41 ゾウと敵
あるところに大きな年老いた象がいました。彼は古くから生きており同じ象の中でも盟主として君臨していました。
しかし、人間に追われるようになりまず彼は仲間に人間は危険であると呼びかけました。
けれども、年若い象や侮る同輩によって彼の言葉はかき消されてしまいます。
ついに、年老いた象は人間に捉えられてしまいました。
象は追われていた先達や罠によって捕まった無辜の象を思いながら死を覚悟しました。
しかし、人間たちは年老いた象の想像からはなれた扱いで処遇しておりました。
狭いながらも腹一杯になるほど牧草を食べさせ、時には果物すら与えてくれたのだった。
更には交配活動も世話をしてくれる。まさに下世話ではあるが、老象には腑に落ちなかった。
言葉を食事の世話をする男にかけた。
男はびっくりしながらも笑って答えた。
「それは合戦のためだよ、象は巨大で強いからね」
それを聞いて老象はますます人間に不信感をいだきました。
けれども不思議と他の象たちは人間に対しての不満を持っていないようなのです。
なぜなのか、問いかけると答えは一様に。
「飯の心配をしなくていい、そして、少し痛いことを我慢すれば確実に飯も食える」
これである、老象は他に違う意見はないか、自分の意見に賛同するものはいないか、そう思い他の象たちに尋ねて回った。
同じ言葉を持つ象はいなかった。
むしろ、言葉が老象を切り裂いた。
「――貴方はどうして人間を嫌っているのですか?」
「当然、我らを利用していることが――」
「他の生物の習性を利用する動物なんてゴマンといます、人間だけがそれを行うなというのはおかしくはないでしょうか?」
貴方は――若い象が告げる。
「人間が我が物顔で我らの主人面をしているのが気に喰わないのではないでしょうか」
違う、と言葉にしようとしてならず、老象は悟った。
自分が老害になった、と。
その後、老象は絶食し自死した。




