サティの過去
投稿遅れてごめんなさい。前回を見てない人はそちらをお勧めします。
(リリィも、メロウも強くなってる……私も頑張らなきゃ……そういえば……メロウが「私の知ってるサティと全然違う」って言ってたけど……私の知ってるサティ……?メロウの見たサティで何かあったのかな……前から気になってたし……今から聞きにいこうかな……)
カメリアはメロウに色々聴くために、メロウのいる部屋に向かうことにした。すると、後ろから声が聞こえた。
「あ、カメリア。どこいくの?」
後ろを振り返るとそこにはツバキがいた。
「ほら、前にメロウが昔のサティを知ってるようなこと言ってたでしょ?それを聞きに行くのよ」
「ふむふむ……私も行くよ。確認しておかなきゃいけないこともあるし」
そう言ってツバキはカメリアと共にメロウの部屋に向かうことになった。
メロウの部屋の前にたどり着いた二人は扉をノックした。
「メロウ、今時間空いてる?」
カメリアはそう問うたが、中から返事はなかった。
「出かけてるのかな?」
カメリアはそう呟きながら扉のドアノブをひねった。すると、鍵がかかってなかったのか、扉が開いた。
「メロウ?いるなら返事を──」
カメリアは言葉を失った。後ろにいたツバキは目を大きく見開いた。二人の視線の先にはメロウがいた……が、いつものメロウではなかった。まず髪の色が青ではなく薄紫色になっていて、服がいつも着ている浴衣と着物の中間のものから上は花色の浴衣、下は勝色のミニスカートを履いていた。
「め、メロウ……あなた……」
沈黙を破ったのはツバキだった。その声に気づいたメロウは二人の方を向いた。
「ツバキに……カメリア。どうしたの?」
「聞きたいことがあって来たけど……あなたこそその格好……」
「あぁ、これ?……説明が難しいのだけれど……カメリアの話と一緒に説明するよ。取り敢えず、入って。お茶入れるから」
そう言われた二人はメロウの部屋の中に入り、敷いてあった座布団に座った。
目の前に出されたお茶を一口飲んだカメリアはメロウに問うた。
「ツバキと初めて会ったとき、私の知ってるサティと全然違うって言ったよね。メロウは前にサティに来たことがあるの?」
カメリアの質問にメロウは何故か、悲しい顔をして答えた。
「今はこんなに活気溢れる街なのだけれど、数年前、サティはどこから来たのか分からない軍隊に攻められたの。あれは皆が寝静まった夜に起こった事だった……。街の至るところに大砲の弾が放たれて街はほぼ全焼。2割の街の人たちは無事だったけど、残りの人たちは殺された……その後、生き残った人たちの手で街は復興されて、こうなったらしいね」
メロウが話していると
「ちょっとメロウ……前に書庫の資料を一通り見たのだけど……何もそんなこと書かれてないわよ?」
ツバキはこの話自体に驚きを隠せない様だった。
「知らないのも無理ないわ。なぜなら、この事は隠蔽されたのよ。なんでそうなったのかは今でも分からないけど」
メロウの発言に疑問を持ったカメリアは問うた。
「ちょっと待って。なんでそんなに……ツバキにも分からない事を知ってるの?」
「その時、この社にいたのよ、私は。巫女としてね」
「「え!?」」
「メロウ、今巫女って言ったよね……もしかしてあなた……」
「えぇ……『サティ最後の巫女』よ。ツバキは文献で見たよね?」
「最後の……巫女?」
「サティの巫女は、琥珀色の勾玉を守る使命にあるの。巫女は次の世代に引き継がれていくのだけど……私が巫女になっていた時にその軍隊が来てね。私は戦ったけど、無理だった……。勾玉が無くなって、巫女は必要ではなくなった……それで私は最後の巫女って呼ばれるようになったの。戦った時に負った傷はブレシンで治してもらって、今に至るのよ」
「メロウ……そんなことがあったのね……でも、その格好は?」
「『巫女化』。巫女としての力を持ってる人だけが使える力。私はこの力を使えるけど、発作が起こる時があるのよ……定期的に確認して鈍らせないようにしないとなのよ……」
メロウは顔を赤くして後ろのベッドにもたれかかった。
「メロウ?」
「ごめんなさい……発作熱みたい……」
「大丈夫なの……それ……」
メロウを寝かせた二人は部屋を後にした。大浴場に向かう途中、カメリアはツバキに聞いた。
「巫女って……かなり昔からあったの?」
「確か、今から約100年前から受け継がれてたらしいけど、文献には。詳しく書いてないのよ」
「ふーん……それにしても、琥珀の勾玉ねぇ……何か特殊な力でも宿ってたのかな」
「さぁ……その事も書いてなかったし……なんで記録しなかったんだろ……」
そんなことを話していると、大浴場の脱衣場に着いた。二人は服を脱ぎ、大浴場に入った。
「モーくん、気持ちいい?」
「モ~♪」
「リーちゃん、湯加減大丈夫?」
「リ~♪」
入るとそこには桶の中にお湯を張って温まってる吸血コウモリと羽を洗ってもらってる吸血コウモリ。そしてカメリアの妹のリリィがいた。
「何してるの?リリィにモーくん、リーちゃん」
「あ、お姉ちゃん。何って、洗ってあげてるの」
「コウモリって、水平気なのね……」
「この子達だけは水平気なんだよ。ね?みんな?」
すると、上からキー!と鳴き声が聞こえた。カメリアとツバキが上を向くと、天井の四分の一がリリィのコウモリで埋まっていた。
「うわぁぁ!?」
「何この数!?」
「全部私の仲間だよ。あれだけ暴れたから洗わなきゃでしょう?」
「そうだけど……この数洗うの?」
「まぁ、さすがに一気にできないから桶に何回か分けてこの子達入れて、上から水流すんだけど、これが大変なのよ」
「まぁ、そうだよね……」
取り敢えず湯船に入ろうとカメリアが思ったその時
「ツバキー!」
何者かが出入口の扉を開け放った。その子の頭にはうさぎの耳が付いていた。ツバキはその子の名を呼んだ。
「うさちゃん?どうしたの?」
扉を開け放ったのはカメリア達が雨宿りをした小屋にいたうさちゃんだった。
「リーサから、沢山の軍団がサティに向かってきてる!今はブレシン辺りにいるんだけど、あと何時間かしたらサティに来る!」
「っ!遂に来たね……リーサ、ブレシンと来たら次は近いサティを狙ってくるとは予想出来たけど……まさかこのタイミングとはね……。カメリア、リリィ。メロウがいないけど、行ける?」
「もちろん!」「行けます!」
「わかった。うさちゃん、サザンカ連れてきて」
「了解」
うさちゃんは走って大浴場を出ていった。
「さて……二人とも、特訓の成果をここで発揮するよ。くれぐれも怪我をしないようにね」
二人が頷いたのを見たツバキは大浴場を出た。
「どの辺まで来てる?」
サティの正面門に設置された見張り台に来たツバキは見張り員に聞いた。
「まもなく、サティとブレシンを繋ぐ森に入ろうとしています!残り一時間で森を抜けて、目の前の大草原に着きます!」
「一時間ね……わかったわ。ありがと」
見張り台から飛び降りたツバキは正面門に集まっていたカメリア、リリィ、サザンカの元に着いた。
「残り一時間で大草原に来るよ。今は夜だから、戦いにくいかもしれないの。でも、リリィは平気よね?」
「はい。キュリアスさんの力もあるので、暗闇でも動けます」
「カメリアはこのままだときついかもしれないから、私が暗視効果のある魔法を使っておくから安心して」
「ありがと。サティの住人たちの避難は?」
「ん?させてないよ」
「は!?なんで!?」
「なんでって、私たちが倒すからよ。見たところ向こうは二百人で来てるの。この数ならすぐに終わるわ」
「それならいいけど……」
「あとカメリア。最後に教えることがあるのだけど、あなたの場合具現化できる武器が二つあるの。そのローズブルームーンの魔法だけで戦うのは辛いでしょ?そこで、魔法陣を作ってそこから剣を取り出すんだけど、ちょっとやってみて?」
カメリアは言われた通りに指先に軽い魔力を溜め、空中に魔法陣を描いた。そこに手をかざすと魔法陣が光始めた。カメリアが魔法陣に手を入れると、何かを掴んだ。引っこ抜くと、手にはローズブルームーンに似たデザインの剣があった。
「そのローズソードには魔力を溜めることができて、好きな魔法を使うと、その剣にも魔法と同じ力が備わるの。これは実戦でやってみて」
「わ、わかった……というか、最初に教えて欲しかったよ……」
そうぼやいたカメリアは皆を見た。自信満々なリリィ、眠そうな顔をしているサザンカ、虚空を見つめるツバキ……。
(みんなとなら……絶対に守れる……私も頑張ろう!)
リーサの軍団は森を抜けて、サティ前の大草原に着いた。先陣をきっていた団長らしき人物が後方の兵士にこう告げた。
「火矢の準備にかかれ!」と。
兵士達は矢に火をつけ、構え始めた。
矢はサティの正面門の上を狙っていた。上からサティを燃やそうという事らしい。
「総員……撃て!」
合図と共に放たれた火矢は、ものすごいスピードで正面門の上を越えようとした。その時
「な、なんだ……あれは……!」
団長は目の前で起こったことに驚いた。正面門を越そうとした火矢が、突然現れた氷壁によって全て弾かれた。
「な……何が起こってるんだ……」
団長が次の指示を出そうとしたその時、正面門の上からこちらに向かって何かが飛んできた。
「っ……!」
団長はとっさに盾を構えた。盾に重い何かがぶつかり、団長は後ろに後退した。飛んできたものをよく見ると──人だった。その人物は一撃を与えたあと、数メートル離れた所に着地した。
「暗くて見えんな……明かりを灯せ!」
指示された兵士達は大きな松明で辺りを照らした。その明かりは次第にその人物にまで届いた。
リボンの着いた魔女帽子、ピンクのローブにフリルスカートというかなり目立つ服装の少女だった。そして彼女の右手には青い薔薇の付いた杖が握られていて、左手で、虚空に魔法陣を描いていた。
「何者だ、貴様!」
「ふーん……狙ってるとか言ってる割には顔を把握できてないなんてね……まぁいいわ、おしえてあげる。私の名は……」
少女は名前をいう前に魔法陣を完成させ、そこから炎の魔弾を放った。魔弾はリーサの軍団に向かって飛んでいった。殆どの兵士達は避けたが、数人が魔弾の餌食になってしまった。少女は魔弾が消えてからこう言った。
「……カメリア・リザルナ。どう?挨拶替わりのフレイムフラワーは」
「貴様があのカメリア・リザルナだと!?なぜ貴様が魔法など使えるのだ!?人間には取得出来ないものだぞ!?」
「あ、そうなんだ?ふーん……人間やればできるのにねぇ……」
カメリアは自分の髪を指でくるくると弄びながら言った。その言動にいらついたのか、団長は声を荒らげた。
「舐めやがって……総員!こいつの息の根を止めろぉ!!!」
兵士達はカメリアに向かって突進してきた。カメリアは手に持っていたローズブルームーンで魔法陣を描いた。魔法陣から今度は氷の塊が複数放たれた。前方の兵士はそれに当たって倒れた。残った兵士はそのまま突進してくる。
「ねぇ……私が1人で来るわけないんだから……気をつけようね?」
そう言うと、上からコウモリの大群が飛んできた。コウモリ達は翼で兵士達を叩き始めた。
「うわっ……!」「なんだこいつら!」「前が見えん……!」
兵士達はコウモリに邪魔をされて、動けなくなっていた。そこにカメリアは雷撃魔法「ライトニングスパイラル」を放ち、兵士達を倒した。これだけの攻撃で二百人いた兵士は残り約五十人にまで減った。
「ねぇ、さっきの勢いはどうしたの?」
とカメリアが。
「兵士の皆さん、怖気づいてるんですか?」
と、カメリアの頭上に下りてきてそう言ったのはリリィだ。
「な、何故だ……貴様ら、本当に人間か!?」
団長は声を荒らげて言った。二人は笑いながら答えた。
「人間だよ?」
「吸血鬼のチカラを持ってますけど、人間ですよ?」
その笑い顔を見た団長は、怯えながら残りの兵士達に指示を出す。
「て、ててて撤退だ!奴らは危険だ!」
兵士達は元来た道に戻ろうとした。が、しかし
「ここまできて逃げられると思わないでよね」
その逃げ道の先に赤い、浴衣に似ている服を来た獣族の少女──ツバキが立っていた。
「とにかく逃げるぞ!進めぇ!」
団長の指示で兵士達はツバキの横を通り抜けようとした。
「逃がすわけないじゃん……」
そういった瞬間、ツバキはものすごいスピードで兵士一人一人を蹴ったり、爪で心臓が位置する当たりを刺していった。一撃が重かったのか、兵士達は立ち上がらなかった。ツバキのおかげで、残るは団長だけになった。
「ひ、ひぃぃぃぃぃ……い、命だけは助けてくれぇ……!」
泣きながら土下座をする団長だが、三人は
「襲ってきておいて……許すわけないじゃん」
「自分のやったこと、反省してくださいね」
「あんたもアホねぇ……ここで死刑よ」
団長にそう言った後、サザンカがやって来た。彼女は手に召喚武器の千年扇を持っていた。どうやら、風を起こして飛ばすつもりなのだろう。
「じゃあねー。飛びながら反省してねー」
サザンカが千年扇を一振りすると、団長の周りに竜巻が発生した。竜巻は団長を乗せ、天高く吹っ飛ばした。団長は見る見るうちに小さくなっていき、やがて見えなくなった。
「やー、終わったねー。お腹すいたし、帰ろっか」
「またコウモリのみんな洗わなきゃだよ……」
「あんたら姉妹……見てたけど結構挑発してたよね……怖いわ……」
ツバキは肩を落として言った。
書いていたら、約一ヶ月経ってました……ごめんなさい!テストもあって、結構大変でした……。今回はメロウはあまり活躍しません!次回メインにする予定です。ではまた次回!