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こんばんは 本日の投稿です

その日の貴族院は本来は議会も開催されておらず、派閥の会議も予定されていないために

本来ならば門を閉ざしているはずの日であったが。


正副議長からの要請により賓客を迎える準備が前日より進められていた。


「 なぁ 誰なんだろうな 賓客ってよぉ 」


貴族院正門を警備するのは、専従の警護士である。

彼らは貴族院議会直属の衛視であり、他国で言えば王宮警備の兵士に相当する存在だ。


「 なんだ 貴様知らんのか! 今回の客は 他国の貴族だ 」


詰所で会話をしているのは、警護小隊の小隊長2人。


基本的には6つの小隊が交代制で貴族院正門の24時間警備に当たっているのだが

今回はそのうち2つの小隊が合同で警備に当るという厳重警戒だ。


「 他国の貴族なんて 良く視察や招待で来るじゃねぇか なんでこんなに厳重なんだよ 院内の警備なんか通常より3倍も増員されているしよぉ 」


「 貴様ぁ 本当に何も聞いていないのか 事前説明の時は何をしてた 」


呆れながら返事をしている若干年長と思われる第一小隊の隊長


「 いや あの時は二日酔いと、出がけに喰わされた飯が古かったみたいでよぉ 頭は痛えし腹は下ってるしで最悪だったのよぉ 」


「 あぁ そういえば途中で席を離れていたな 」


「 おぅよ しかも副長も寝不足で碌に話を聞いてなかったようでなぁ 」


たまたまなのか、それとも通常運行なのか

いずれにしてもあまり素行の芳しくない隊長のようだ。


「 ふん 相変わらずだな まぁ腕だけは間違いなく立つから降格されんのだろうが ほどほどにしておけよ 」


「 おう、 で  どこの国のどんな奴なんだよ 賓客ってのはさぁ。 それに何だよ 普段は姿も見せねぇ偉いさんの奥方からお嬢様まで物凄い数が来てるじゃねぇかよぉ いったい何が始まんだよ 」


「 あぁ 女性陣が押しかけている理由はよく分からんが、賓客は エルフ女王国の名誉公爵様だ 」


「 あ ? エルフ女王国だぁ!? 」


事前説明を碌に聞いていなかった第6小隊長が驚くのは無理もない、実際に事前説明の際にも同じような状態になったのだ。

話を聞いていなかった二人を除いて。


エルフ女王国とはこの世界において特異な存在である。


だからと言って 別に大森林の奥にあるわけでもないし、外界との接触を断っているわけでもないのだが。


まず歴史が古い

その歴史は優に神話の時代より継続していると言われ、当然のことながらランドヴェールにおける最古参国家である。


代々女王による統治で国政が引かれているが、歴代の女王は世襲では無く前女王の指名と神の承認を得て決まるとされているが詳細は不明。

歴史上他国へ戦争を仕掛けたことは一度も無いが、他国からの侵略は全て撃退している。

しかも完膚なきまでに叩きのめしての完全勝利である。


女王を筆頭に国民の全てが超一流の魔道師であり、兵士でもある。

エルフ女王国と言う名前ではあるが、エルフ以外にも多くの人種が暮らす多民族国家としての側面も持つ。


良質な魔道具や魔石の産出国であるとともに、農業も盛んな大国である。


その財力と国力に裏打ちされたエルフ女王国金貨は純金の含有率や製法の確かさからも流通貨幣としては最も信頼されている。



ただし、経済活動以外での外交関係等は実に消極的というか儀礼外交や婚姻外交は一切行わない。

ごく一部の限られた友好国以外の国家群には大使館すら存在していないのだ。


その エルフ女王国の名誉公爵の来訪である

これはクレイファ共和国の歴史上初めての出来事なのだ


それどころか、この数百年間で中央大陸北部の国家にエルフ女王国の関係者の公式訪問など一度も記録がない。



物々しい警備になるのも仕方のないことである。




「 本物なのかよ 」


そもそもエルフ女王国において貴族位というのは存在しないというのが定説だったはず。

第6小隊の小隊長の疑念はもっともなところ



「 本物だ 少なくとも公式には間違いない 」


その疑念に対する答えは、詰所の入り口から響いてきた。


「「 大隊長殿!! 」」



詰所の扉を大きく開け放って入ってきたのは、彼らを統括する存在だった。


直立不動で立ち上がった、2人の小隊長をゆっくりと眺めた後に

詰所のソファーにその大柄な体を沈め声を放った


「 まぁ 楽にしろ 」


「「 はっ!! 」」


もちろん先ほどまでのように椅子に座るわけにはいかず その場で直立不動の体勢から、体を緩めて立つ いわゆる休めの体勢に移行する。


「 先触れが到着し、あと半時ほどでエルフ女王国名誉公爵様御一行は到着される 配置にはついておるか? 」


「 はっ!! 第1及び第6小隊は正門の警備配置完了しております 」


「 よろしい すでに第2 第3 第5小隊は 沿道警備についておる さらに間もなく第4小隊が予備隊として到着する 」


2人の小隊長は思わず顔を見合わせる

それも当然のこと、大隊長が直接指揮を執っていることから、貴族院警備隊の全部隊が動いているようだ。

これはあまりにも異例すぎる。


それに4日前の事前説明ではここまでの規模にはなっていなかったはず・・・


「 一体何が起こっているのでありますか 」


2人の隊長の疑問は当然のことだ


「 うむ あまり時間は無いのだが・・・ 」


そう前置きすると大隊長が口を開いた


その内容は


間違いなく、エルフ女王国名誉公爵であること

さらには、その公爵殿下は


ここで問題になるのが 殿下だということなのだ


当初にエルフ女王国からもたらされた公式文書には、エルフ女王国名誉公爵リック=ノルブレド=ジ=エレの名前があった。


これだけでも相当な驚きを持って受け取られた公式発表なのだが

その後に、エルフ女王国の数少ない大使館等のルートから確認された情報では、名誉公爵は現エルフ女王の実子であり一人息子だという事実。

当然のように情報の真偽を確かめるべく確認作業が猛スピードで行われ、貴重な魔道通信具を使用して届いた情報は

女王の唯一の子供であること。


さらには、現女王の王配であり当然ながら名誉公爵の父親は神招勇者であり魔王を押し返した英雄であることも判明


そして、名誉公爵夫人の1人は竜種、さらに先だって神託の下った吸血族始祖ノエル=ジベ=ドリナエンも夫人であるとのこと。

これは未確認情報であるが、神格を持つ高位精霊が受肉したうえで望んで嫁いだ・・・とも



「「 ・・・ あ あぅ 」」



小隊長2人にはヘビーすぎる情報だったようだ。


「 報告いたします !! 」


詰所に飛び込んできた伝令が叫ぶ。


「 うむ 」


「 間もなく 御到着の見込み 沿道警備隊が確認しました 」


「 各中隊に伝令!! 御到着である!! 」


我に返った小隊長たちはものすごい勢いで詰所を飛び出していった。


今日はクレイファ共和国サイドのお話です。 結構な騒ぎになっていますねぇ

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