ある下級文官の日常
こんばんは 少々いつもより投稿が遅いです
「 最近 なんかうちの女房がえらく若返った感じでさぁ 」
「 おお 何かいい香りがするってうちの娘が騒いだたぞ 」
路地裏の飲み屋で、仕事終わりにいつものように飲みながら話す男性客2人
女房が若返ったと語っているのは下級文官の男だ
結婚して10年以上経っており、子供は2人いる。
相手をしているのは、同じく下級文官の同僚
結婚は彼のほうが早かったため、彼の娘はまもなく成人を迎える年齢だ。
下級文官のための長屋で隣同士ということもあり、家族同士の付き合いも長い。
「 そうなんだよなぁ 最初はいい香りがするなぁ 香水でも変えたのかな? ぐらいに思っていたんだけどよぉ。 髪がな サラサラになって、しかもよぉ肌が こうなんていうか、昔の艶を取り戻したって言うかよぉ 」
「 おいおい なんだよそりゃ ・・・ おい!! 若い男と浮気とかじゃ 」
「 ば!! バカなこと言ってんじゃねぇよ!! うちはガキも呆れる位のおしどり夫婦だぞ いくらてめぇでもうちの女房を侮辱するようなことをいいやがると ただおかねぇぞ!! 」
真っ赤になって声を荒げる若返りの女房の旦那
「 おお すまねぇ このとおりだ勘弁してくれ 」
必死で謝る相手の男
「 おう いいってことよ まぁ本気で言っているようだったらぶっ飛ばしてやるところだが、水に流してやらぁ 」
「 へへ すまねぇ それでじゃあ 何で若返っているんだよ 」
「 おう、それなんだけどよぉ 先月くらいによぉご婦人向けの新しい店が出来たの知ってるだろ 」
「 ん ? あぁ ミール女史がこの前騒いでいた店か 」
下級文官である彼らの上司に当たるのが、ミール女史と呼ばれている年齢不詳の中級文官だ。
エルフの血が入っているらしく、彼らの勤める役場では最古参職員であり
現トップの場長が新人時代に教育担当だったらしく、職場を一歩はなれると場長も頭が上がらないとか・・・
「 そうなんだよ その女史も最近妙に色っぽいと思わないか 」
「 あ、 ぁぁ 」
思わず声を潜めるおっさん二人
「 なんかよぉ 元々美人なんだけれど残念系っていうか 張りがない感じだったのがよぉ 」
「 おお 妙に艶が出てきたいうか すれ違うと 妙に気になるよな・・・ って もしかすると 」
何かに気がついたような相手の問いかけに対して
「 そうなんだよ うちの女房もその店に行ってからなんだよ 」
彼らが話しているのは、この街に新たに開店した店
名前は ≪ご婦人の店 テルル≫ 黒山羊獣人のメイドさんが店長を勤める、女性をより輝かせるためのお店
そこではエルフ女王国秘伝の化粧品や高級美容液、洗髪剤や髪の調子を整える効果のあるもの、そして身体の中から美容の効果を発揮するポーションといったような
女性が食いつかずに居られない品々が、手の届く価格で売っている
店自体がさほど大きくなく、店員も店長と日替わりのアルバイト店員が何人か居る程度らしくこじんまりとした商売のようだが
その商品の効果は素晴らしいものがあり、女性達の間にすさまじい勢いで口コミが広がっている赤丸急上昇中の店なのだ。
旦那二人が飲み屋で管を巻いていたころ
下級文官の長屋では
「 ねぇ 母さん 」
「 ん ? ご飯はもう少し待ってねぇ 」
いつもより遅い夕飯の支度をしながら、母娘が会話をしている
「 あぁ 大丈夫 それよりさぁ お隣のデオ君のママさぁ 最近若返ってない? 」
娘さんは成人を控えたお年頃であり、お化粧にも興味が出てきているお年頃なのだ。
ましてや子供のころから知っているお隣のお母さんが妙に若返っているいるとなれば気になるもの仕方がない。
「 あぁ そうなのよぉ なんでもね新しく出来たお店の化粧品や洗髪料を使っているんですって。 私も今度一緒に買いに行くのよぉ 」
「 ええーーー なにそれぇ 母さん ずるーーーーい 」
「 あらあら じゃあ 一緒に行く? 少し早いけれど成人のお祝いに買ってあげるわよ 」
「 やったーーーーーー !! ぁ でもさぁ 高いんじゃないの? 」
少女は素直に喜んだものの、自分の家は下級文官であり貧しくはないものの裕福とは言いがたいという事実に気がつく
「 それがね そうでもないの それにぃ へそくりもあるから大丈夫よ 」
娘にウインクをする母
母娘の嬉しげな会話は続く
「 それとね そのうちにデオ君とリーガ君に弟か妹が出来るかもねぇ うふふ 」
「 へ??? 」
お隣の兄弟は10歳と8歳、子供のころから何かと面倒を見てきた弟のような二人
確かにお隣のお母さんは娘を欲しがっていたけれど・・・
「 まぁ フレイさん本当に若返って綺麗になってるものねぇ 羨ましいわぁ ・・・ あらら 大変焦げちゃうわぁ 」
「 ??? 」
まだ成人前の娘さんには理解が難しかったようだが
「 ほら もうパパ帰ってくるから 手伝って 」
「 え まだでしょ 今日はお休み前だから 例によってお隣のお父さんと飲んでるでしょ 」
下級文官の勤務先である役場は日曜日が休みなので、今日のような土曜の夜は遅くまで飲んで帰ってくるのが習慣になっている
間違ってもこんな早い時間に帰ってくることはないのだが・・・
そのとき 玄関が開く音がして声が聞こえる
「 帰ったぞぉ 土産も買ってきたぞぉ 」
それは間違いなく父親の声
「 ほらね 」
得意げな母親の顔
「 ??? なんで??? 」
彼女は理解できなかったようだが
父親が一緒に飲むのはお隣のお父さん、同じ職場で隣同士であり長い付き合いの二人
片方が早く帰りたがれば 1人で飲むのもつまらないので一緒に帰ることとなる
妙に若返ってハリを取り戻した奥方と早く帰って仲良くしたいということ
そして当然のことながら母親同士もとても仲がよい
そのお隣のお母さんが最近妙に若返って綺麗になっている
そして、自分の母親がさりげなく話した、お隣に家族が増えるかもという話
風が吹けば桶屋が儲かる
新しいお店が出来ると、父親が早く帰ってくる
一見何も関係のないことが実は繋がっているというお話・・・
ちなみに・・・
数ヶ月先の話ですが
成人を間近に控えた娘さんにも 妹か弟が出来るわよと母親が嬉しそうに伝えたとか
テルルが儲かると ベビーブーム到来
お後がよろしいようで
ちょっと 脇道にそれた話になっています