魔法のお勉強
今日も投稿させていただいております。お目に留めていただければ幸いです。
パチパチパチ~
エイシアさんが拍手をしながらニコニコ笑っている。
等身大で見てもやっぱり美少女
『そんなにぃ 見つめないでくださ~い』
気がついたら、もじもじしているエイシアさん。照れた姿も可愛い、これで獣耳がついていたら・・・
余計なことを考えていると、また心を読まれそうなので(もう読まれているか?)
『ところでエイシアさん、この鏡変ですよ』
鏡に映っているのは確かに僕、鏡の正面に立っているのだから当たり前だよね。
目の前には見慣れた僕の顔・・・輪郭も鼻の位置も、口の感じも同じ。
旅をしてきたからか多少薄汚れてはいる上に、ひげも伸びているし髪も結構ぼさぼさ・・・
でも、僕の髪の毛こんな色じゃないよ。
『鏡わぁ、正常ですよぉ~』
エイシアさんも覗き込んいる。
『だって、僕の髪の毛が灰色?化してますし、瞳の色も違うなんておかしいでしょ。鏡がおかしくないならなんで色が違うのかな僕の目が変?それとも魔法ですか?』
髪の毛は百歩譲って、砂埃で変色しているかも知れないけれど・・・
瞳の色がグレーというか銀色というか、違和感あり過ぎ。
『あぁ、それはですねぇ~。加護を受けたからですよぉ』
なんか、さらっと言いましたよこの精霊さんってば
『加護・・・ですか?』
『電子精霊に限らずぅ、精霊の加護を受けるとですねぇ体のどこかに~特徴が出るのですぅ。リックさんの場合はぁ、特に始祖ですから~はっきりと特徴が出たのですぅ』
とっても嬉しそうに話すエイシアさん。
ようするに、各精霊の特徴を表す色があって、それが大きくはっきり出るほど精霊の力を強く持っていることになるらしい。
4大精霊は分かりやすいよね、火精霊は赤系統・水精霊は青系統・土精霊は黄色や茶色の系統・風精霊は緑や系統。
そして電子精霊は銀色ってことなのだそうです。
何故銀色なのかは・・・やはりイメージなのだろうか。
『なんか違和感あるなぁ、見慣れない・・・』
『とっても素敵なのですぅ~』
エイシアさんは褒めてくれるけど、まぁ慣れるしかないよねぇ・・・
両親に会ったらなんて言おうか・・・
まぁルーちゃん辺りは喜びそうな気もするなぁ
色々と気を取り直して、もう一つの疑問をぶつけてみる
『で、光学迷彩の話ですけど』
『そうでしたぁ~』
エイシアさんも先生モードに帰ってきてくれた
『光学迷彩だとして、特殊なスーツなんて着てないのですけど?』
自分はカメレオンでもアマガエルでもないはずなので、映画由来の情報を提供。
『ええ、着てませんねぇ。なぜならぁ~ 魔法ですから~そんなもの必要ないのですぅ』
返ってきたのは、身も蓋もないエイシアさんのお答えなので、さらに突っ込んでみた。
『じゃあ、魔法で体の表面を膜状に覆ったとか? それとも魔法で光自体を屈折させた?』
僕が思いつく理屈を考えてみたのだけれど、エイシアさんはニコニコ笑いながら
『魔法ゎですねぇ、理屈じゃないのですよ~ 難しく考えないでくださ~い』
エイシアさんも多分知らないな、これ・・・
きっと魔法で光の屈折率あたりを変更しているのだと思うのだけど。
エイシアさんがそんな僕を諭すように話を続ける。
『子供は~、魔法を理屈で覚えたりしないのですぅ。お母さんが薪や炭に魔法で火を点けるところを見て、感じて覚えますぅ。他にもぉお父さんが魔法を使って、濁ってしまった水を綺麗にするのをこっそり覗いて覚えますぅ。もちろん最初からぁうまくできる子なんていませんからぁ、お兄ちゃんや近所のお姉さんにコツを教わることが多いですよ~。』
エイシアさんが教えたかった事が、だんだん分かってきた。
大人になると、理屈や常識が邪魔をし始めて出来るわけがないって諦めることも、子供は無邪気に楽しんで覚えてしまう。
この世界の魔法は、エイシアさんの言う様に理屈じゃないってこと。
多分、過程では無くて結果をイメージする、自分がしたいことを思い浮かべること。
そして結果に至るイメージを作り上げてゆく。
そこに必要なのは創造力とでもいうイメージの力。
極端なことをいえば、こうしたい、こうなれって強く思いイメージすれば叶うってってこと。
代償は自らの魔力と魔素か。
エイシアさんの講義は続く
『まず~ 基礎魔法を使えるようにするのですぅ。 加護精霊の属性に関わらずこの世界の殆どの人々が使える魔法ですよぉ~。ちなみにぃ、加護を受ける前の子供でも使える子もたくさんいますから~』
エイシアさんの言う基礎魔法の中でも、一番初歩である小さな炎の魔法から実践開始。
『・・・ うーーーん 』自分の右手の人差し指を見つめて、炎をイメージ。
唸ってみたけど、何も起こらない・・・
そう簡単にできたら苦労しないよねぇ。
『簡単なキーワードを口に出すのも効果的ですよ』
なるほどぉ・・・こうかな 『 点火 』
指先に小さな炎を思い浮かべながら、キーワードを呟いてみた。
すると本当に突然、言い終わると同時に人差し指の先に火が灯った。
『よく出来ましたぁ~』
嬉しそうに褒めてくれるエイシアさんを横目にしながらも、拍子抜けするほど簡単に出来たことで、本人が一番びっくりしている。
『こんな簡単に出来ていいのかな・・・』
僕の指先には確かに炎が存在する。なんか簡単すぎないか???
『正直なところをいうとぉ、ずるっこをしていますぅ』
エイシアさんが小さく舌を出しながら、種明かしをしてくれた。
『ここは仮想空間の中なので、現実世界より情報が単純化されていますぅ。しかもこの仮想空間はリックさんの魔力を使ってぇ私が作り上げているので、リックさんが魔法を使うのに最も適した状態なのですよぉ。』
『やっぱりかぁ、そんな簡単に魔法が使えるなんてねぇ。いくらなんでも出来過ぎだと思った』
種明かしを聞いて、少し残念がる僕に向かってエイシアさんが話を続ける。
『大人になってから魔法を覚えるのはとても大変なのですよぉ。その大きな理由はですねぇ、出来るはずないと思ってしまうことなのですぅ。出来っこないと言う思い込みわぁ、イメージの焦点をぼやかしてしまうので魔法が不成立になりますぅ。そうなると魔法が成功しないから、やっぱり無理だぁと諦めてしまうからダメなのですぅ。』
『その点、子供は夢中になってしまえば諦めることなく繰り返しチャレンジする』
エイシアさんの言葉に僕の考えを続ける。
『その通り~』エイシアさんは嬉しそうに手を叩きながら話を続けてくれた。
『ですからぁ~ 最適な条件を整えた仮想空間で魔法を練習して成功体験を積むとぉ~』
エイシアさんが続きを促すようにこっちを見ている。
『現実でも、魔法が使えるってことですか!!!』
パチパチパチパチ~
どうやら大正解だったようで、エイシアさんが満面の笑みで拍手をくれた。
だから、エイシアさんはこの空間に僕を連れてきてくれたのかぁ。
目の前の美少女精霊さん、実は出来る人だった。
そんなエイシアさんに感謝しつつ、僕の初めての魔法が生み出した小さな炎を楽しんでいたのだけれど、ふとあることに気が付いた。
『これって・・・・』
『良いとこに気が付きましたねぇ』段々エイシアさんが、学校の先生に見えてきました。
見つめながら気が付いたことは、魔法で指先に灯った炎が僕の知っているモノと違うってこと。
僕が知っている炎の常識。そう例えば蝋燭の炎なら大きさも近いかな。
普通、火の点いた蝋燭を立てた状態から、横(地面と水平)にしても、当然炎は上に向かうはずだけど、魔法の炎は指を水平にしても炎が上に行かない、指を下に向けても同じこれって・・・。
疑問符を浮かべる僕にキッパリとエイシアさんが告げる。
『魔法の炎とはそういうモノです~』
エイシアさんの説明によると、魔法の炎は普通の炎と違い、魔力が炎の形を取っているだけなので、自然界の炎が従う理が当てはまらないとのこと。
だから、蝋燭の炎のように吹き消そうとしても消えることもなく、魔力の続く限り出し続けることが可能らしい。
ただ、魔法の炎で点火された物質から出る炎は普通の自然の炎なので、当然水をかければ消えるし燃えるものが無くなれば消えてしまう。
『自然界の理と魔法の理は、別のモノと考えることにします』
『はい~常識に拘るとぉ魔法は幅が狭くなりますぅ。大事なことは何度もいいますけどぉイメージなのですぅ、結果をしっかりイメージ出来ることが必須ですぅ。魔法の過程やぁ維持ゎ~私たち精霊に任せてくださーい』
その後もエイシアさんの説明と基礎魔法の実践授業が続いたのだけど、その中で特に印象的で面白かったのが、風の基礎魔法。
ちょっとした風を起こす基礎魔法で、かまどに送風するとか、夏場には扇風機代わりにもなるそれなりに便利な魔法だ。
魔法の発動自体はすぐに出来た。そうしたら、じゃあ練習とばかりにエイシアさんが紙風船を取り出して僕に向かってこう言った。
『遊びましょう~』
始まったのは、手や足を使わず体に触れることもなく魔法の風を使ってする紙風船のバレーボール。
これがやってみると中々難しかった。
『残念でしたぁ~』何度となく聞いたエイシアさんの勝ち誇った声。
『うー・・・ どうしても決められないっ><』
始めた頃に比べればラリーも出来るようになり、上手と褒めてもらえるようになっては来たのだけれど・・・詰めが甘く未だに一回も勝てない。
魔法の制御もなのだけど、ボールが軽い紙風船なところもミソ。
子供の頃にも近所のお婆ちゃんに貰って、友達と遊んだことがある。紙風船だから強く叩けば破れてしまうし、とにかく軽いから優しく扱う必要があって意外と繊細な遊び。
それを魔法の風だけでコントロールするので、まぁ大変。
それがエイシアさんの狙いなのだろうけど、遊びの要素もあるし段々と夢中になった。
『おしいですぅ~ 上手になってきましたぁ』
『もう一回お願い』これで何度目のお願いなのか。
最終的に、何とか1回だけ勝った(勝たせてもらった)ところでゲーム終了。
『あーん、負けてしまいましたぁ~』
ニコニコ笑いながらエイシアさんが紙風船を片付けてくれた。
『少しは風を使えるようになったかな』
『随分上手になりましたよぉ』
エイシアさんに促されて、椅子に腰を掛けながら続きを聞く。
『ところでぇリックさんはボール遊びとかもしましたぁ~?』
『ゴムボールなら、小学校の休み時間とかに遊びましたよ』
人数が少ない小学校だったので、上級生や女の子も一緒に校庭で遊んだことを思い出しながら返事をすると。
『ボールを投げる時にぃ、計算とかしましたぁ?』
エイシアさんの言いたいことは、ボール遊びの時に相手までの距離とか、ボールの重さ
球速、さらには風向風速を考えて投げましたかってことらしい。
もちろん、そんなことはするはずもないし、考えたこともないって答えた。
『さっきの風魔法もそうですけどぉ、最初はうまくいかなくても夢中になって風を操っているうちに、制御できましたよねぇ~』
『うん、気が付いたら風の強弱や動きも感覚的に分かって来たよ。そうだね、計算なんてしてないし、遊びながらそんなこと出来ないよね。』
もしかしたら、コンピュータ並みの計算処理能力と各種計測機器でもあれば計算は可能かもしれないけれど、そんな必要は無い。
魔法にとって大事なのは結果をイメージすること。
もちろん、そのイメージを成立させるためには、加護精霊の能力と自らの魔法力と魔法量が適正でないと無理なので、自分自身の熟練度を上げる必要があるってこと。
エイシアさんはこうも言っていた。
『異世界と呼ばれる他の世界は、星の数ほどもあるそうですぅ。その中には~魔法が数式化されぇ体系付けられている世界もあるとぉ神様が言っていました~。でもぉこのランドヴェールにおいて魔法の根源はイメージなのです。歩くときに足を上げる高さを計算しながら歩く人はいないはずですぅ。息を吸い込むときに、何リットル吸い込むか測る人も普通はいないですよねぇ。この世界では魔法もそうなのですよぉ~、普通に走ったり、ジャンプしたりするように、自然に魔法は使うものなのですぅ。』
エイシアさん深いね・・・
エイシアさんが作り上げた仮想空間で、魔法の使い方はある程度は掴めた気がする。
もちろん、この世界では子供の頃に皆が覚えるようなレベルだけど・・・
『では、最後に電子魔法を使ってみましょうかぁ』
エイシアさんが、そう告げると練習中は邪魔なので背嚢の上に置いたスマホを手に取った。
『電子魔法は、幾つかの魔法が確立できているだけですぅ。後はリックさんが道を敷いて欲しいのです~。もちろん、加護持ちも増やしてくださ~い』
『精進します』
エイシアさんの期待に応えないといけない、僕はそう強く思った。
お読みいただきまして、本当にありがとうございます。少しづつ前進しておりますので、明日もお読みいただけると嬉しく思います。