コウモリを操る少女
「うわぁ…………」
ツバキはベッドに飛び込み、転がり始めた。
「姉様お疲れー」
既にベッドにいたサザンカはツバキのために寝る場所を空けた。
「もー……無理……尻尾マッサージお願い……」
ツバキはそう言って尻尾を揺らした。ツバキの魔力は尻尾に宿っていて、マッサージをしてもらわないと、次に使う時に威力が下がってしまう。
サザンカはツバキの尻尾をもふもふし始めた。
「あ~……そこぉ……♪」
ツバキは尻尾を揉まれる度にそのような声をだしていた。
「姉様、自分でやろうと思わないのー?」
「誰かにやってもらった方がいいじゃない」
「だよねぇ、わかるわかるぅ」
「はぁ……って、今の誰ー?」
「ん?」
「誰だろぅ」
「ほらー!誰かいるよ姉様ー!」
さっきから二人以外の声が聞こえる。ツバキには声の主に心当たりがあった。
「……何しに来たの……また血、もらいに来たの?キュリアス」
そう言うと、机の下から何かが出てきた。
「にゃは☆キュリアスちゃんだよぅー!」
「だ、だだだ誰!?」
ツバキはため息をついた。キュリアス=カーマイン。彼女の名だ。黒いゴシックドレスを着ていて、背中には小さいコウモリみたいな羽が付いている。歯を見ると、ちっちゃい牙が生えていた。
このキュリアス、吸血鬼なのだ。
「サザンカ、落ち着きなさい。この子は吸血種の姫のキュリアスよ」
「な、ならいいんですけどー……姉様の血もらいに来たって」
「うん☆あ、安心してぇ?血吸っても吸血鬼にはならないからぁ」
「そっちにいいのいないの?いつもいつも私の吸って……はぁ」
「にゃはぁ☆ツバキちゃんのが美味しいんだもん♪」
「毎度毎度飽きないのね」
そう言うとツバキは首を見せた。
「うへへぇ、いただきますぅ♪」
キュリアスはツバキの首にかぷりと噛み付いた。
ツバキの首筋からは血が垂れていた。サザンカは驚いた顔をして止めようとしたが、ツバキが手で大丈夫だ、と静止した。
「ん……ぷはぁ~。ごちそうさまぁ♪」
ツバキは首筋に付いた血を拭き取り、そんなことをぼやいた。
「姉様、大丈夫ー?」
「慣れてるから問題ないよ。それより、これだけで用は終わってないよね?」
「うん。あのねぇ、私たちの街の近くでぇ、なんか人間の兵士みたいなのが最近来てるのぉ。そこでぇ、獣族最強のツバキちゃんに何とかして貰えないかなぁってぇ♪」
「ん、それならこの間あの三人の所にいたよね姉様ー?」
「最強って……あー、そうだったねぇ」
「え、なになにぃ?もう対面済みぃ?」
「まぁね、あれがそっちにもいるなんてねぇ」
すると、部屋の扉がノックされた。ツバキは一言どうぞ、と言い外の人物を中にいれた。部屋の中に入ってきたのはカメリアの妹、リリィだった。
「あの……ツバキさん……ちょっと相談が……」
「ん?何?」
「あ、ええと……お姉ちゃんやメロウさんが戦うって言うのに、私がこんなのでいいのかなって……お姉ちゃんは戦わなくてもいいって言うけど……そ、それは嫌なんです。だから……二人の知らないところで鍛えて欲しいなって……お願いします!」
リリィは頭を下げた。ツバキは慌てて
「り、リリィ!頭上げて上げて!……教えることは教えるけど……さっきからそこのが「私に任せてほしい!」って顔をしてるのよ。それに任せてもいい?」
リリィはキュリアスの方を見た。キュリアスは笑顔で頷いていた。
「いいですけど……この人は?」
「自己紹介が遅れたねぇリリィちゃん。私は吸血種のキュリアス=カーマイン。私が鍛えてあげる。ただ、今のあなたを見ると、その身体だと特訓に耐えれないと思うのぉ。だから、半分吸血鬼にしないと行けないの。どうするぅ?」
「その……毎日、血を吸わないといけないとかは……」
「ないよぉ。吸血鬼の力を手に入れるだけでいつも通りにご飯食べればいいしぃ、太陽の光浴びても問題ないからぁ☆」
「あんたも陽の光浴びても何もないでしょ」
リリィは悩んだ。いくら人間でも、半分は吸血鬼。カメリアがそれを知ったら、どう思うのか。だが、今のままではカメリアもメロウも守れない。そんなリリィを見て、キュリアスはこう言った。
「大事なのは見た目とかじゃなくてぇ、意思なのぉ。守りたいものがあるならぁ、力を手に入れて守ればいいのぉ♪」
ツバキもサザンカも頷いた。その言葉を聴いたリリィは決心した。
「……うん、そうだよね……キュリアスさん」
「おぉ。じゃあ準備しよっかぁ☆」
垂れていた髪を結び、首を見せたリリィ。キュリアスはリリィを吸血鬼にする前に言った。
「最後に聞くけどぉ、後悔はないぃ?」
「ありません……あの二人を守れるのなら」
そっか、とキュリアスは頷いた。
「じゃあ、ちょっと我慢してねぇ」
そう言うとキュリアスは首に噛み付いた。リリィの首に痛みが走った。それでもリリィは目を閉じて我慢していた。終わったのか、キュリアスは噛むのをやめた。
「私の体液を少し流しておいたよぉ。これで半分吸血鬼ねぇ」
リリィは目を開いた。側においてあった鏡をみて少し驚いた。
「左目が……金色になってる……?」
リリィの左目の色が、水色から金色になっていた。
「人間が吸血鬼になると、目の色が変わるのぉ。今回は半分だから、片方がそうなったのぉ♪」
「キュリアスさん!ありがとうございます!」
「じゃあ、今からやろっかぁ?」
「何をです?」
「特訓に決まってるでしょぉ?昼間でも動けるけど、夜はもっと動けるからねぇ。私の技、教えてあげるからぁ☆」
ツバキに連れられて辿り着いたのは、社の大樹の上にある広い闘技場だった。上を見上げると、満月が輝いていた。
「じゃあ、私は寝るから。帰りは……まぁ適当に頼むよ……ふぁぁ……」
ツバキはあくびをしながら階段を降りて行った。
「んじゃ、始めよっかぁ☆」
そう言うと、キュリアスはリリィとの特訓を始めた。
午前七時。カメリアとメロウはいつも通りに中庭での特訓を始めた。最近、二人で特訓をして、お互いの技を磨いていた。
「じゃあメロウ、始めようよ!」
「ええ。今日は何する?」
「合体技!合体技やりたい!」
「んー、どうやってやる?」
「そこは考えながら!」
「はいはい。じゃ、行くわよ」
二人は武器を召喚して、いつも通りの特訓を始めたのであった。
「うあ……もー無理……疲れたぁ……」
時刻は午後六時。休憩を挟みつつやった特訓だが、こんな時間までやっていると、流石に体にくる。
「とりあえず、お風呂入ろう……ここにいると風邪ひくから……」
二人は歩いて大浴場に行こうとした。その時。
「カメリア、メロウ。お風呂入って夕食食べたら、来てほしいところがあるの。」
後ろからツバキが来て、二人にそう言った。
「……いいけれど、何?」
「んー、まあ、特訓の成果を見せてほしいだけよ」
それだけ言ってツバキは去っていった。
「なんだろうね。今頃成果を見るなんて」
「さぁ……とにかく、今のうちに体力回復しておこうか」
大浴場に行くと、サザンカとツバキと同じ身長の幼女がいた。
「おー、二人とも、特訓終わったー?」
「うん。その子は?」
「私ぃ?んー、後でまた話すよぉ。じゃあサザンカ、私先に上がるねぇ」
「わかったー」
カメリアとメロウは少女の背中を見て呟いた。
「ねぇメロウ。あれって」
「そうね……吸血種ね。何しに来たのか……」
「後々わかるから、今は疲れをとろーよ。また後でなんかするんでしょー?」
そう言われた二人は疲れを取ることに専念した。
「あれ?そういえば、リリィは?」
夕食の時間になっても、リリィが部屋に来ることはなかった。カメリアとメロウは心配して、リリィがいる部屋に行こうとしたが、ツバキに止められた。
「寝不足で、寝てくるって言ってたよ。ご飯は置いてきたから、問題ないよ」
「んー、なら、いいのだけれど……」
カメリアはそれでも心配だった。後で部屋に寄ろうと思った。早めにご飯を食べ、カメリアはリリィのいる部屋に向かって歩き出した。
リリィの部屋の前に着き、カメリアはノックした。
「リリィ、起きてるー?」
返事はなく、カメリアは部屋に入った。ツバキが言ってた通り、リリィはベッドで寝ていた。
「ほんとに寝てるんだ……」
最近、リリィは全員分の食事を作る手伝いや、洗濯物など、家事全般を全てやっていたのだ。カメリアはその事を思い出し、起こすのをやめた。
「いつもお疲れさま、ゆっくり休んでて」
カメリアはリリィの部屋を後にした。
カメリアとメロウはツバキに連れられ、大樹の中の階段を上っていた。
「大樹の中に階段があったなんてね……」
「ツバキ、これどこまで繋がってるの?」
「大樹の上にある闘技場みたいなのに繋がってるの。そこでなら、たくさん暴れられるから。」
ツバキはそう言って早足で上がっていった。
「つ、ツバキ!速いって!」
「あ、ごめんごめん。楽しみで仕方ないから」
ツバキは笑顔でそう言った。
「(カメリア、メロウ。強くなったリリィとどこまでやれるかな……楽しみだなぁ……)」
闘技場に着いた三人。そこではサザンカと吸血種の少女が待っていた。
「お、きたきたー。」
「待ちくたびれたよぅ」
「もしかして、二人が相手してくれるの?」
「違うよぉ」
「じゃあ、ツバキ?」
「姉様でもないよー」
「じゃあ、誰よ」
そう言った瞬間、闘技場の周りから何かがたくさん飛んできた。それは二人を囲うように飛んでいた。
「わわっ!なにこれ!?」
飛んできた物体は、キーキー鳴いていた。メロウはその正体に気づいた。
「もしかして……コウモリ……!?」
そう、コウモリだった。カメリアは癒し効果をもつ音響魔法を発動した。大きな音にびっくりしたコウモリ達は、ある方向に向かって飛んでいった。そこに、誰かが立っていた。
「だ、誰!?」
コウモリ達はその人物の後ろに隠れた。全てのコウモリが隠れた時、その人物に月の光が当たった。二人はその人物の正体を見て驚いた。
「「り、リリィ!?」」
「やっほーお姉ちゃん、メロウさん」
リリィは赤と黒のゴシックドレスを着ていた。カメリアはそれを見て呆然としていた。
「リリィ……どういう事……?」
メロウは落ち着いてリリィに尋ねた。
「二人にばかり守られるのは嫌なんです!私だって、やれば出来るんですから!」
リリィは叫んだ。その声は泣き声に近かった。すると、吸血種の少女がリリィに歩み寄った。
「そこで、リリィちゃんのお手伝いをしたのぉ。あ、自己紹介するねぇ。私は吸血種のキュリアス=カーマイン。以後よろしくぅ☆」
キュリアスは笑顔で言った。カメリアは疑問に思ったことを言った。
「キュリアス、まさかあなた……リリィを吸血鬼に!?」
「いやいやぁ、吸血鬼にはしてないよぅ。その力をあげただけだからぁ☆」
「私は……この力を二人を守るために使うの……そのためにキュリアスさんに頼んだの……もう……お姉ちゃんが傷つくのは見たくないから……!」
リーサで起こったことを思い出したのか、リリィは泣きそうになった。すると、二匹のコウモリがリリィの前に現れた。
「泣いちゃダメだモー!」とつぶらな瞳をしたコウモリ「リリィちゃんは笑顔でいなきゃダメだリー♪」とリボンをつけたコウモリがそう言った。
「そうだね……ありがと、モーくん、リーちゃん……」
リリィが呼んだのはこの二匹のコウモリの名前らしい。リリィは涙を拭き取り、目を閉じた。
「この力で、二人を守る……私がどれだけ強いか、二人に認めてもらう……だから二人とも、全力で戦って……!」
リリィは目を開いた。左目が開いたと同時に金色に輝いた。
「私も、全力でいくから!!」「全力だモー!」「全力だリー!」
「リリィ……うん。もちろん全力で戦うよ……!」
「そうね。手加減なしよ」
「光と共に輝け!『ローズブルームーン』!」
「応えて……『雪永刀』!」
二人は武器を召喚して構えた。
「モーくん、リーちゃん。お願い!」
「いくモー!」「召喚だリー!」
「「『ヴァンパイアカルマ』!」」
モーくんとリーちゃんが叫ぶと二匹の間から紫色の光が現れて、そこから紫色の死神の鎌が出てきた。リリィはそれを掴み、一振した。
「なんか、すごいの出してきたけど……」
「でもメロウ、ああいうのにも必ず攻略法はあるからね」
「ええ……じゃあ、行こっか」
メロウはリリィに向かって走り出した。リリィは鎌を前に出して、防御の構えをとった。
「はああ!!」
メロウは雪永刀をリリィ目掛けて振り下ろした。
リリィはヴァンパイアカルマで受け止めた。
そこからメロウは斬撃を繰り返すが、全てリリィに止められてしまう。するとメロウの後から叫び声が聞こえた。
「メロウ、避けて!『フレイムフラワー』!」
カメリアのローズブルームーンから炎の球が現れ、リリィにむかって飛んでいった。
「っ!モーくん!」
「『モードチェンジ:シールド』だモー!」
モーくんが叫ぶと、ヴァンパイアカルマは形を変えて、鎌から盾になった。リリィは盾でフレイムフラワーを防いだ。
「リーちゃん!」
「『モードチェンジ:ガン』だリー♪」
今度は盾から銃に変わり、リリィは二人に向けて連射した。
弾幕を張られ、近づくことが出来ない二人。その弾をよく見ると、コウモリが横回転して飛んできているのだ。
「あの銃、コウモリが弾になってるの!?」
「めんどくさいわね……」
リリィは撃つのを止めると、今度は宙に飛んだ。
「いくよ!『バットシャワー』!」
頭上にコウモリを放ったリリィ。コウモリは上からたくさん降ってきた。
「防御魔法!『無敵の壁』!」
カメリアは魔法でコウモリたちを弾く。カメリアは無数に降ってくるコウモリに力負けしていた。
「メロウ……これ、キツイ……!」
「待って、これ私も出来るかも……!『氷壁』!」
メロウは雪永刀を地面に刺し、氷壁を出した。
「流石メロウさん……でも、これは止められないはず……!モーくん、リーちゃん!あれやるよ!」
「モー!」「リー!」
「「「『バットブラスト』!」」」
リリィ、モーくん、リーちゃんは紫色の光を身体にため、同時に放った。放った光は一つにまとまり、レーザーとなって二人に向かっていった。
「「っ……!!」」
レーザーは二人に当たり、大爆発をおこした。
「やったモー!」「勝ったリー!」
勝てた……安心したリリィだった……しかし、歩こうとすると、身体が動かなかった。
「え……!?」
「動けないモー!」「どうなってるリー!?」
二匹もその場から動けなく、困惑していた。
「確かに強いけど……まだ足りない……」
「じゃあ、こっちもあれやろっか」
レーザーを喰らった二人が何故か無傷で立っていた。
「ど、どうして!?」
「リリィ、私が瞬間移動できるの忘れてたでしょ?」
「あ……!」
完全に忘れていた。今動けないのも、カメリアの拘束魔法。カメリアの特訓を見ていたのに、それを完全に忘れていた。
「う、動いて……!」
「リリィ、こっちからも技使わせて貰うよ……」
メロウは雪永刀を上に向けた。カメリアが後からフレイムフラワーを発動。雪永刀に炎が溜まる。
「『フレイムブリザード』今なら行ける!」
リリィめがけてメロウが走って行った。リリィは迫るメロウを見て思った。
「(やっぱり……まだ力が足りないのかな……あはは……これじゃあ、二人を守れないや……)」
直後、リリィにフレイムブリザードが炸裂。
リリィは後方に吹っ飛ばされ、壁に激突。
「か……は……っ」
背中を打ちつけられて、息ができなかった。リリィはそのまま地面に倒れ込んでしまった。
「リリィちゃん!?大丈夫かモー!?」「しっかりするリー!」
しかし、リリィはそれに答えなかった。
二匹は心配になって、リリィを羽で叩き始めた。
それをみたツバキは止めさせた。
「まぁ待ちなさい。気絶してるだけだから。部屋まで運ぶよ」
ツバキの言葉を聞いて安心した二匹はリリィを運ぶツバキについて行った。
「勝てたけど……二人がかりは流石に辛かったかな……?」
「そうね……ついて行こっか」
カメリア、メロウ、サザンカ、キュリアスはツバキに続いて戻って行った。
リリィはツバキに運ばれて、自室のベッドに寝かされた。フレイムブリザードをまともに喰らい、壁に激突までしても、生きているのはキュリアスのおかげかもしれない。
「少し寝れば問題ないから。側にいてあげて」
「もちろんだモー!」「絶対離れないリー!」
モーくんとリーちゃんを見ていたカメリアはキュリアスに尋ねた。
「あの二匹って、リリィが飼ってるの?」
「そんな感じかなぁ。吸血鬼は必ずお供のコウモリを連れることになってるだけなんだけど、リリィちゃんからしたらお供と言うより友達みたいなものかなぁ」
「モーくんとリーちゃんだっけ……さっきリリィが使ってた武器って、あなた達が形を変えてるわけ?」
メロウの質問に答えたのはモーくん。
「ぼくたちがやっても変わるけど、リリィちゃんにも形を変えることはできるモー!」
「リリィはあなた達にお願いしてたよね。あれはどういう?」
カメリアの質問にはリーちゃんが。
「リリィちゃんはまだ戦闘なれしてないリー!だから私たちがその場にあうものに変えるんだリー!」
なるほどとカメリアは理解する。するとベッドの方から声が聞こえた。
「んっ…………あれ……ここ……は?」
目が覚めたのか、リリィが起きあがった。それを見た二匹はすぐさまリリィの元へ飛んでいった。
「リリィちゃん!大丈夫リー!?」
「あの時返事がなかったから心配したモー!」
「モーくん……リーちゃん……ごめんね……勝つって約束したのに……負けちゃった……」
リリィは約束を破ってしまったからか、酷く落ち込んでいた。
「仕方ないモー、二人を相手にして勝つのは厳しいモー……」
モーくんがそう言うと、リリィは叫んだ。
「わかってるよ!それでも……勝ちたかったから!!」
叫び声に驚いたのか、二匹は身体を震わせた。
それを見たリリィはしまったと言うような顔をして俯いた。
「ご、ごめんね……驚かせちゃって……。……モーくんの言う通りだよね……まだまだ未熟なのに、無謀なことなのは自分がわかってたのに……なのに……私は……」
俯いていたリリィの目からは涙が流れた。
一人と二匹の会話を聞いていたカメリアはリリィの側に寄り、抱きしめた。
「リリィは無謀なことなんてしてないよ?リリィは強かった。私とメロウが合体技使ったから負けただけ。こっちがズルしたようなもんだよ?だから、自分の力に自信もって?」
「お姉ちゃん……」
「急ぐ必要もないから……少しずつでいいから強くなっていけばいいよ……」
「メロウさん……うん、そうだよね……」
リリィはモーくんとリーちゃんを手のひらに乗せた。
「また一からやり直そっか」
「モー!」「リー!」
「ふふっ……じゃあ、頑張ったご褒美あげよっか」
リリィは二匹を左手に乗せ、右手の人差し指の腹を二匹に向けた。
「リリィ?何するの?」
「?こうするの」
「いただきますモー!」「リー♪」
二匹は向けられたら人差し指の腹に噛み付いた。
カメリアとメロウはその光景に驚いた。
「な、何してるの!?」
「え?この子たち吸血コウモリだから、血あげてるの」
「痛くないのね……?」
「何も感じませんよ?」
「なんかすごいわね……」
三人を見ていたキュリアスは部屋から出ようとしていた。ツバキはキュリアスに声をかけた。
「ん?もう帰るの?兵士の件、どうする?」
「取り敢えずぅ、私が何とかしよっかなぁ?時間があったら手伝いお願いぃ♪」
キュリアスはそう言って部屋から出ていった。ツバキはキュリアスの余裕な表情に違和感を感じた。嫌な予感がする……そんなことを思いながら。
投稿が遅れたのは機種変更と制作に時間がかかったからですw
いつも以上に長いのはキュリアスのキャラ構成を考えてたからですね。
今後も新たな種族が増えますが、それはたぶん先の話……
また次回お会いしましょう♪