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46 槍と名前
長大な槍がある。
いかな名匠でもつくり上げる事の叶わない、神か星が作り上げたとしか思えない神秘の槍。
それを携えて彼は歩く。
槍には名前があった。
しかし、それを思い出すことができない。
彼の旅は名前を思い出すという使命がある。
思い出すことによって世界が救われるという伝説があるのだ。
実際彼はその神秘に恥じない体験をした。
槍を心ならず手にした時、御遣いか神そのものと思しきものと出会い、告げられる。
「その槍の名を思い出した時、貴方は世界を救える」
後押しもあって彼は強い使命感によって歩いていた。
きっと救われる、きっと報われる、きっと――
思い、槍が貫いてきた無辜の民を思う。
守るべき民が槍を求めて彼を襲ってきたのだ。
彼は戸惑いながらも槍を奪うものを誅戮してきた。
何故と思い問うたこともあった。
答えは槍を手にし我こそが救世主にならん、としたものだった。
いつしか、人が少なくなっていった。
その頃になってようやく槍の名前を思い出す。
守るべき民がどこにもいなくなったというのに。
彼は使命とは何だったのか、救いとは何だったのか、神に問い、失意の中天上に名を、地に身体を返して、去っていったという。




