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74 裁判官と鏡

 とある裁判官がいる。

 裁判官は悪人を許さず、悪人を知り、悪人を裁く。権限は恩寵深き教皇からもたらされ、裁いた罪業は百を越す。

 彼は裁判のある日はいつも鏡を見ていた。

 なぜ、と人は問う。

 彼は笑って答えない。その態度が良くない、正答を持たないということは勘ぐられ悪く思われるということだ。

 彼に対し代弁者が尋ねる。

「貴方がいつも鏡を見ているのは、悪を裁くという大業のため悪人に侮られないため身なりに気をつけているからでしょうか?」

 彼はその問いにいいえと答えて理由を説明する。

「私には幸い妻がいます。よく出来たもので妻は私の衣服を見栄え良く選んで正してくれます」

「それでは何故?」

 代弁者の問に彼はまず、内緒ですよ、と前置きし告げる。

「私は悪人を知るために鏡を見るのです」

 代弁者は要領を得ないといった顔をして、しばらくしてから謙虚な人だと幸せに考えた。

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