99 三人の男の娘から告白されました
私の仕事はスクールカウンセラーだ。悩みを聞き、解決の糸口を一緒に考えることと私の中では定義している。
どんなに頑張っても悩みを解決するのは悩んでいる本人でしかない。私にできることは応援、それも的確な、と自負できるほどすごいわけではない。
だから、この子の悩みは実に困ったことである。
「――僕、先生が好きです」
この子はもちろん生徒である。私服登校が許可されているこの学校でもひときわ目を引く可愛らしい服装の男だ。
男だ。二度言う。
彼女、いや彼だろうか、自分が女装をしているという自覚がないようだ。
昨今ドラマやマンガで知名度が上がってきた、いわゆる性同一性障害という病であるだろう。
病、というのはおかしな表現である。実際どこか不健康ということではないのに、一般的ではないというだけで彼ら彼女らを私たちは病気だという。
大多数が少数を否定しているようで、私は嫌いだ。
さて問題に移ろう、彼女は私を好きだと言っている。便宜上彼女と呼ばせてもらう。
しかし、私としてもそれを否定せざるを得ない。単に私に恋人がいるということだ。
そして、私は恋人がいるということを告げる。
彼女は困ったような顔をして、すぐ私を立てる。けして私を悪しざまに言わない。
そうして、しばらく会話しチャイムが鳴ったのを聞いて彼女は去っていく。
「灯さん」
「はい、なんですか、センセイ」
「嬉しかったですよ」
彼女、灯はきょとんとした顔をして、笑う。
「それ、普通にフルよりひどいですよ、センセイ」
そう言って帰っていく。
私はお茶を入れながら、告白を受けたもう二人とどう話そうかと悩んでいた。
どちらも灯と同じ性同一性障害である。
希少性が重なることはありえない話ではないのだが、それには理由があった。
灯は解離性同一性障害であり、私に告白してきた彼女たちは全て同一人物であるのだ。
もう二回、私は彼女たちの心を折らなければならない。
なぜ、私なのだろう、紅茶を飲み自身の体型を見る。
かろうじて医者と呼べるがくたびれた白衣に、顔立ちも無精髭の小奇麗とはいえない造作だ。
「なぜかな」
「それは、同じ匂いを嗅いだからだ」
彼は私に言う。
ずっと傍に寄り添い、影として私とともにいる。
もう一人の――私。
「かもしれないな」
「そうとしか考えられない」
お前は格好の良い男ではないからな、その言葉に苦笑しながら私たちは紅茶を飲んだ。
創作仲間の宮内ミヤビさんからのお題でした。
実際、作中の登場人物のような病気を抱えた人物がカウンセラーをやっているのかはフィクションですので、ご了承ください。ただ、カウンセラーのためのカウンセラーというのはいるみたいですよ。
悩みを聞きアドバイスするお仕事ですから結構ストレスも大きいんじゃないかと。
では、次で最後です。
リクエストしたい方は良かったらどうぞ。
早い再会を祈って。




