39 店とギルド
とあるギルドがある。
ギルドは多くの賛同者を得て諸国にも傘下がある。
しかし、強大な仮想敵国が生まれそれに伴いギルドにも閉塞感が生まれ、行き詰っていた。
ギルドは国の指図で仮想敵国の仮想敵国、つまり敵の敵は味方、という故人の言に従い自らの版図を広げるためその国に訪れた。
その国の人々はボロを着て貧しくとても同盟に値するか、はじめてその国を訪れた彼等は暴漢に襲われたりと、使命を果たすことの難しさをひしひしと感じていた。
しかし、頭の良さにかけて彼等の度肝を抜いていた。
こんな説話がある。
石を並べてゴザを敷いている賭博師がいた。何をするか、どんな賭け事なのか、説明を片言の彼国語で尋ね、彼は流暢に母国語で答えたのだ。
まるで魔法のようだった、まず、賭博師のすごい所は二つ、一つはギルドの旅人の風体でどこの国の人間化を見抜き、さらには旅人の国の言葉でよどみなく説明ができた、というところだ。
それに比べればこの賭博の内容などさしたるものではない、数十個の石を三つまで取ることができ、最期に石をとったほうが負けというものだ。言い換えれば最後の石を取らせたほうが勝つ、といったもの。そこから数学が広く浸透し様々な議論がなされている勤勉さが強いことを思わせる。
旅人は情報の手間賃代わりに三回ほど負けた。それによって得られたものは三つ。
一つはすでに、国は他国のギルドが侵入していることを掴んでいる。
二つは、数に強いがこの国が貧しい、ということ。
そして最期に――この国が他国と組むことはないだろう、というものだった。
商談につく、それまでのやりとりは長かった。相手はこの国で最も影響力があり王族へ娘を嫁に出し血縁でもある大商人だ。
それがあっさり終わってしまうことは、絶対に避けなければならなかった。
「――はっきり申し上げましょう、お断りです」
開口一番がそれだった。しかもご丁寧に旅人の母国語で、だ。
「三つです、まず我々はあなた方の仮想敵国と同盟を組みました、ついで我々の市場と噛み合わないどころか弊害になる、最期にあなた達の言葉はつまらない、そんなもののギルド組み入れるなどもってのほか」
最も強い理由は最期ですがね、嘲るように旅人に告げた。
嘲罵に屈辱を感じながら旅人は嘘、欺瞞、そして不安を感じているのではないか、そう言う疑念が浮かんだ。
隣に座る同じ旅人に目配せをする、考えをまとめ話を引き出す為雑談を交わす役だ。
そこから浮かんできたものを統合し旅人は言葉にする。
「――嘘、ですね」
旅人の言葉にようやく彼等は興味を示した。
「何が嘘なのでしょう」
「まず、同盟、これが嘘です。厳密には条件付きの従属、私どもも長くこの国にいました、その間王女が敵国に嫁ぐといったものです、残忍もって知られる王子のもとへの婚儀、心中さぞ穏やかならざることでしょう。その証拠に居酒屋で婚儀を喜ぶこと声を一切聞きませんでした」
「――」
言葉を聞いている、それがわかると舌が踊りやすように滑らかに流れでた。
「そして、市場が噛み合わない、弊害というのですが、それはあからさまで分かり易い方便です。遠国ではありますが我らが結べばそちらにも商機が得られます、私どもはあなた方の国であなた方私どもの多くの国でものが流通します、流通すれば人が動く、人が動けば金が動く、金が動けば人が潤う、人が潤えば――」
「もういい、結構だ」
言葉は強い調子だ、打ち切ってしまうそう思わせるのに十分な怒りがあった。
だが、それは罠だ、思い、彼は静かに呼吸を整え次の言葉がすぐにはっしないことを論拠に最後の言葉を告げる。
「あなた方は確かに優れた国民だ。言語堪能で数学算術にも我々を凌駕している、しかし、それならばなぜ民が肥えない?」
聞いている、では聞かせてやろう、旅人は告げる。
「大商人らの既得権益の固持による若手商人の育成がなされないこと、せっかくの算術の才能を個人でしか活用できない商業拡張のノウハウのなさ、言語堪能であるための矜持の高さそれに比べ弱兵である事による理想と現実がかけ離れていること」
全てとは言わない、彼は言う。
「私達はあなた方の悩みの多くを解決できる術を持っている」
手を取りますか取りませんか、旅人は言い、言葉を待った。
肯きをもって互いの利益を得た。
これは故事となり地名のウィンと旅人の名ウィンにかけて、ウィンウィンの関係といった。
ウィンウィンの関係はこれが故事ではないです。でも実際にある言葉なので良かったら見てみてください。
書いてて楽しいな。ここ最近の投稿作は長編で書きたい作品でもあるし、わりかし膨らみやすいのではないかと、膨らみかけ、あると思います(ゲス顔)
では、早い再会を祈って失礼します。




