天網恢恢疎にして漏らさず
こんばんは 今日もよろしくお願いいたします
「 じゃあ その方向で調整に入ってもらおう 」
「 ええ あなた そうしましょう 」
ノエルの提案に完全に同意することにした
当然のことながら、例の入植地話だ。
ノエルから説明を受けたのは、まず入植地の最新現状報告。
第一期の入植者に続いて、すでに第二期入植者の選定に入っていること
これについては、予定が早まっているのだ。
というのも最初の入植者達から話を聞いた、彼らの親戚や友人が入植希望を大地教にどんどん出してきているのだ。
世間的にみると、信じられないほどの好待遇過ぎて疑ったり躊躇していた人たちが
第一期入植者の生の声を聞いて、その好待遇が噂以上に凄い事を知ったのが原因
そのため予定を早めて第二期の募集を開始し、同時に審査も行っている
第一期以上に厳格な審査が実施されているが、審査を通った人も出始めている
という訳で人口も増えてくるのが予想される。
さらには特別枠ではないのだけれど、大地教からの協力要請があるのだ。
大地教では孤児院を運営しているのだけれど
問題は孤児院を卒業した元孤児たちの仕事先にある。
大地教の孤児院では読み書きも教えており、十分に働き手となり得る素質を持った子供を世に送り出すのだけれど
元孤児という事で差別されたり、特に獣人の元孤児は中々仕事に有り付けないのだ
悲しい現実だが、騙されたり借金を抱えて身売りをする獣人の元孤児は多い
そこで大地教の孤児院からの願いが、入植地で働かせてもらえないだろうかとのこと
今現在孤児院で成人を迎える年頃の孤児のうち、7人が未だ定職に有り付けていない
全員が獣人だ・・・
「 私も 個別に会って話しましたけれど みんな可愛らしい真面目な良い子達です 獣人ですので身体能力は高いですし 農作業自体は孤児院には畑もあったので手伝っていたそうですわ 」
「 それはいいね 」
ノエルの説明によれば、孤児院ではしっかりと躾や労働もしているし、その子達は生活態度もとても良いらしい。
「 じゃあ その子達も第二期入植者に入れるんだね 」
「 はい、 そのことも含めての要望なのですよ 」
入植者の中には当然のことながら独身者も多い、第二期入植への応募者にも農家の次男、三男などの独身男性も多数いて
審査に通れば入植してもらうのだけれど
入植地は街から歩いて半日ほどかかる距離だ
食料や日用品はすでに許可を与えた行商人が週に2回ほど出入りしているので今のところ問題は無いのだが
日々の食事が不便なようで・・・
第一期入植者は人数も少ないので、独身者の多くは自炊か仲のいい家庭に食費を払って食事を供してもらっているようだが
いずれ人数が増えてくればそうもいかない
また入植地では養鶏の計画や、綿花や菜種といった商品作物の栽培も計画されている
今後も労働力を必要とする場所となり、若い独身者は集合住宅の利用も視野に入れている
その若年独身者の食事や生活管理のための管理人をノエルは探していたのだ
「 じゃあ そこに 」
「 はい もちろん御夫婦の希望もありますから勝手に決めるわけにはいきませんが 」
「 じゃあ 早速確認しておこう エリン~ 」
僕は専属メイドのエリンを呼んで、老夫婦の意向を確認してもらおうと思ったのだけれど・・・
「 はい ご主人様 テオル殿、レーサ殿 御両名とも喜んでお受けするとのことです 」
「 ・・・ はぃ? えーと テオル殿って 」
「 テオル殿は料理人にして御亭主で、レーサ殿は裁縫や洗濯なども任せてほしいと張り切っておいでの奥様です 」
ぅん もはやさぁメイドの嗜みとか言うレベルじゃないよね 予知能力なの? 推理力なの? メイドのメイは名探偵のメイですか?
色々突っ込みたかったけれど、多分無駄だと思うので諦めた
「 じゃあ 御夫婦ともに納得してくれたんだ 」
「 はい とても感謝しておいでです 御夫婦は残念ながら子宝に恵まれなかったのですが 若い世代の世話をできる事をとても喜んでいます 」
結局、御夫婦の借金は僕が肩代わりして支払って、お店の土地と権利と相殺することになった。
悪徳金貸し連中は、あの付近の土地を地上げ目的で他にも手に入れていたみたいだけれど
テオルさん夫婦の店と土地はその中でも中心的な場所にある、そこを僕が手に入れてしまい
しかも大地教と協力して良質な治療院を立ち上げた。
「 新しくできた大地教の治療院は優しいし 安心な値段でいいよぉ 」
「 あぁ うちのかぁさんも通ってるけど 足腰がすごく楽になってすっかり元気になったよぉ 」
「 これで高い薬を買わなくても済むよぉ そういえば悪い噂のあった薬屋が捕まったらしいねぇ 」
「 お天道様はきちんと見てくれているってことだよ 」
これは今少し後の街の会話
ちなみに御夫婦は
デニエの治癒魔法ですっかり元気を回復し、健康で若返ったかのようになり
入植地の独身者向け集合住宅の名物料理人と名物寮母として末長く勤め
若者たちから親しみを込めて
「 お父さん 」 「 お母さん 」
そう呼ばれてゆくことになる。
悪いことは出来ません そういうことですね