大筋合意
こんばんは 今日も投稿させていただきます。
「「 そ、それは 真か!! 」」
先ほどまでは、余裕のあった正副議長が本気で驚いている。
公爵クラスの貴族の地位であり、事実上の国のトップである彼らはそう簡単に動揺しない人々だ
ましてや政治的な場でそれを表に出すことは失策以外の何物でもないのだけれど
今回は流石に仕方がない事なのだろう。
それだけインパクトのある提案なのだ。
「 はい、冗談で言えるようなことでは有りませんし、当然のことながら女王以下 国の許可は得ております 」
ノエルはキッパリと告げる。
「 い、いや も、もちろん名誉公爵殿下の言に偽りなどあろうはずもございませんな。 も、もちろん 我が国としてもそれはもう大歓迎ですぞ 」
議長の言葉に大きく頷いて同意する副議長
それはそうだよね
だってノエルが提案したのは
「 エルフ女王国は、クレイファ共和国との更なる友誼を深めるためにも、大使館の相互設置を提案いたします。 当方はすでに大使として名誉公爵リック=ノルブレド=ジ=エレを選定しており、共和国側の許可が下り次第、文官の派遣も行います 」
こんな提案
ちなみに、エルフ女王国の大使館は2つの友好国にあるだけで当然のことながら大陸北部には存在しない。
過去に幾度となく関係強化を求めて大使館や公館の設置を求めた国は多いが、エルフ女王国は全て断ってきている経緯がある。
そのエルフ女王国が自ら大使館の設置を申し出てきたのだ、正副議長が思わず感情あらわにしたのも仕方のない事であろう。
『 ねぇ セオ 』
『 あい、なんでしょう主様 』
僕は念話に切り替えるとセオに問いかける。
何で念話なのかと言うと・・・
ノエルの提案は僕も知らなかったのですよ
もちろんお嫁さん達のことは信用しているし、この会談の前にもセオやノエルからとにかく鷹揚に構えて、私たちが促したら頷いてくれれば良いですからねと言われてたこともあって
全てわかっているような顔をして座り込んでいたのだけれど。
流石にノエルがあの提案をしたときは、驚いて顔に出そうになった。
もしかしたら顔に出ていたかもしれないけれど、どうやらセオが直前に〈光学迷彩〉を施してくれていたようで表情の変化はなかったようだ。
出来るお嫁さんだよね。
だから当然口に出すわけにもいかないので、セオに念話で聞くことにした。
『 大使館の話なんだけど・・・ 』
『 あい、 勝手に事を進めまして申し訳ありません。 母上と話を進めさせてもらう中で、ご提案がありまして実現いたしました 』
どうやら、連絡を取っていたみたいだ。 まぁルーちゃんは娘が出来たって喜んでいるんだろうなぁ。
『 そっかぁ でも教えて欲しかったかも 正直、びっくりしたよぉ 』
『 本当にすみません 母上から面白いので教えない様にとの命がありまして・・・ 』
『 うん セオは悪くないから 大丈夫だよ ルーちゃんはそういうところあるからね 』
そうなのだ、うちの母親は妙に子供っぽいところがあって いたずらとか仕掛けるのも好きだし 身内を驚かすのが楽しいようだ。
まぁ仕方ない、今はセオのフォローだな。
『 でも・・・ やはり主様には・・・ 』
『 でもサプライズは 黙ってないとダメだよねぇ うんセオは偉いよ 良く我慢してくれました 』
何とかセオを宥めないと、こういう時は念話だけというのがなぁ
しかも隣に居るのに、頭を撫でたり抱き寄せて上げるわけにもいかず・・・
うーーん 正に隔靴掻痒だ。
『 ありがとうございます 主様 家に帰ったらいっぱい甘えさせてくださいませ 』
あ、 セオには考えも読み取られてしまうの忘れていた・・・
セオと念話でのやり取りをしている間にも、話は進んでいたようで
ノエルと正副議長の間では、今後のスケジュールが話し合われていた。
「 では、来月半ばを目途に、当方の文官が揃い次第詳細協議に入らせていただくということでよろしいでしょうか 」
ノエルの堂々とした対応を横で見ていて思った
凛としていて綺麗だなぁ・・・ と
「 左様、 その間に共和国としてもご提示のあった諸条件を貴族院に図っておきますぞ 」
「 そうですな それと当方の大使の人選並びに文官の派遣等についても準備いたしましょう 」
正副議長が相次いで発言してくる。
聞いていなかったのだけれど、ノエルは大使館設置に対して条件を付けたみたいだね。
まぁでも議長の発言の後に、副議長がエルフ女王国に設置する大使の人選とか文官の話を始めたし
まぁ十分にクリアできる条件なんだろうね。
『 その通りですニャ 』
僕の疑問に答えるように、ユーンが念話を飛ばしてきた。
『 え? ユーンも僕の心読めたりするの? 』
『 えへへぇ はいですニャ と言いたいところですけれどぉ まだ無理なのですニャン 』
どうやら、まだ 無理らしい でもいずれ・・・ってことだな
『 うん 頑張ってね でもじゃあなんで? 』
『 セオ姉様から 教えてあげてと言われたのですニャ 』
言われてみれば納得な話
しっかりとノエルと議長さん達の話を聞いていたユーンにセオが指示を出したのねぇ
ノエルにの話によると
・両国への大使館設置とともに友好条約の締結を目指すこと
・その際に障害となる、クレイファ共和国に一部残る獣人を含む亜人差別制度の完全撤廃
( 具体的には 騎士や文官採用における亜人差別制度撤廃、奴隷解放条件における亜人差別の撤廃 等々 )
・貿易の拡充
・人的交流の促進
以上の内容を文官による詳細協議において合意形成を図ること
このような内容だったらしい。
さすがはノエルだねぇ
後でいっぱい褒めてあげよう
僕はそう考えながらノエルやセオの動きを見ながら立ち上がり
正副議長としっかり握手をした。
やれやれ
これで協議は終わりだ
僕はそう思っていた・・・
ただ座って、鷹揚に構えているだけのお仕事です