外交
こんばんは 本日のお話です
「 何か随分と物々しいな 」
馬車の窓から見えるのは、沿道を警備する兵士の列。
迎えの衛視隊の小隊長が警備についてくれたのだけど、貴族院に近づくにつれてその数はどんどん増えてくる。
「 あい、 護衛は十分すぎるほどおりますのに ご丁寧な事です 」
セオも少し呆れ気味だ。
巨大な箱馬車に屈強な護衛 これだけでも目立つのに、さらには取り囲むような貴族院差し向けの衛視達。
道沿いの通行人や、立ち並ぶ商店の人までもが珍しい物を見る目で眺めている。
残念ながら街の人々の声は馬車の中まで届かない
何しろ護衛の数が多すぎて、馬の足音、嘶く声で掻き消されているのだ。
もし聞こえていたとしたら
「 すごいでっかい馬車だね どこの貴族様だい? 」
「 見たことも無い紋章が付いているよ 」
この辺りは、商店のおかみさんとか女性の声
「 とんでもなくゴツイ護衛が付いているな 」
「 おぉ それにあの重装備の騎士を平気で乗せてるあの軍馬をみろよ とんでもねぇぞあれは 」
「 あんな馬に蹴飛ばされてみろよ 一発でお陀仏だ 」
呆然と見送りながら話している連中は、兵役の経験者だろうか
「 おい どうした!! 」
「 ・・・ ぁぁぁ 」
野次馬をしていた傭兵と思しき数人の中の1人が、泡を吹いて倒れ込んだ。
「 どうしちまったんだよ急に おめぇなんかしたのか 」
「 知らねぇよぉ 急に真っ青になって 倒れたんだよ 」
倒れた男は、魔道士でありゴーレム制御の魔力を無防備に受けてしまい気絶したのだ。
下手に魔力感知に優れた能力を持っていたがための悲劇である。
沿道の小さな混乱や声とは関係なく馬車は進み、やがて貴族院の正門に辿りつく。
「 エルフ女王国名誉公爵リック=ノルブレド=ジ=エレ 御一行到着されました 」
馬車の中にも護衛についていた貴族院衛視の到着を告げる声が聞こえた。
「 あなた、 到着したようですわ 」
「 そうみたいだねぇ 」
ノエルが微笑みながら僕に話しかけてきてくれた
どうやらやっと到着だ。
僕は腰を上げようとしたけれど、反対側に座るセオが耳元で囁いてくれる
「 主様 まだですわ 」
どうやら、まだ動いてはいけないようだ。
貴族の仕来りとかってよく分からないので、寄り添ってくれているセオとノエルに言うとおりにしないとね。
貴族院正門を馬車に乗ったまま通過して
玄関前に誘導された
「 公爵様 お開けしてよろしいでしょうか 」
馬車が停車してしばらくすると、声が掛かった
「 はい お願いします 」
セオが僕に向かって頷いてくれたので、外に声を掛けた。
漆黒の馬車の扉が開かれ、まずメイドさん達が先に降りて控えてくれる
その後に奥さん達が降りて、最後に僕が馬車の外に出た。
レディファーストとか無いのとセオにも確認したのだけれど、主様が一番最後に降りてくださいと言われたので
その通りにしたよ。
降り立った玄関前にはお出迎えの人々がたくさん待っています。
多分だけど中央に居る男性二人が正副議長さんかな?
セオとノエルが優雅に歩を進めて挨拶をしてくれた
基本的にボロが出ない様に対応はセオとノエルがしてくれるから、僕は鷹揚に頷いているだけ
まぁ儀礼的な顔合わせが主体だし、基本的な事は事前に根回し済みだから
そんな状況は場所が変わって、貴族院の応接室でも同じだった
儀礼的な挨拶と社交辞令の応酬
セオやノエルは経験値が違うから実に卒なくこなしてくれている
感謝感謝だね
正直なところ、セオとノエルじゃなく
マーサとフェオ・・・ あぁ無理だな うん人には向き不向きって物が有るよね絶対。
「 ところで これは次回の貴族院で決議予定なのですが よろしいか議長 」
大方の話が終った頃に、副議長さんが言い出した。
「 おお、そのことがあったな うむ わしから話させてもらおうか 」
議長さんが話しだしたのは
僕らがクレイファ共和国に拠点を構えてくれるならば、共和国名誉公爵としての爵位を贈らせてほしいとの申し出であった。
突然の申し出に僕が固まってしまっていると、セオが微笑みながら答えてくれた。
「 喜んでお受けしますわ 実に名誉なことでありますし、クレイファ共和国とエルフ女王国の友好の証にもなります 」
セオの答えに、クレイファ共和国側の空気が一気に緩んだ。
「 おお お受けくださいますか 即答いただけるとは実に素晴らしい 」
申し出た正副議長は今日一番の笑顔を向けている。
「 クレイファ共和国の友誼にお応えするためにも、当方からも提案がございます 」
そこでノエルがさらに重ねてきた提案の内容は、クレイファ共和国サイドに驚愕を持って迎えられた。
お嫁さんの役割分担も出来上がってきました。やっぱり得手不得手ってありますよね。




