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89 卒業と逆転
カジノのある国で、伝説と言われたギャンブラーがいた。
あらゆる賭け事において負けを知らず、勝利しか知らないという冗談のようなギャンブラーだ。
ポーカーにおいては勝負に出るような札ではないのに強気に出て嘘のように勝ち、ルーレットでは情勢とディーラーの顔を読み自分の顔はカモのように見せる舞台役者顔負けの演技で全てを出し抜く。スロットはいい狩場でブラックジャックでは賭場を潰したこともある。
そんな伝説の博徒がギャンブラーの世界から足を洗ったという報が飛び交った。
様々な憶測を呼んだが、簡単なもので結婚したということだったらしい。
最も、結婚相手というのは場末のカジノの経営者でギャンブラーからディーラーに逆転したわけだ。
結局、彼は生涯負けということを知らなかった。
なにせ、カジノというものは胴元が勝つことになっているのだから。




