優雅なティータイム
こんばんは 本日のお話です
エミィさんが我が家に来てから10日ほど過ぎた
その間に判明したことは、この屋敷の敷地内に居る限り彼女は普通に生活できるということ
まだメイドの仕事に慣れていないので、たまに失敗してつまずいたりするが
それは引き籠っていた彼女の経歴を考えれば、問題の無い話
実際に少しづつ仕事を覚えていくにしたがってミスも少なくなっている
なによりこの10日間で、理不尽な事故が彼女の身に一度も降りかかっていない
これは本人にとっても 母親であるネリィさんにとっても信じられないことのようだ
やはり心配なのか、忙しい業務の間を縫って3回ほど様子を見に来たネリィさんだが
涙を流しながら喜んでいて 毎回感謝されまくる
僕が何かをしたわけでもないし、相変わらず屋敷の敷地から一歩外に出た瞬間には
不幸や不運が襲ってくる事実には変わりがない
何度か試したけれど、結果は同じ
ある時は、何故か敷地から踏み出した足の下が陥没してしまい
またある時は、3歩離れた所で近所でもおとなしくて有名な野良猫に襲われ、服がボロボロになってしまう
そして、気を取り直して裏口からこっそりでてみたところ何故かそれまで晴れていた空が急に暗くなり、ゲリラ豪雨でびしょびしょになる始末・・・
敷地内で何も起こらない分、敷地外に出た時の反動が大きいのかと思わせるような不幸不運のオンパレードだ
「 まぁ 屋敷の敷地内に居る間は問題ないのですから とりあえずは居ていただきましょう 」
無駄に広い中庭で、子供たちの相手をしてくれているエミィさんを眺めながら
デニエが僕に話しかけてくる
「 そうだね こうしている分には普通の女の子だよねぇ 」
スラムから抜け出して我が家へやってきた、4人の獣人の子供のうち
リータ、レム、フェンと一緒に遊んでくれている
ちなみに最年長のレックは、先日から少しづつ読み書きの勉強を始めているので
今はこの場にいない、先生は子供たちの面倒を見てくれている鹿獣人のメイド レニーだ
マーサの赤ちゃんを見て、さらにお姉ちゃんとしての自覚が出てきたレックは
自ら読み書きを覚えたいと言い出して、とても頑張っている
ここに来た時は病気だった兎族のレムもすっかりと元気になって
最近仲良しになった、狼のレウィとじゃれ合っている
レウィはとても賢いので、子供達と遊んでも全く問題ない
すっかり賑やかになって来た、我が家の日常の光景だ
「 エミィねぇたん!! ほら ほら見て 」
フェンが何かを見つけたようで 小さな両手で何かを持ってエミィさんの側へ走ってゆく
「 なーに フェンちゃん 」
「 これこれ ほら可愛いよぉ 」
フェンがエミィさんの目の前で広げた掌には、小さなカエルの姿
「 ひやぁぁぁぁぁ か か かえるぅぅ 」
どうやらあまり得意でないらしいようでエミィさんが変な声をあげて固まっていると
フェンの小さな掌の上から、小さなカエルは飛び跳ねて・・・
よりによってフェンさんの顔に飛びついた
「 あ カエルさんってばぁ 」
「 ひぃぃぃ やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ 」
何もそこまで怖がることも無いだろうレベルで、腰が抜けたようにへたり込むエミィさん
まぁこれは無邪気な子供のいたずらなので、きっと不運とかではないだろう・・・
その後、悪い事をしてしまったと落ち込むフェンと
我に返って必死で そのフェンを慰めるエミィさんの姿を見兼ねたように
メイドのナージが声を掛けた
「 さぁ おやつにしましょう みんな手を洗ってください 」
いつの間にか、中庭にテーブルと椅子が用意されており
どうやらティータイムになるようだ
「「「「 はーい 」」」」
「 あぉーーん 」
子供たちとエミィさん、それにレウィも元気よく返事をすると
手洗い場に走っていった
「 ご主人様 奥様 お茶の用意が出来ました 」
微笑ましい様子を眺めていたら、いつの間にか僕らのお茶も用意されていたようで
僕らのすぐ後ろにもテーブルセットとイス
それにサービスワゴンを用意した専属メイドのエリンの姿
「 さすがエリンね 」
ニコニコとその姿を眺めるデニエ
「 うん もうエリンが居ない生活は考えられないかな 」
「 はぁぅ 」
僕らの褒め言葉に、普段はクールなエリンの姿勢が一瞬崩れかけるけれど
そこは流石のスーパーメイド
「 身に余る光栄です これからも精進いたします 」
直ぐに冷静さを取り戻したように見える・・・ 一見
でも
良く見ると 狼族の特徴である ふさふさの尻尾が 思い切り揺れて
喜んでいるのがよく分かる
「 うん うん エリンは 可愛いねぇ 」
みんな元気に暮らしております