58 ヘイ、エブリバディ!
はまさんからのお題です。一番最初に受けて、一番最後に組みました。難しかったです。と言うかセリフからでもお題になるんだなぁ、しみじみ。
力攻めなところはありますが、花の比喩は書いていて面白かったです。
「辛夷」は「こぶし」とよみます。白い花で3月ころだったかに咲く花ですねー。私は実物は見たことないですが、ネットは広大ですね。
「ヘイ、エブリバディ!」
唐突に言葉を投げてきた男に彼女たちは視線を向けた。
イケメン、格好はいい男である。大学生にしては洒落者で雅に言えば伊達男、今風に言えばチャラ男である。
大して彼女たち四人は華やかであるという共通点のほか、どういうつながりか見えないものだ。
一人は清楚なお姉さま系である。しとやかで慎ましく白百合、という比喩がよく似合う女性である。
対してメガネを掛けた女の子は知的と言うよりは向日葵という形容がしっくりくる。快活でよく喋り、且つけして不快な空気にならない配慮ある女性である。
二人が大人の女性ならばこの子はプリムラの如き幼さを見せる女の子である。野暮ったくならない程度に可愛らしいフリル柄のスカートをはき、折れてしまうのではないかと思うほど危うい線の細さには守ってあげたいという庇護欲を掻き立てること間違いない。
さて、最後となったが彼女は辛夷のような艶やかさがある。戦う女の色気と言ったらいいだろうか、名に恥じぬ信頼が彼女に向けられているのが分かる。
なにせ、彼に食って掛かったのは彼女なのだから。
「なんだよ、あんた何か用か?」
閉じた蕾の如き警戒感を露わにし彼女は皆を守るように彼と並び立ち言葉を投げた。
それに怯みもせず彼は言う。
「俺と付き合えよ!」
言葉に、彼女たちはあっけにとられる。
まず、否定の言葉を辛夷の彼女が向けようとして一笑。
破顔したのは白百合の彼女だった。
「あ、あらあら、ご、ごめんなさい」
「ちょっと、もう、締まらないわね」辛夷の彼女は調子が狂ったようでため息を付いて、仕切りなおした。
「んで? 冗談はともかく、一応聞いてあげる。誰が本命よ?」
辛夷の彼女は笑わない。ただプリムラや向日葵の彼女たちは、どこか期待しているような視線を向けている。
彼は堂々という。
「全員だ!」
この言葉に、笑ったのはやはり白百合の彼女だけで、それ以外は誰もぽかんと口を開けた。
辛夷の彼女は断頭台の如き苛烈さで告げる。
「全員にふられた感想は?」
彼は曲がらずまっすぐに言う。
「惚れさせるのが燃えてきた!」
やはり白百合が笑う。
けれども、それ以外に向日葵やプリムラの彼女もつられてしまう。一人仏頂面の辛夷の彼女は困ったような顔をする。
誰もが満更でもないといったふうだ。




