表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/100

82 無と好意

「彼に好意はないです」

 ほんと、と訝しげに尋ねる友人に彼女は重ねて言う。

「彼に好意はないです」

「いや、そんな、一字一句変えないで言わなくても」

「そして、彼は未だ恋人がいません」

 そうなんだ、と友人は安堵したようにつぶやく。彼女はそれを見て少しイライラしながら、こう付け加えた。

「童貞です」

「いや、そんなこと言ったら、私だって処――」

「ストップ、学校でそれはアカンです」

「まぁ、そうだよ、ね、ゴメンゴメン」

 ならば童貞発言は許されるのか、周りの男子は思った。


 そして、話中の童貞にして彼女の幼馴染が風邪を引いた。

 彼女の友人は心配していた。彼女はそれを見ながら助言する。

「今はチャンスです」

「え? なんで?」

「あの童貞、風邪引いてるところにつけこんでりんごむいてあーんとかされたら、いちころです」

 そう言うが、友人はいいよという。全く困った友人だ、と彼女は思う。


 結局彼女だけ見舞いに来た。

 幼馴染は死にそうな顔と熱さで布団に寝ていた。

 これを見たら友人はつらい思いだけをするのだろう、なんとなく彼女は思う。

 幼馴染の両親は共に働き詰めである、その事情を知っていたから彼女は幼馴染の看病をした。

 同年代の男子に比べ貧相なからだで、顔立ちも精悍というよりは可愛らしいという形容が似合う。言ってしまえば女々しい男だった。

「あ、れ?」

 顔を覗きこんでいると幼馴染は気がついたようで、彼女の名を呼んだ。

「ありがと、な」

「礼には及びません、むしろ謝って欲しいくらいです」

「ご、ごめん」

 なにか食べますか? 彼女はつぶやき、幼馴染はすりおろしたなしとヨーグルト、といった。

「全く世話がかかりますね」

「ごめん、でも――」

 幼馴染は言う。

「わがまま言えるのはお前だけだ」

 その言葉に、彼女は言う。

「私は貴女に好意はありません」

 拒絶の言葉に幼馴染は慣れたもので、言葉を返す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ