76 ワープと罪
ワープ技術という言葉には語弊がある。
技術というものは誰もが使えるようにするためのものだ。だから、知る。
ワープができるやつというのは選ばられた人間である、と。
そして、選定は無作為で無秩序、無意味である。
「一般人が巻き込まれた、0792、頼めるか」
体内無線というのはいつまでたっても彼女は慣れなかった。それも嫌いな人間からの声だとすればなおのことである。
「へいへい、わかったよ、飛べばいいか?」
彼女は尋ねる。意味を成さない、相手がワープ犯罪者であるならば結局飛ぶことは必須である。
上司はあぁ、とだけいい、彼女は体内無線をオフにした。
ワープ技術という言葉に語弊があるのならば、何故普及したのか? その問は技術が必要だったという応えが与えられる。
ワープを使えるものは異能力者はいるが、そのワープが安定して使えるようになるには人間の英知が必要だったのだ。
そして、その異能力者という財産は少ない、だからこの話は当然の帰結を迎える。
「ワープ犯罪者は、ワープ犯罪者にしか追えない」
彼女はその皮肉を笑い、今日もせっせと仕事に精を出す。
自分に課された刑期を減らすため。




