渦中
いやはや、とにかく疲れた。
おじいさんは腰を下ろす。
昨日に引き続き、今日もてんやわんやで、
まったく休む暇も無かったよ。
隣にはおばあさんも寝転がっている。
やはり夫婦は良いものだなあ。
おじいさんは回想した。
昔、おじいさんが若かったころ、
おばあさんも村一番のべっぴんさんだった。
若くて明るくて、男なら誰もが好きになった。
それがいつの間にか、二人がくっついて、
周りから非常にやっかみを受けた。
それからは、この通りさ。
おじいさんは微笑んだ。
よいお嫁さんを娶ったものだ。
おばあさんが起き上がった。
「あんた、早く仕事しなさい!
休んでる暇なんてないんだからね」
おじいさんは慌てて働き出す。
今日は田んぼの米を刈り取らねばならず、
朝からずっとこの調子であった。
「このうつけ者が!」
おばあさんに叱責された……
夫婦は良いものじゃのう。
夫婦は……
おじいさんは心の中で号泣した。
実際は、おばあさんの家畜同然である。
なぜなら、彼は離婚調停の時に、
慰謝料を払えなかったからである。
「また明日も来てよ」
遠くからおばあさんの声がした。
一生頭が上がらない。
おじいさんはそう思った。