93 大学生と転生
生まれ変わりというものがある。生まれながらに自分とは違い、それでも自分であるという認識を持った意識を持った個体のことだ。
彼はそうだった。しかも運がいいことに高水準の大学に通っていた知識があったのだ。
そのため彼は幼少ながら大人顔負けの弁舌を誇り、子供たちのリーダーというべき存在になっていた。
ある時、遠足で山に登った。彼は四人の班でリーダーらしく先導していた。
だが、どうやら一人はぐれてしまったようだ。
知識の上では同年代では負けを知らない彼は責任を感じて探して回った。
何とか見つけたが彼女は足に怪我をしていた様子だ。
担いで合流しようとしたが彼も長時間歩き続けた疲労でもう一歩も歩けない状態だった。
情けない、と思いつつ回復を待った。
だが、待つ必要がなかった。
ガサガサ、となる。草むらからだ。
彼女を後ろに立たせ熊でないことを祈った。
結論からいうと熊ではなかった。
「よぉ、大丈夫かぁ?」
同じ班の男子だった。
男子は教員を引き連れてやってきた。
当然、彼は教員にこっぴどく叱られ、班員からは笑われた。
「君は頭はいいけど、自分の行動と体力に過信しすぎる」
教員にそう言われ、自分は大学生などではなく今は子供にすぎないということを思い出した。
知識は役に立つけど、経験には勝らない。




