命名
こんばんは 本日のお話になります
「 マーサぁ 」
眠っているかも知れないので、そーっと部屋のドアをノックしてから小さな声で呼びかけました。
起こしたら困るしね。
「 大変に良いお気遣いでございます、旦那様 」
ドアを薄く開けて中を伺っていたところ、メイドのマリが中から小さく声を掛けて招き入れてくれました。
どうやら正解だったようです。
「 もしかして 眠ってる? 」
「 はい 良くお休みですよ。 大丈夫、マーサ様は起きていらっしゃいますので どうぞ 」
静かに室内に入ると
ベットの中で天使が4人眠っています。
もう何度見ても可愛いのです、本当に天使です。
すぐそばで寝顔を眺めていたマーサがこちらを向いて口を動かしています。
[ 決まった? ] 唇を読み取ると そう言っているようです。
それに対して僕は大きく頷いて返すと、マーサがにっこり微笑んでくれました。
『 赤ちゃんの名前が決まったらしいよ 』
『 えー 気になるね 』
『 どんな名前かなぁ 』
『 あい 私たちの子供にも参考になりますね 』
急に脳内が騒がしくなりました、念話が飛び交ってあっという間に名前が決まったことが伝わったようです
もちろんみんなにも伝えますけれど、最初はマーサと娘たちに伝えたいので。
用意してきた物を机の上に広げますかねぇ。
「 旦那様 お手伝いいたします 」
小声で声を掛けてきたマリに手伝ってもらい、机の上を片付けて道具を用意しました。
「 ありがとう マリ 」
「 メイドの務めですわ・・・ ところで旦那様・・・ それは? 」
流石のメイドさんも僕の用意している物は見たことが無いようです。
「 うん これはね 」
僕が机の上に置いた木の箱から取り出したのは
まず硯に墨 それを見てマリが疑問を投げかけてきたのだ
まぁ分からないよねぇ この世界には無いみたいだし。
「 はい 」
僕の手元をじっと見つめるマリ
マリの視線を感じながらも、硯に水入れから水を注ぎ気持ちを落ち着けて墨を擦る
実は子供の頃から習って来た書道
集落の爺様に教えてもらった。 墨汁なんて一度も使ったことが無くて、学校で習字の時間に初めて存在を知った。
静かに墨を擦っていると、徐々に落ち着いてくる。
単調なリズムが部屋に響き 墨の香りが広がる
マリもマーサも静かに見つめていてくれているのだろう
やがて 硯には黒々とした成果が残り 心構えも出来た
机の上には、真っ白な半紙
記すのは、可愛い可愛い娘たちの名前
そう 書に残したかったのだ
「 これはね 僕の育った世界の筆記具で 筆というもの これで今から娘たちの名前を一人づつ記してゆくね 」
そう宣言すると 僕はまず最初に産まれてきてくれた娘の名前を思い浮かべた
小さな小さな可愛い娘
髪の毛は茶色でうっすらと見える瞳の色も灰色
マーサに一番似ている感じのする長女
命名 ココノ
僕は半紙にランドベールの言葉を綴る
続いて2番目に現れてくれた天使
髪の毛は黒が基調でメッシュを入れたように明るい茶色が入っている おしゃれな娘
きっとマーサに似て美人になる
命名 エルナ
半紙には黒々とした文字が躍る
そして3番目に生を受けた愛し子
明るい赤毛の可愛らしい髪で 瞳は燃えるような赤
間違いなく母親譲りの美人だね
命名 ニンファ
筆までも嬉しげに踊っている
最後にひときわ大きく声を上げて誕生してくれたのは
見事な銀髪に漆黒の瞳を持った 僕の宝石
マーサの美しさを受け継ぐ愛しい子
命名 シルエッタ
心を込めた筆が最後の文字で止まる
「 ココノ エルナ ニンファ シルエッタ ・・・ 」
マーサが歌うように娘たち一人づつの顔を眺めながら、言葉にしてゆく
まだ生まれたばかりで、理解できるはずもないし それ以前に眠っていたはずの娘たちが
まるでマーサの声に反応するかのように、一人ずつ目を開けて
「 まさかね・・・ 」
僕は小さく声を上げてしまう
「 きっと 分かったんだよぉ パパが付けてくれた名前 みんな気に入ったってことだよ 」
マーサの言葉に同意するかのように 確かに娘たちの顔が微かに変化した。
気が付けば
セオを筆頭とするお嫁さん達が 息をひそめて見つめていた。
みんなも嬉しそうに微笑んでくれている
名前が決まりました 名前の由来等は明日の投稿にて