05 ホームドラマとハシゴ
それはある晴れた休日の事だった。
背の小さな子供がおばあちゃんに頼まれ庭の枝を切ることになった。親に頼めばいい、と思うかもしれないが世のお父さんは出張休日出勤と大変です。
子供は負けそうになりながらも庭の枝を切ってきましたが、さぁ大変。
「うぅ、コマったなぁ、あんなに大きな木じゃぼくの身長じゃとどかないゾ」
困った子供におばあさんが話しかけます。
「どうしたんだい、たぁ坊」
「あ、ばぁちゃん」
じつは、と子供は相談します。
背の曲がったおばあちゃんが胸を叩きます。
「任せなさい、こんな事もあろうかとハシゴを買っていたんじゃ」
そう言ってハシゴが出てきます、でも、子供が知っているハシゴとはまるで違いました。
全く新しいはしご――それは……!
「――お父さんハシゴじゃ!」
なんと、お父さんの形をしたハシゴだったのです。
「すごいやぁ、子供が組み立てにくいハシゴの開閉も簡単だぁ」
子供がお父さんハシゴを褒めます。
「それにじゃ! たぁ坊、腕をよく見るんじゃ」
「あ、動く、お父さんの腕動くよ!」
その言い方はどうなのか、ともあれお父さんハシゴの腕は動きます。なんでかというと――
「腕にぶら下がることも出来るんじゃ!」
「わぁすごぉい。子供の頃憧れるナンバーワンのイベントがこんなに簡単にできるなんて」
「まだまだあるぞ、スイッチをポチッとな」
「おぉ、すげー、お父さんすごいよ!」
なんとお父さんハシゴが腰部分から回転しだしたではありませんか!
「こんなお父さんが欲しかった、でも、おばあちゃん、高いんじゃないの?」
そうです、こんなに高機能なお父さんではちょっと高くなるんじゃないか、皆さん心配ですよねぇ?
でも、大丈夫!
それではおばあさんお値段をどうぞ!
「一万五千円!」
「安い!」
「安いじゃないよ、宮脇くん」
「えぇ、どうしてですか、部長」
部長こと宍戸はプレゼンをする宮脇に対して辛辣に言い放った。
「私はね、たしかに君にホームドラマ風の通信販売の商品の企画を頼んだよ、でも、なんだいこれは?」
お父さんハシゴです、顔を変えるでもなく宮脇は返答した。それに頭を抱えながら宍戸は言葉を選んだ。こんば部下でもいろいろな企画を出してくれる大切な部下だからだ。
「確かにホームドラマ風だ、子供は喜ぶかもしれない、だが、君は重要な勘違いをしている」
「勘違い、ですか?」
そうだ、宍戸は告げる。
「この際コストパフォーマンスだとか、技術が高いとかではない、もっと基礎的なこと」
「それは――?」
2倍ダーシに疑問符つけているような顔だな、と皮肉を思いながら宍戸は言う。
「誰がこんなものに金を出すかということだよ」
もっと力強く言ってやりたかったが、どうにも怒る気が失せてくる宮脇の顔に気づきの表情を見て伝わった、と宍戸は思った。
しかし、それが理解に程遠い表情であることに数秒後宍戸は気づく。
「任せてください、部長、この宮脇。抜かりありません」
「は? み、宮脇くん、この商品でどうやって売るというのかね?」
「実は、先ほど出したプレゼンで出していない機能がありまして」
なにかね、宍戸はイラッときていた。
「世のお父さん方に反感を抱かせるのはダメだろうと思いまして、実はこんなの機能があったのです」
宍戸は、かなりいらっときていて反応を返すのも億劫になっていた。
「実はこのお父さんハシゴ――」
2倍ダーシまで使って発した言葉に――
「――お姫様抱っこも出来るのです!!」
――宍戸部長は激怒した。




