幸せのかたち
こんばんは 本日のお話です
「 なんだよぉ あたいにも教えてくれよぉ 」
マーサが不満げだ
それはそうだよね、マーサにしてみれば置いてけぼり状態でしかないからね。
「 うん マーサには何より大事な仕事があるんだよ 」
「 あたいの仕事? 」
「 そう、筆頭嫁のマーサにしか出来ない大仕事だ 」
??? マーサの顔には疑問符しか浮かんでいない
「 マーサ姉様 最近大好きだった人参のケーキを残してますよね 」
デニエがマーサに声を掛けてくる
「 うん なんかさぁ 急に美味しく感じなくなったんだよぉ 」
そう 最近マーサの食べ物の好みが変わったようなのだ。
「 デニエ・・・ それって 」
どうやらノエルは気が付いたようだ。
「 はい 精霊魔法で確認もしましたが間違いありません 」
「 マーサ姉様ぁ 素晴らしいですわぁ 」
マーサの手を取って 嬉しそうに微笑むノエルの姿。
「 なんなんだよぉ みんなしてぇ 」
「 マーサのお腹には 赤ちゃんがいるんだよ 」
僕はマーサに 今一番大切な仕事の内容を伝えた
「 ・・・ ぇぇぇぇええええええええ 」
「「「 おめでとう マーサ姉様 」」」
「 元気な赤ちゃんを産んでくださいな 」
「 流石はマーサ姉様ニャン 」
みんなが祝福する中、当のマーサは呆然としている
「 え え あ あたいの子供・・・ リックとの 赤ちゃん ・・・ 」
「 そうだよ ありがとうマーサ 」
やがて 少しずつ事態が呑み込めたのか マーサの目に涙が溢れてくる
「 ・・・ ぅ ぅ ぇ ぇ 」
「 マーサ 」
涙を流しながら 僕の声に反応して胸の中に飛び込んできた、可愛い僕のお嫁さん
「 リックぅ ・・・ 」
嗚咽を上げながら僕にしっかりしがみ付いて、何度も何度も僕の名前を呼んでくれた
僕が最初に出会った異世界の獣人、兎族の女の子
狼から救い出せて本当に良かった
ずっと一緒に居てくれると言ってくれた、一番最初のお嫁さん
産まれてくる子供のお母さんだ
しばらくして落ち着いたマーサが顔を上げてくる
「 リックぅ 嬉しいよぉ 」
「 マーサの大事な仕事だからね 」
僕の言葉に大きく頷くマーサ。筆頭嫁として早く赤ちゃんを欲しがっていたうえに、そもそも子供も好きみたいなので心から喜んでいる。
旅の途中でも赤ん坊を連れた夫婦や、小さい子供見ると じっと見つめたり羨ましそうな目で見つめていることもあった。
孤児院で育ち、スラムで苦労してきたマーサにとって
結婚し子供を持てる環境は憧れ以外の何物でもなく、時々今の幸せが夢ではないかと思ってしまう事さえあると言っていた。
「 あたい 元気な子を産むからね 約束するよぉ 」
「 うん でもまずは無理をしないようにね 」
当然だけど、初めての事で僕も何をどうすればいいのやらと言った感じではあるのだけれども
「 この日を待っていたのですぅ!! いつ産まれますかぁ 明日ですか明後日ですかぁ ぁぁぁっぁぁぁぁ 早く生まれてくる子に加護を与えたいのですぅ うふふふふふふふふふ 双子ですかねぇ 三つ子ですかねぇ 流石はマーサなのですぅ さぁさぁ ・・・ はぅっ!! 」
突如目の前に、異様なハイテンションエイシアが現れて、一気に捲し立て始めたと思ったら。 背後にこれも突然現れた兎族メイドのマリさんが実に素早い動作で気絶させて回収していった。
「 いま 何が起ったのかな・・・ 」
「 はい、 マーサ様に良くない影響が懸念されましたので 失礼ながら排除・回収させていただきました。 エイシア様には申し訳ございませんが落ち着くまで待機していただきます 」
僕の独り言に反応してくれたのも、やっぱりマリさん。
一瞬でエイシアを回収して何処かに隔離して、僕の質問に答えるって メイドさんって凄いとしか言いようが無いのですが
「 えーとぉ 」
「 ご安心ください エイシア様もご主人様の嫁となられるお方ですので、手荒な真似はいたしておりません 」
「 あ、 はい ・・・ あとぉ 」
「 はい、 本日ただいまより マーサ様の専属となりますマリにございます。 マーサ様の身の回りのお世話はお任せください、助産婦としての経験も積んでおりますのでご安心ください 」
どうやら 優秀なメイドさんがマーサと赤ちゃんの専属になってくれるようです。
しかし・・・ メイドさんって読心術も使えるのだろうか・・・
「 はい、嗜みの一つでございます 」
にっこり微笑みながらマリさんが答えてくれました・・・。
筆頭嫁の面目躍如でございます。