63 女子高生と呪詛
「恋が叶うおまじない」
というのは私達女子高生の間ではよく話題になる。誰それが付き合っている、誰それがふられた、などなど恋バナにはことか欠かない。
私もよくある女子高生として、恋には人並みに興味も有れば関心もある。
だから、私はそのおまじないを試してみた。
消しゴムに好きな人の名前を書き使いきれば恋が叶うといったものだ。
千種あるおまじないの中からこれを選んだのは、私が漫画部員だったからだ。すぐ効果が出るだろうという打算もあった。
もうすぐ効果が出るんだろうという時に彼は夕焼けが入り込む部室にやって来た。
やって来て、私ではなく別の同級生と話をしていた。
楽しそうにしていて、私はいたたまれなくなって帰ろうと思う。
途端、私は消しゴムを落としてしまった。
彼が拾う。私は赤面してお礼も言えずそそくさと帰ろうとした。
そして、彼が私のカーディガンの裾を掴む。
「この消しゴム、君のだろ」
「う、ウン、ありがと」
じゃあさ、彼は頬をかいて尋ねる。
「なんで、俺の名前書いてあるんだ?」
見られた、という衝撃に私は胸がなるのを感じた。このおまじないは誰にも見せてはいけないという制約がある。
この恋は叶わない、思いながら、彼と話していた部員がフォローするようにしゃべる。
「それおまじないだよ、ってか三木それマナー違反。そしたらその子の恋がかなわないから」
彼、三木くんはマジ? と言葉を漏らして滑ったように本心を話した。
「じゃあ、俺と同名のやつか。璃子ちゃんのこと俺好きだったんだけどなぁ」
「え?」
「え、あ、いや、その、そう、俺璃子ちゃんのことが好きです。でも、ふられちゃったかぁ」
頭を掻いて三木くんはいたたまれない顔をする。
そんな顔が悲しくて私は告白する。
「私が、好きなのは、三木誠司くんです」
私と付き合ってくれますか? 私は言葉にする。
女の子の恋に必要なのはおまじないじゃなく、等身大の言葉だったのだ。




