赤の少女と雪の女王
サティの社…その大浴場…
「はぁ…なんか疲れたぁ…」
ツバキはため息をつきながら、浴槽の壁にもたれ掛かった。
「まぁ…私達の腕治してくれたからね」
カメリアは苦笑いしながら言った。
「それよりカメリア、尻尾洗ってくれない?」
ツバキは9本の尻尾を揺らしてゆらしてみせた。
「あ、うん」
カメリアはツバキの後ろにまわって尻尾を手で洗い始めた。
「んぅーー♪」
ツバキはとても気持ち良さそうな声で鳴いた。
頭の狐耳がぴこぴこ動いていた。
「これ…どうなってるの?」
「普通に尻尾なんだけど?」
「いや、それじゃあわからないのだけど」
「んー…じゃあわからない…あー…そのまま他のもお願い♪」
「ん…」
その後もツバキの尻尾を洗い続けていた。
「はぁ…なんだかなぁ…特訓って言っても具体的に何するの?」
場所は大浴場から変わってツバキの部屋―
「ん…それなんだけど、カメリアって得意なことってある?」
「えーと…得意っていうか…あ、目がいい!」
「それ得意っていわない…いや、それなら丁度いいかも」
「どういうこと?」
「明日教えるよ…んー♪美味しいー♪」
ツバキはベッドに腰掛け、アイスを食べていた。口に含む度に床につかない足をばたつかせていた。その度に耳がぴこぴこ動き、尻尾をぶんぶんさせていた。
(本当に可愛いなぁ…)
「ねぇツバキ。一緒に寝てもいい?」
「別に構わないけど、なんで?」
「撫でたいから」
「あのねぇ…」
そう言いながらもツバキは食べ終わったアイスの容器を机に置き、カメリアの寝るスペースを確保した。
「はい、こっちきなさい」
「ありがとう♪えへへ、ツバキもふもふー♪」
「明日からびしばしやるからね?じゃあおやすみ。」
明日から特訓かぁ……気合い入れてやろう………。
「さぁカメリア、始めるよ」
夜が明けて、時刻は午前6時。カメリアにとっては早すぎる時間である。
「眠い……だいたい何するのよ……」
「まず、私の言う通りにしてみて。まず、右腕を上に上げて、右手の手のひらを上に向ける」
「ええと、こう?」
カメリアは言われたとおりに上に上げた。
「そうそう。そしたら、右手に全神経を集中させて、その状態で目を瞑るの」
「目を……瞑る……」
「これは杖を召喚する儀式みたいなものなの。自分が作りたい形を想像して?」
「自分の思う形…………」
すると、カメリアの右手が光始めた。光は少しずつ左右に広がり始め……ある程度まで伸びたあと、光は消え、白い杖が形成された。
「うわぁ……すごい……」
「成功したね。カメリアには素質があるみたい。その杖、名前決めてね?名前がないと召喚出来ないから」
「な、名前……うーん……」
カメリアは握っていた杖を見つめた。白い杖の先端には、三日月と青バラが合わさった装飾がされてあり、所々星型の模様が埋め込まれていた。
「この杖の名前は……【ローズブルームーン】かな」
「うん、今度から召喚する時は右手を上に向けて、名前を叫べば召喚されるよ。次は魔法を使おっか」
「うん!」
「ねぇ、サザンカ」
「ん?何さ」
カメリアとツバキが特訓を始めた同時刻、メロウはサザンカの部屋に来ていた。
「サザンカはさ、それなりに戦える?」
「うん、ツバキ姉様と特訓してたからね。でも何で?」
「強くなりたいんだ……守られるんじゃなくて、守る立場にいたいの。だから、手合わせお願いしても……いいかな?」
「……うん、その眼差し、気に入ったよぅ。ついて来なさい」
「この地下空間なら暴れても問題ないよ」
「そう……じゃあ、遠慮なくいくよ……!」
メロウは胸元に手を当て叫んだ。
「お願い……雪姫の刀!」
胸元から水色の刀が現れた。メロウは素早く引き抜き構えた。メロウの周りには、粉雪が舞っていた。
「へぇ……自ら武器生成出来るんだ……おもしろそう……呼び掛けに答えたまえ、千年扇!」
サザンカは空から降った降ってきた扇を掴み、メロウに向けて構えた。
「「いくよ!」」
同時に叫んだ2人は同時に前に向かって突っ込んでいった。
「ツバキぃ……これあと何種類あるの……」
「あと3種類かな?」
カメリアはツバキの指導のお陰で炎、水、風、雷、暗黒、拘束魔法を覚えた。だか、どれも時間を掛けすぎて、流石のカメリアも限界に近い状態だった。
「残りは、絶対にやらなきゃいけない魔法よ。がんばりなさい」
あと少しでカメリアの魔法は完成する。そしてメロウは、どれだけの力を持っているのか……。