孤児
こんばんは 本日もお読みいただきありがとうございます。
「 とりあえず 外に出よう 」
僕はセオに話しかけると、席を立った。
「 どうぞ ご主人様 」
僕付きのメイドさん、狼族のエリンが素早く馬車のドアを開けてくれる。
馬車の側には子供が3人しゃがみ込んでいる。
傍らにはメイドさん達、子供の中の一人が必死で他の2人をかばっている。
きっと一番年上なのだろう。
「 ごめんよ まさか貴族の馬車だなんて思わなかったんだよ・・・ そ、それ に わ 悪いのは俺だから、こいつらは俺に言われただけだから 」
狐族の子供が一生懸命に訴えかける
「 違うよ レックは、レック 怪我で素早く動けないし、 あたしも 足が悪いから・・・ フェンが・・・ 」
子供たちはお互いに庇いあっているようだ
年端もいかない子供たちがボロボロの衣類に身を包み危険を承知で当りやまがいの事をする現実
1人が轢かれたふりをして、1人が騒ぎ立てる、場合によっては近くの衛兵詰所に飛び込む算段までしているのだろう。
しかし所詮は子供・・・ 下手すれば轢かれて終わりになりかねない
メイドさんが話を聞き出しているのだが
どうやら大人の真似をしているらしい、どうしても金が要るらしい。
「 だって レムが・・・ レムが 死んじゃうかもしれないんだ 薬が必要なんだよぉ 熱が下がらないんだ 」
泣きじゃくりながら訴えるフェンと呼ばれた馬車に飛び込もうとした一番幼く見える獣人の子供。
その子の訴えによればどうやらもう一人病人が居るようだ。
「 ロメイ リン その子に案内してもらって レムって子を連れてきて 屋敷で治療する 」
僕はノエル付きのメイド、犬族のロメイさんと セオ付きのメイドで竜人族のリンに向かって指示を出した。
「「 はい ご主人様 」」
ロメイが、呆然としている犬族の子供に声を掛ける
「 病人は何処? 案内して 」
「 え、 えぇぇ でも 」
戸惑う犬族の子供、それはそうだよね いきなりそんなことを言われても・・・
「 犬族は同族を見捨てないわ 安心なさい 」
ロメイはしゃがみこんで目線を合わせて声を掛ける、同じ犬族ということで咄嗟に指名したけれど正解だったようだ。
「 う、うん こっち 」
「 ご主人様 行ってまいります 」
ロメイさんが僕に向かって声を掛けてから、リンと一緒に暗い路地に向かって走り出していった。
「 ジリア エリン その2人を馬車に乗せて何か飲ませてあげて 」
とても混乱している狐族の子供と、虎族らしい子供を馬車に乗せるように残ったメイドさんに指示を出す。
「 さぁ おいでなさい 」
メイドさん達が獣人であることが子供たちの警戒心を多少緩めてくれているのだろう、2人の子供は素直に馬車に乗り込んでくれた。
幸い大きな馬車であり乗車人数には余裕がある、ましてや小さな子供達なので何とでもなる。
「 さぁ これをどうぞ 」
ユーンが高位収納から取り出したのは温かいミルク、蜂蜜を入れてあるので甘いやつ。
突然目の前に出された、温かい飲み物に驚く子供達。
「 ・・・ 俺たち 金も身寄りもないよ ・・・ 」
「 大丈夫、お友達もすぐに来るから 先に飲んで待っていましょう 」
ノエルが優しく語り掛けると、子供たちはおずおずと目の前の湯気を立てるカップに手を伸ばしてゆく
「 飲んでも ・・・ いいのかい? 」
虎族の子供がカップに手を伸ばしながら聞いてきた。
「 あい、 それは貴方のために出したのですよ 冷めないうちにどうぞ 」
セオの言葉が背中を押したようで、2人はカップを持ってそっと口を付けた。
「「 甘い!! 」」
適度に冷ましてあるためにおっかなびっくりと口を付けた子供にも飲みやすかったようで
一口飲んで思わず声を上げる2人の子供。
大きめのカップに入った甘いホットミルクはあっという間に子供たちのお腹の中へ。
「 お代わりもあるニャン 」
再び子供たちの前に現れるお代わりのミルクと今度はお皿に盛られたドーナツが現れる。
「「 ・・・ 」」
無言で唾をのみ込む子供達
「 たくさんあるから遠慮しないのニャ そのパンみたいな穴の開いたのはお菓子ニャン 美味しいニャンよぉ 」
思わず顔を見合わせて小さく頷く子供2人。
「 ・・・ こ これは フェンに フェンにあげて くれ いや ください お願いします 」
ロメイとリンを案内して病人の所へ行っている犬族の子供の事だろう。
その子に食べさせてあげて欲しいと訴える子供達・・・
きっとこの子達は寄り添いあって必死に生きてきたのだろう
恐らくは孤児、スラムに暮らす孤児なのだろう。
「 大丈夫 フェンの分もまだいっぱいあるし、これは君たちの分だから 」
ユーンに言って高位収納から他にも取り出して見せてあげると、目を真ん丸にして驚いている。
「 ふぇぇぇ すごい ・・・ 」
「 ほ 本当に 食べても い いいの? 」
「 あぁ 食べてくれると嬉しいな 」
2人は順番に僕らの顔を見つめると、おもむろに目の前のドーナツを手に取って齧り付いたのだった。
必死で生きているのです 子供達も例外ではないのです この世界はまだまだ発展途上ですから




