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68 尻と剣

 悪党が恐れる魔剣、というものがある。

 どんな悪党でも倒すことが出来るという魔剣だ。名前は東洋の言葉のためよく分からなかったが今は盗賊殺しと名付けられとある富豪が持っていた。

 ある時その真剣を怪盗が盗み出そうと思った。

 怪盗はいわゆる義賊というやつで、その魔剣が有ればもっと悪を懲らしめることが出来る、そう思ったのだ。

 富豪は義賊の彼にしてみれば盗む対象ではないが、自分ならもっと魔剣をうまく使える、そう思って行動に移った。

 まず、富豪の家に怪盗らしく盗みの予告を出した。

 時間が来て富豪の家を跳梁するが、まず可笑しいと彼は思った。

 警備のものが誰も居ないのだ。富豪がそこまで窮しているという話は聞かない。

 不審に思いながらも魔剣がある場所にまで辿り着く。そこにも警備している人間はいないし、剣も警報装置で守られているということも、怪盗の熟練した目から見られなかった。

 彼はまず魔剣を手に取った。重さは重すぎず、軽すぎない。見た目は普通の名剣だ。

 そして、剣というものは鞘に収まっている。

 美女のドレスのように、その裸身を見てみたいというのは普通の感性だ。

 だから、つい怪盗は剣を鞘から出してしまった。

 するといきなり声がした。

 ギャーギャーと泣き喚く声はしっかりとした言葉であるが、怪盗の耳には意味を理解する事ができない。

 そして、ようやく警備員が現れる。

 怪盗は驚いて剣を取り落とす。しかし、声は止まない。

 逃げようとしてもうるささが消えず、立っていられないほどだ。

 そして、ようやく静まる頃に縄につき富豪が現れる。

「君が怪盗かね?」

「あぁ、そうだ」

「君も苦労する、聞けば義賊だというが、なぜこの剣を盗もうとした」

「もっと悪人を裁けると思ったからだ」

 愚かなことをしたものだ、富豪は言う。

「この剣は持ち主が犯してきた罪を暴き立てるものだ。持ち主の善悪にかぎらずそれまで犯してきた悪行罪悪をがなり立てる。だから、悪党殺しという」

「そうだったのか」

 最後に怪盗は尋ねる。

「その剣は、本当はなんという名前なんだ?」

 富豪は答える。

「シリワレ、という」

 尻が割れる魔剣というわけだ。悪事が露見するという意味を持つ魔剣はしゃべり疲れたのかゆっくり鞘に収まった。

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