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必要経費

こんばんは 本日も投稿させていただきます。

「 いやー 色々大変だったね 」


「 平気でしたニャン ゴレームさん達も優秀ですし、それにジリアさんが優雅にお話してくれたので終始こちらのペースでしたのニャ 」


僕の問いかけにユーンがニコニコしながら答えてくれる


「 ありがとう ジリアさん 」


「 いえ、メイドとして当然のことをしたまでですし、お役に立てまして幸いです 」


微笑みながら返してくるジリアさんだけど、耳が嬉しそうに小刻みに動いている。

褒められてうれしいみたいだ。


「 それでニャ 続きはこんな感じでしたニャ 」


早く続きを話したくて仕方がないユーンが喋りはじめる。





到着した馬車が、エルフ女王国名誉公爵の紋章を付けた馬車であり使者もそう名乗っていることから

門が大きく開けられ、漆黒の馬車は静かに門内へ吸い込まれてゆく


「 なんで・・・ そんな馬鹿な 」


呆然として見送っている衛兵のの中で、一人の衛兵が気が付いた。


馬車が静かなことに


普通の4頭立ての馬車は、ゆっくりと動いていても様々な音がするものだ

馬の足音は当然として、装飾の揺れる音、車輪の軋む音、ガラガラと鳴る走行音。


目の前をゆっくりと進む馬車から聞こえるのは、馬の足音と極低い走行音だけ


軍馬の装飾の擦れる音すら、ほとんどしないのだ。


気が付いた衛兵の父親と兄は馬車を作る職人、子供の頃から身近で馬車を見てきた彼には

目の前を通り過ぎる馬車が信じられなかった。


しかも、音だけでなく揺れがほとんどないのが外見からも見て取れた


玄関に向けて去ってゆく馬車を見送りながら ただ呆然としていた。





大きく開かれた屋敷の正面玄関で使者一行を待っていたのは、筆頭執事と数人のメイド。


漆黒の馬車を目の前にしても、流石は公爵家の執事であり冷静さを保っていたが

メイドの多くは興味津々の色を隠しきれていない。


御者席より軽装騎士が軽々と地面に降り立ち、馬車側面の扉を恭しく開くと


先に降りたのは、シックなドレスに身を包んだジリアさん。


そして、後からゆっくりと降りてきたのがユーンだ。


ゴージャスなドレスに身を包み、おしとやかに一礼する。


「 リック=ノルブレド=ジ=エレ公爵夫人 ユーン様です。 ソイジレーア=ヒレッタ公爵様への書状をお持ちしました 」


ジリアさんが正に鈴を鳴らすような声で、来訪を告げる。


冷静沈着であるはずの執事が思わず聞き惚れてしまい一瞬反応が遅れてしまうほど。


「 ・・・ 主がお待ちです どうぞ こちらへ 」






応接室での書状の手渡しは、全く問題が無かった。


ジリアさんの完璧な礼儀作法、公爵夫人としてのユーンの対応も全く問題は無し。



問題があったといえば


贈り物を渡した後のソイジレーア=ヒレッタ公爵側の反応だった。





「 こ、この滑らかさは・・・ 」


贈られた万年筆を使い、見たことも無いほど白い紙に文字を書いてゆく公爵本人。


「 いかがですか 」


「 むぅぅぅ しかもこのように白く薄い紙など初めて見た 」


ユーンが渡したのは、蒔絵が美しい高級な万年筆と大量のコピー用紙。


この世界では硬筆や羽ペンが主な筆記具であり、すらすらと書ける万年筆に驚きを隠せない公爵。




「 どうぞ 触れてくださいませ 」


ジリアさんが、自慢の髪を触らせているのは、ソイジレーア=ヒレッタ公爵夫人とその娘たち


テーブルの上にあるのは、有名サロン御用達の高級シャンプーにコンディショナーなどヘアケア用品の数々に美容液やファンデーションに香水等々。


「 こんなにサラサラになるの? 」


「 はい、これで髪を洗い こちらで髪の毛の状態を整えるのです そうすればお嬢様の髪ももっともっと美しくなりますわ 」


実際に信じられないほどサラサラで艶やかな髪が目の前にあり、それは今贈られた品々がもたらす効果だという。


「 ねぇ これは これは 」


「 はい、これはですね 」


いつの時代の女性も美を求める意識は同じ、ましてや上流階級と言われる位階の女性達にとって自らを美しくするという事は至上命題なのだ。








ほぼ同じ光景は、貴族院議長であるギース=デユフェット公爵の屋敷においても見られた。


そして、両家とも使者の帰り際には同じような言葉で締めくくられていた。


「 是非、リック=ノルブレド=ジ=エレ公爵殿によろしくお伝えくだされ。 お会いできるのを楽しみにしておりますぞ 」


両家の当主はどちらも満面の笑みと上機嫌で話しかけ


「 もしよろしかったら、 よろしかったらで結構なのですよ またいただけるかしら・・・ 」


夫人や娘たちは、遠慮しつつも こう伝えてくる。


「 ご安心ください 我が主は御家との繋がりを大切に考えております。 次回はさらに良い物をお持ちしますわ 」


ユーンもジリアも、それぞれに期待を膨らませる回答を確実に伝え


贈られたワインを早速賞味し、さらに顔色の良くなった公爵は上機嫌で玄関先まで見送りに出てきた。


公爵たる貴族が使者に対する対応としては実に異例な事。




そして噂はあっという間に首都の隅々にまで広がる


エルフ女王国名誉公爵 リック=ノルブレド=ジ=エレは、貴族院正副議長である両公爵家にとって重要な人物であると。

そして、実に珍しく貴重な産品を有していると



先行投資って必要ですよね。あと交際費も当然必要経費ですから。

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