06 憧れと監禁
「ふっふっふ、とある大企業のアイデアマンを誘拐したぞ!」
そう言って暗く潮の音がするコンテナらしき場所で主犯格の男はは私の前に立った。
「クソ、なにが目的だ、元の場所へ返せ」
悪態をつき私は誘拐したグループの主犯格に質問した。
主犯格は友好的な笑みを浮かべ答えた。
「私は君に永続的に協力してもらいたいのだよ、私はしがない会社の社長でね、よくて買収悪くて倒産ということになりかねない。だから、私は主戦力である君に我が社で売れる製品を企画してもらい、我が社を立てなおしてもらいたいのだ」
成程、と私は思う。話としては筋が通っている。彼等は決定的に正しく、私にとって決定的に危ういのだ。
だから、私は言葉を告げる。
「残念だが、私は君たちにアイデアを与えない」
「ほほぉ、義理立てですかな? ですが、そんなことをすれば私達も貴方に危害を加えたくなりますよ?」
主犯格、いや、社長は先程の猫なで声をつぶやいていた口で飢えた虎のような笑みを浮かべた。
しかし、話を聞こうとしているところはある。私はそう思い、彼等の行動を制するために先んじて言葉にした。
「私はアイデアマンではないのだ!」
私の大声は彼等の行動力をそいだ。
社長は「な、何だと」見るからに狼狽した。それから持ち直すようにまくしたてた。
「貴様の誘拐は確実だった。顔も背丈もまるで同じ、声も同じだった――」
「静脈は? 瞳孔は? 君たちが調べたのはどれも複製可能レベルだ」
「じゃ、じゃあ貴様は一体!?」
影武者だ、私はそう言った。
更に彼らが逃げ出すように仕向ける言葉を続ける。
「更に私の体内にはGPSと救難信号を発する機械が仕込まれている」
「く、クソ、とっとと出て行きやがれ」
彼等は親切に拘束を解き私を開放してくれた。
「危なかった」
私は誰もいなくなった場所でほっと胸をなでおろした。
私の言った言葉は嘘だった。
「私はアイデアマンのクローンだったのだ、アイデアマンが企画を出せなくなった時のために同じ発想で企画を作る事のできる存在。そもそも、クローンを作ろうといったのは――」
私はつぶやく。
「「「私達だ」」」




