40 屋根と寿命
泥棒の生業をしている彼はその屋敷を見つけた時喜びとともに違和感を覚えた。
まず、喜び、屋根に寿命が来ているというのに修繕していない、これは凋落と取るべきだろうが館は立派で金持ちのように見えた。
しかし、違和感。人の気配がない。たまたま家主がいないだけかもしれない。けれども二、三日様子を見て誰も出入りする所を見ていない。
泥棒はあたりを様子見するのに結構時間をかけるものなのだ、だが、それでも今回はかけすぎた、自重して今夜盗みに入ろうと、彼は思った。
「あんた、泥棒かい?」
ふと声をかける男がいた。男はいかにも農家といった風体で、問は咎めも疑いもなく、ただそのままの意味を持っていた。
「あの家はやめて置いたほうがえぇ」
「失礼な、泥棒と疑ってかかるか」
実際はその通りだっため、彼はあえて強く言った。男はその強がりをさして気にした風もなく、杖にしていた鍬を抱えて振り下ろした。
「まぁ、好きにせい、儂は止めたからな」
男はまるで彼をいないものとしたかのように農作業に移った。
疑惑が浮かぶ、本当に大丈夫なのか、あの家はなにか他と違うのかもしれない。
しかし、男としても三日も使って何も手に入りませんでした、というのはいささか間抜けに過ぎる。
恐れと誇りの天秤はプライドに傾いた。
そして、夜を待った。
家に入る。
「なぁ、屋根が治っていないかぁ?」
屋敷のすぐ近くを耕す男は隣近所の同じ農家の老人がそう気がついたのを聞いた。
たしかに、屋敷は治っている。
「人喰い家だからなぁ」
「じゃあ、誰か入ったのか?」
老人の問に、男はとぼけたふうでもなく首をひねってこう言った。
「さて、皆目見当もつかない」
取り敢えず、9月の目標四十個到達は今作品でクリア。長かったような短かったような、いずれ、百本ももう少しですね(後六十本なんですけどね、気が早いw)
次はゾウと敵です。
では、早い再会を祈って失礼します。




