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75 香りと果実
果物を育てる農家がいる。だが、この頃の景気で需要はあるのだが客の舌が肥えていて従来のものを供給しても売れないという現状だ。
そのため農家はまず香りという点において品種改良することにした。
香りというのは見た目と並んで客が選ぶ項目の一つだ。間違いはないだろうと思って長年かけてようやく完成した。
いい香りがして、農作業する上でもモチベーションが上がっている。
だが、困ったことができてしまった。
どうやらいい香りすぎてよるはずのないハチが寄るようになってしまったのだ。
うーん、と困り農協の方に相談してみたらこう答えた。
「あらあら、いいですね」
「何がいいものか、ハチなんかが来たら厄介だ。刺されたら死ぬことだってあるというのに」
「その果物はハチが寄らないんですよね」
「そうだ」
「それだったらその果実の花から作るはちみつというのも作ってみてはいかかでしょう」
棚から牡丹餅とはこういうことか、農家は喜んではちみつも作ることにした。




