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作者: 軋本 椛

 キャラの暴走が収まらなかった…




「蛍火と水樹君って本当に仲が良いよね」


 ―――――昼休みの昼食中、弁当を頬張っていると唐突に友人がそう言った。

 あたしは意味が判らず友人の顔を凝視して、口の中に放り込んだ春巻きを租借する。飲み込むまで時間が掛かっている間ずっと見つめていたからか、友人はどこか気まずそうに目を逸らして言葉を続ける。


「いや、だって……ほらさ、その弁当だって蛍火が忘れたのを水樹君がわざわざ教室遠いのに届けに来たり。登下校も大抵一緒にしてるんでしょ?」


 友人が指を指すのは、今は中身の殆どがあたしの胃の中に消えた弁当箱。…何かおかしい事でもあるのだろうかと、あたしは言葉を口にする。


「そうか? 仲が良いのは普通だろ、あたしら姉弟っつーより双子だし。ってか水樹にとっては迷惑かもしんねーけど、生活力皆無なあたしは水樹がいねーと生きていけないしな」


 ちなみにこの弁当も水樹の手製だ、と言えば、あんた達絶対性別間違えて生まれてるよ、と返された。うん、あたしもそう思う。

 ……しかしまぁ、


「ずっとこうだからなぁ…」


 むしろこの関係が変わることが想像できない。

 あたしは強くなることばかりで、他には何にも出来やしない。物心付いたときには既に強さばかりを求めていた。力ずくで突き進んで、前だけを見て、自分の身体がボロボロになっていくことさえ気づいていなかった。

 …それを後ろから掴んで止めてくれたのが水樹である。

 あたしの思いを否定せず、足元が崩れそうになるのを支えてくれた。あたしが出来ないことを、これが自分の役目なのだと笑って引き受けた。


『忘れちゃ駄目だよ、僕達は二人で一人なんだ。独りにならないで、僕にも依存させてよ』


 言われた言葉は、暴走気味なあたしを止めるストッパーだ。

 ……むしろあたしの方が依存しているのだろうけれど、それ位水樹はあたしにとって大切な存在なのである。…恥ずかしくて本人に言える筈無いけど。


「あたしはこんな関係がずっと続けばいいなぁって思ってるよ」


 きっとそう言いながらあたしが浮かべた表情は、子供みたいな笑顔だ。


















 ―――――――守月かみつき蛍火ほたるびは大切な、僕のたった一人の家族である。


 それはもし産んだ親が違ったとしても変わらないし、彼女以外の誰が家族であろうとも僕はそれを認めることはないだろう。

 ……どうしてそんなに頑ななんだって?

 答えても君達には関係ないし話しても仕方が無いことだけど、まぁ誰にも話さないなら教えても良いよ。ツンデレ? ……何処とは言わないけど握りつぶそうか?

 まあ良いや、じゃあとりあえずまず君に聞くよ。……君は転生って信じるかい?

 僕は至って正常だ。病んでる自覚は有るけどそれは蛍火に対してだけだしシスコンも解ってるから。

 ならどうしてそんなことを言うのかと問われれば、その転生ってやつを僕が体験したからである。…だから正常だってば、黄色い救急車呼ばないで。都市伝説だけどさ。


 ……前世の僕は双子の妹として生を受けた。この日本や地球とは次元の違う、魔力の存在する所謂異世界ってところの王族だった。けれど僕は本当に救いようが無いことに、魔力も無駄に多いだけの上、とんでもない病弱だったのである。

 …本当、魔力散らしの結界を張った自室から動けないほどに。どうやら僕は魔力の発生源である月の魔力を、体内に溜め込みやすい体質だったらしい。

 そんな僕の変わりに姉は期待を全部背負って、心身ともに疲労しているだろう姿を僕には見せまいとしていた。けれどそれを僕は知っていて、その努力を無駄にしないように知らないふりをしていた。

 ……そしてそんな日々はとても簡単に崩壊したのである。

 隣国の裏切り。母親である女王は僕達を逃がして国の崩壊と運命を共にした。その時の僕は何が起こったのか理解できないまま、姉に連れられて逃げたのである。

 ……けれど子供の二人連れを簡単に逃がすほど敵国は甘くない。僕達はあっさり見つかって、共々殺された。


 自分のことなのにやけに淡々と話してるなって思ったでしょ?

 …僕はさ、その頃の自分が大嫌いなんだよね。何も出来ないままただ守られてさ、結局足手まといにしかなっていないの。…僕がいなければお姉ちゃんは逃げ切れたのかもしれないのにね。

 まあ今となっては前世のことはほっといていいんだよ。だってまた――――こうして一緒に双子として産まれる事が出来たんだもん。

 ……今度はね、守られるだけは嫌なんだ。今度こそは守りたい。

 単純な力は蛍火の方が強いけど、僕には他の戦う力がある。


 ―――――――――――だから、さ。



 僕のお姉ちゃんに手を出すなら、殺すよ?



 ……社会的に、だけど。



















 ―――――――――――遠い世界で、昔々に願われたこと。



『強くなりたい。この手で、妹を守れるくらい、強く』



『強くなりたい。弱いこの身体じゃなく、足手まといでもなく、守れる身体が欲しい』




 ……願いは叶いましたか?


 満足しましたか?


 なりたいあなたに成りましたか?



 お願い事は強く願って下さいね。




 もしかしたら、ですが。神様が見ているかもしれませんよ―――――――――?




Q:何故最後に神様が出てきたんですか?


A:何故か勝手に登場してきました。



※蛍火は前世の記憶がありません。

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