帰路にて
こんばんは 本日のお話です
「 疲れたぁ~ 」
沢山の人々に見送っていただきました。
ありがたいことです・・・
でも 本気で疲れた 気疲れってやつだね
馬車の中に入って、セオに気を抜いて良いですよって言ってもらったから思いっきり脱力した。
「 あい、 主様素晴らしかったですわ 」
「 立派でした あなた 」
セオとノエルは褒めてくれるけれど、正直言ってお飾り以外の何物でも無かったよね
まぁ付け焼刃でどうこうなるモノでもないし、かといって僕が行かないわけにはねぇ いかないし・・・
色々面倒だなぁ
「 でも 旦那様のおかげで獣人はきっと暮らしやすくなるのニャ みんな喜ぶのニャン 」
ユーンは嬉しそうに話してくれる
「 そうだねぇ 少しは役に立ってくれるといいね 」
クレイファ共和国は比較的獣人にも寛容な国だけれど、差別が全くないわけでは無い。
まず国の制度にある差別条項を取り消させることによって少しずつ意識も変わってくれば良いよね。
今日のパーティの席上でも、第一夫人は兎族で今日は懐妊中で欠席させてもらっているという話も伝えてあるし。
マーサやフェオ、ユーンがもっと暮らしやすくなって、安心して子育て出来る環境にしたい。
そう思いながら僕は馬車の背もたれに深く身を委ねた。
僕らを乗せて馬車はゆっくりと街を進んでゆく。辺りはすっかり暗くなり夜の帳が降りている。
揺れの殆どない馬車であり、静かな車内で僕は浅い眠りについていた。
「 ・・・ ぁ・・・ さ ま ・・・ 主様 」
「 ん・・・ あぁ セオ? 」
「 あい、 せっかく眠っていたのに申し訳ありません 」
セオがすまなそうに話しかけてくる
「 あ 着いた? 」
馬車が止まっていることに気が付いて、家に着いたのかと思ったのだけれど
「 いえ、 まだ手前ですが ご判断を仰ぎたいことがありまして お目覚め願いました 」
「 何かあったの? 」
馬車の外は相変わらず静かだ。窓にはカーテンがかかっているので外は見えないし、何より夜だから真っ暗かも。
この世界は街頭なんてないし、商店の多くは陽が沈むと店を閉めてしまう。
宿屋や酒場は開いているけれど、よほど大きな通りでない限り夜は明かりを持って歩かないといけないくらいには暗いのだ。
ちなみにうちの馬車にはカンテラが付けてある、もっと明るい前照灯も装備してあるけれど明るすぎて迷惑になるといけないので街中ではよほどのことが無い限り使うことは無い。
「 あい、 実は先ほど ・・・ 」
セオの話によると
僕が眠っている間に、馬車の前に子供が飛び出してきたらしい。
もちろんうちの優秀なゴーレムは、自律判断で動いているので子供に気が付いて即座に停止
即座にメイドさん達が馬車から飛び降りて、子供を確認したけれど怪我も無かった。
ただ相当にびっくりしたようでメイドさん達に囲まれて大泣きしていたらしい。
飛び出してきたのは、犬族の子で恐らく4~5歳のまだ子供だ、ボロボロの身なりに瘦せこけた体 恐らくは孤児かと。
「 出てきなさい 」
セオ付きのメイド竜人族のリンが暗がりに向かって鋭い声と威圧を発すると、観念したかのように同じようなボロボロの服を身に纏った子供が2人出てきた。
年の頃は馬車の前に飛び出してきた子より少し上だろうか。 耳と尻尾の感じから狐族と虎族だろうか。
「 ・・・ ご ごめん よぉ ・・・ 」
怯えながら泣きじゃくっている子供達
馬車の中から降りてきたノエルが、とりあえず状況を把握し馬車を道端に寄せさせた。
そしてセオが僕に判断を求めてきたのだ。
要するに子供たちによる当たり屋らしいのだ・・・
首都の華やかさの裏には・・・ やっぱり陽の当たらないところもあります