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04 無と人形

ファンタジー、割とお気に入りですが、暗い話。好き嫌いがわかれると思われます。

 ――私は顔を持たず生まれた人形だった。

 周りからは顔を持たないためバカにされ、美しい人形から嘲笑され、あこがれを抱いた人形に対する思いも口にすることが出来なかった。

 私は顔が欲しかった。顔があれば何かが変わる、顔があればバカにされない、顔があれば――

 そんな思いを抱きながら私は旅に出ることを決意した。

 旅に出た先ではいつも白い目で見られた。目がないから解らなかったが、表情はいつも畏れ抱いた表情だった。私はそれを避けるように旅を続けた。

 そんな中私は二人の人間に出会った。

「まぁ、きれいなお人形さんねぇ」

 はじめて、私はそんな賛辞を受けた。

「ねぇ、ガスト、この子困っているわ。照れているのね、可愛らしい」

「ルイーズ、君は目が見えないだろう? どうしてそんなことが解るんだい?」

 ガスト、と呼ばれた青年の顔はいつも私を見る町人の顔と一緒だったが、ルイーズと呼ばれた少女の顔を私は今まで見たことがなかった。

 それが笑顔だと青年の言葉でわかった。

 少女が続ける。

「私は心が見えるわ。目が見えないけれど、それでも私は他のものが見える」

 この子は可愛らしいわ、私はその言葉を聞いて場違いなことを思った。

 ――美しい。

 と、人形が人間の顔に恋をしたのだ。

 それから私はルイーズの家に招かれガストと共にルイーズの世話をすることになった。ルイーズは目が見えないため障害が多々あるため私の存在は重宝したようだった。異性であるため彼女の世話で恥ずかしがっていることがあったようで私はガストからも礼は貰った。けれども、私への敵愾心は消えてはいないようだった。

 そして、彼女の世話をしながら恋は昂る一方だった。

「ねぇ、お人形さん、貴方に何かプレゼントをしたいわ」

 私はそれに応える口を持たず、彼女は盲目であったため見せる文書を作ることも出来なかった。

「そうだ、顔を上げましょう」

 この場にガストはいない。少女のルイーズがイスにちょこんと乗りながら胸の前でポンと手を合わせてコロコロと笑っている。

 ――それは良い提案だ。

 願ってもいない。

 私の心の顔はニコリと笑い。

 彼女の首を――ストンと落とした。

 私は首をつける。

「は、ははははははっ――」

 念願の顔を手に入れた。それもこんな美しい顔を手に入れたのだ。

「どうした! ルイーズ!」

 私は後ろから投げられた声に振り返る。ガスト、と気がつくのに少し時間がかかったが私は笑みを形作ろうとした。

 だが、変わらない。ぎこちなさだけあり、力みながら顔を変えようとしても私の顔はシワの一本も変化することはなかったのだ。

 ガストは私の横を通り過ぎ首の落ちたルイーズの身体を掻き抱いた。

「――お前が、お前が□□したのか?」

 □□した? □□した、とは――

「な、んなの? ガスト?」

 私にはまるで訳がわからなかった、□□すとはなんなのか。私がしたのはただ首を落としただけだ、そんなことが□□すということになるのか?

 理解が及ばない。

 及ばないままガストがルイーズの座っていた小さな椅子を片手で持ち上げ、私を壊そうとする。私にはまるで訳がわからない。

「ど、どうして――こんなことを」

 私は逃げながら声をかける。

 誰に?

 そうクビを落とされびっくりして気絶しているルイーズの目を覚ますために私は声をかけた。

「貴方からも言ってあげてよ、ルイーズ! 私はただ首がないだけだって!」

「いい加減にしろ!」

 ガストの顔がよく見える。彼は恐怖も怒りも通り越して無力感に苛まれた人形にはとても出せそうにない、人間の顔をしていた。

「人間はなぁ、首が落ちたら生きられないんだよ! 化け物!」

 ガストは耐え切れなくなったようにして悲鳴を上げて部屋から去った。

 私は意味を咀嚼しながらルイーズの身体を揺さぶった。

「ね、ねぇ、じょ、冗談だよね? ね、ねぇ、ルイーズ」

 返事はない。

 肌に触り、これが人間の熱さかと疑問を覚えるほど冷たさに私は愕然とした。

 火が、見える。

 館が燃えている。

 私は、ここで壊れる。そう覚悟して最後にルイーズの顔を見れれば私は満足して壊れることが出来る。

 確か、ルイーズの部屋には鏡があったはずだ。

 私は/ヤメロ

 鏡を/ヤメロ

 覗いた/ヤメロ

 映っていたのは、美しいものではなかった。

 私が殺した少女の顔は死の苦痛に耐えられず醜く歪ませていたのだった。

「は、ハハッ」

 まるで、ルイーズを真似するように空咳のみたいな笑い声が溢れる。

 ルイーズが言っていたことを思い出す。

「私は眼が見えない代わりに、心が見える」

 ないものをねだっていては自分の持っているものが見えなくなる、彼女はそう言っていたのだ。

「私が――ほんとうに欲しかったものは――」

 なんだったのだろう?


 焼失した館から二人の遺骸と大きな人形が見つかった。

 その遺骸はルイーズとガストであることが解り、黒焦げになった人形は彼女を世話をしていた人形であるとわかった。

 ガストが館に火をつけた疑いがあり、その動機は不明。ルイーズの頭部が切り離されているため、殺人も行った疑いがあると当局は判断した。

 ルイーズと人形は一緒の部屋で発見された。

 人形がルイーズを抱きしめている形だった。この人形の甲斐甲斐しさは付近でも評判だったため当局はガストの暗い心情が今回の事件一因になったのではないか、と当局は原因追求している。

 末尾に――この人形には顔がなかった。

 焼け跡からルイーズが人形に贈るため、とみられる顔があることが判明した。

 ただ、それだけである。

 それが意味を持つのは等の本人たちだけである。

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