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交点

こんばんは 世間的にはゴールデンウィークのようですが、平常運転でございます

「 子供達のお世話ですか? 」


「 そうよ とりあえずはリータ、レム、フェンと遊んであげたり、遊びを教えてあげて欲しいの 」


エミィさんと話をしているのは、メイドのナージ


「 でも ・・・ 」


「 あのね 子供達の面倒をみるのも大事な仕事なのよ 一緒に遊ぶだけでなく、よく出来たら褒めてあげる、失敗したら慰めて励まして再び挑戦させる、そして悪いことをしたらしっかり叱る。 あの子達の成長の助けになる仕事なの 」


エミィにとって仕事とは、商会での業務であり 憧れを持って見て来たものが全てだった。

指示を出し決断をする母親、 帳簿を確認し予測を立てている幹部職員  指示を受けて自らの役目を黙々とこなす従業員達


いずれもエミィには手伝うことも儘ならなかった仕事だ


自らの不運や不幸を何度恨んだ事か、部屋に引きこもりながら何度枕をぬらしたことか





だが 屋敷内限定とはいえ 不運や不幸から開放された

奇跡のような出来事が起こった


しかも仕事を与えてもらえる  信じられないほど嬉しかった





そして与えられたのは 子供達の遊び相手という役目


華々しくもなく、重要だとは思えない仕事だった・・・






最初に会ったときは


やけにしっかりした子供達だと思った


「 はじめまして エミィといいます 」


「 こんにちは あたいはリータ 」 虎族の子供が名前を告げてくれる


「 こ こんにちは・・・  あ あのぉ フェンです よろしくお願いします    そ、それとこの子はレムだよ 」


犬族の子はレムと名乗り、そばでこちらを伺うようにしている子はレムだと教えてくれた


まだ年端も行かない子供達・・・


この子達と、もう1人狐族の子はこの家の主であるリック様の養子だという





警戒されているようで、子供達はよそよそしかった


そして 聞かされた衝撃的な話


子供達は全員スラム育ちで、親に捨てられ ひどい暮らしをしていたらしいこと


その日の食べ物にも困る有様で、思い余って当たり屋の真似事をして、保護された事実






一歩間違っていれば・・・ この子達は


「 理不尽です!! そんなことって 」


怒りがこみ上げてくる やり場のない怒り 世間に対して 大人に対して


「 で 貴女はどうしたいの? 」


その怒りのままに発した言葉に対して、彼女の教育係であるナージは問いかける


「 え、 あ ・・・   そうです スラムから可哀想な子供達を救い出してですね    そうです 美味しいものを食べさせて 」


「 それで 」


先を促すような声


「 そ そうです 世の中から不幸な子供を無くすのです 」


「 具体的には 何をしたいの 」


「 そ それは もちろんですね  たとえばぁ 孤児院を作ってですね 」


ナージの冷静な突っ込みに対して、しどろもどろに答えるエミィ


「 今も孤児院はありますよね 資金も国が補助しています。 他にも貴族や豪商の一部は積極的に養子を迎えている方も居ます。 そもそも、レヒート商会も慈善事業に資金や土地を提供しているはずですが 」


「 あうぅ・・・ 」


エミィは今更ながらに、自らの不勉強、経験不足、そして世間知らずであることを恥じ入るのだった






「 エミィさんの 憤りや心情は理解できますが 感情のままに社会が悪い、貧困が悪いと述べるだけでは何も変わりません それは単なる子供の癇癪と一緒です 」


「 ・・・  はぃ 」







現実とは世知辛いもの、世の中は甘くないもの


事情はどうあれ、引き篭もりに過ぎなかった人間が出来ることなどほとんどないのだ


まして 長きに渡って引き篭もりを許されてきた事自体が、それを許す財力のある家庭だったから出来たこと


今の彼女がいくら怒り心頭に達しようが、義憤に駆られようが 何の説得力もないのである






「 貴女が今なすべきことは、自らに与えられた責務を全うし 経験を積み上げることだけです 」


「 ・・・ 」


エミィには何も反論で聞きなかった






しかし そんなエミィを救ってくれたのも

子供達であった


スラムから救い出された子供達と一緒に過ごし、一緒に食事を取り

少しずつ距離を縮め、というか子供達が歩み寄ってくれた



「 エミィおねぇちゃ~ん 」


「 一緒に遊ぼうよぉ ほらぁ こっちこっち 」


「 あのね おままごとしたいの  この前の続き 」





スラムで育った幼い子供達と、大商人の娘(引き篭もり)

普通であれば交わらない線が重なって、そこに救いが生まれたようだ。




本日もお読みいただき、まことにありがとうございます。

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