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45 兜と地下室
とある村に馬を育てる生業をしている家があった。
家の馬は丈夫でしかも速いときたためその家は村一番の大金持ちであった。
ある時酒宴が催され当主が自慢気にこう言った。
「我が家の地下室にはとんでもなく価値のある兜があるのですよ、それが我が家の家宝です」
それを聞いた大金持ちを快く思っていない村人がそれを盗んでやろうと画策しました。
月のない夜、彼は地下室に忍び込んで探しました。
だが、いくら探しても見つかりません。
そして村人はとうとう諦めました。自分が悪いため相談も愚痴をこぼすこともできない。
また酒宴がありました、その時になって村人は大金持ちに尋ねました。
「兜というのはどんなものなのです?」
そう言うと大金持ちは気前よく兜を見せました。
村人はなるほどと思いました。
兜、というのは人間が使うものではなく、馬がまとうものだったのです。




