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 ウィルフォーゼは、事前に門に待たせている馬車に向かおうと、生徒達がまばらな廊下を歩く。すれ違う者達に、挨拶をする。


「ごきげんよう」

「ごきげんよう、ウィルフォーゼ様」

「ウィルフォーゼ様、ごきげんよう!」


 そんなやり取りを何回かし、やっと廊下を抜け、階段を降りる。その時、背後から声を掛けられた。


「ウィール!」


 ウィルフォーゼは、ピタリと丁度階になっている所で、止まる。そして、ウィルフォーゼに声を掛けてきた主は、なんとそのままウィルフォーゼに抱きついてきた。


「っ・・・!!」


 思わず、悲鳴をあげそうになったが、なんとか押しとどめる。そろりと、自分を包み込む程体格の良い男を見上げた。

 その男の事を確認した途端、ウィルフォーゼの顔がひきつる。


「ろ、ローレン・ファクシリー!?何故此処に、いらっしゃるの!!?」


 そう叫ぶウィルフォーゼに、ローレンは「嫌だなあ、ロンって呼んでよ」と、答えになっていない事を、宣った。そして、ウィルフォーゼとは正反対な、タレ目がちの目に段々と熱が入っていく。


「ねぇ、ウィル。これから、婚約を白紙に戻すんでしょ?それなら・・・俺と・・・グフッ!!!」


 婚約しない?という、言葉を言い終わらないうちにローレンは、ウィルフォーゼから頭突きを食らった。そして、その衝撃でローレンがウィルフォーゼから手を離し、鼻を押さえ込んでるうちに、ウィルフォーゼはその場から逃げ出した。


「では!ファクシリー様、ごけげんよう!!」


 勿論、この台詞も忘れない。ウィルフォーゼは、やっとの事で門の前まで辿り着く頃には、肩で息をしていた。


「はぁはぁ」


 ローレン・ファクシリー・・・あの男、苦手ですわ。何かとちょっかいをしてきますし、あの人みたく、簡単に『好き』と囁く・・・。軟派な男ですもの、きっと女性全員に囁いているに違いないわ。例えどんなに囁かれても、信じないわ。


 そう、結論付けるとウィルフォーゼは、1回深呼吸して息を整えた。そして、門の外で待っていた執事、デルタロスに声を掛ける。


「デルタロス、待たせましたわね」


 デルタロスは、此方にお辞儀をして微笑むと、馬車の扉を開けた。


「お嬢様、どうぞ。旦那様たちが、お嬢様の帰りをお待ちですよ?」

「そうね、有り難う」


 そして、ウィルフォーゼはそのまま馬車に乗り込んだ。デルタロスは、ウィルフォーゼが腰掛けたのを確認すると、扉を閉めた。

 馬車が動き始め、窓の景色が変わっていくのを横目で見たウィルフォーゼは、そっと溜め息を吐き、瞼を閉じた。




 今は、何だかただ眠りたかった。



 ◇◆◇

 ローレンは、去っていくウィルフォーゼの背中を見つめた。


 やっぱり、そう簡単には口説けないか。流石、俺自身が惚れた女だ。ウィルフォーゼを傷付けた事は、許せないけど感謝するよ。婚約者・・・いや、『元』婚約者、かな。


 ウィルフォーゼは、絶対に俺が貰う。これは、そう。チャンスなんだ。


 ローレンは首からかけた、ネックレスにそっと口づけた。

 そのネックレスの飾りの部分には、花弁が1枚、あった。



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