるのは現エルフ女王陛下その人と その配偶者のみである


「 気持ちはわかるけどさぁ 」


「 シローちゃんだって みたいでしょ マーサちゃんとの子供だから 間違いなく女の子でウサ耳よぉ 絶対にぃ可愛いものぉぉぉぉ 」


この思い切り我がままを言っているのは 現エルフ女王国君主  ルーナリエ女王陛下その人


その相手をしているのは 王配にして勇者であるシロー殿下である





ようするに 女王陛下は 愛する息子と嫁の間に産まれた孫の顔を見に行きたいのである

まぁ親としては当然であろう 1人息子が結婚し子をなしたすれば 孫を見たい孫を抱きたい それは人情というものであろう

あまりに可愛いので歌にしてしまう人も世間にはいるくらいであるし

それが流行になるくらい、自らの孫というものは可愛く愛おしいものなのであろう


「 でもさぁ ルー・・・  そんな立場ではないでしょう 」


「 ぷぅぅぅ 」


どうみても 人族基準で言えば10代後半の少女にしか見えないルーナリエ女王陛下であるが

エルフであり神々からの祝福を得ている存在のため 見た目と実年齢は一致していない


実際は%&$・・・ どうやら実年齢は禁則事項であるようで この王宮内で語ることは不可能なようだ。


しかし彼女には息子も孫もいることは事実であり 会いたい気持ちも理解は出来るが


王配であるシロー殿下の言い分も最もなところではある。


エルフ女王国は本来政治的な行動を好まないエルフ達が苦肉の策として作り上げた制度である


選ばれた女王と王配が政治の表舞台に立ち

名目上の首都と定められた、大森林外縁部に作られた都市 エルファには特別な教育を受けた外交官と貿易を担当する通商官、そして魔法で国を守る武官達が駐在している

基本的に少数精鋭というか、ごく限られた人数で国家運営はなされており

それを可能にしているのが魔法技術となっている


エルフ魔法の秘中の秘であるが、始まりの芽の枝を使った魔法人形を使うことにより諸雑務や警備、果ては農作業や書類整理まで行うことが出来るとか・・・


だが国家運営の決断や、最終決済それに各国要人との面会や公式行事は女王及び王配の重要業務であり

そう簡単に留守にするわけにはいかないのだ・・・


それが息子と孫に会うためでも



ちなみに大森林中心から首都エルファまではエルフの足でも20日以上かかるが

女王と王配のみが使える転移魔方陣があり、一瞬で首都まで移動できるようにはなっている


しかし首都までは一瞬で行けたとしても、そこから息子のいるクレイファ共和国までは大陸縦断が必要であり

この世界最速の乗り物である急行馬車でも いったい何日かかることか


しかも往復である 


一般市民ならいざ知らず 一国の君主が国を空ける事が出来る日数はごくわずか

とても不可能なことなのだ



「 きっと向こうから訪ねてくるから それまで待とう な 」


自らも会いたい気持ちはある 可愛い女房の思いを叶えてやりたい気持ちもある

だが、それ以上に責任というものは重いのだ


自らの叔父がそうであったように まつりごとの世界に身を置くものは 

公に尽くし 私欲を滅しなければいけない それが政治家という立場である そう教わってきたのだから。



「 じゃあ さぁ 今の仕事を終わらせたらぁ 3日休めるって話だったよねぇ 」


「 あぁ もうずいぶん休んでないから 首都の連中も3日は休んでくださいっていってたしね 問題ないでしょ 」


「 ふーーーーん   じゃあ 明日の午後には終わらせるように頑張るから 3日半だねぇ ♪ 」





急に上機嫌になったエルフ女王陛下なのであります。


今日もお読みいただき感謝感謝でございます

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