38 雲と人類
雲の上には神様がいる、それは迷信であることを皆が知っている。
「雲の上には雲上人がいる」
それが地上を支配する新しい神様の名前だった。
雲上人は地に農耕を広め、精錬を教え、なにもかも雲上人に従えば――という空気が地上に生まれていた。
そんな中で一人の王様がいた。
王様という特権階級は雲上人の中にしか生まれない、そんな中王様は一人でした。
非難があり、守るべき民もなく、寄り添い愛でる美姫もいない。
けれども王様は空気を変える事に邁進しました。
一番、王様を支援したのはなんと雲上人だったのです。
隣に侍る天上の美姫に王様は尋ねました。
「どうして、雲上人であるそなたが私のところに嫁いできたのだ?」
「それが雲上人の総意であるからです」
艶めいたものなど感じさせず、美姫は言う。
王は笑いながら、尋ねる調子を変える。
「雲上人は何を考えている?」
問いは僅か、その中に秘めたものが一つ、殺意。
けれども雲上人の美姫の顔は一筋も変わることはなかった。
その顔を見て王は、なんだかバカらしくなってしまったのでした。
「なんぞ、表情を変えてみよ、人形を愛でているようでいささか」
「――つまらない、ですか?」
雲上人の美姫は見上げる。
成程、美人は怖いという言葉がよく当てはまる顔だ。しかし、畏怖とともに興趣を覚える顔であると王様は思いました。
美姫は肩を抱く手がこわばったのを感じて表情を変えず、何らかの情動があった、と王様は確信しました。
「顔を変えられない、というのなら生い立ちを語れ、それぐらいは出来るだろ」
「雅趣にかけるお話になると思われますが」
「花が種々によって違うように、人の営みもそれぞれ違うものだ、語ってみよ、私が許す。そなたのこれまでを面白いと笑ってみせよう」
では、花がお話します、と美姫は語りだした。
「私は工場AS-20090721、で生産された自立思考型繁殖女性体の欠陥品です」
滔々と語る、やはり感情があるようには見えない。
聞きなれない単語や数字を並べられ王様は花の言葉に耳を傾けていました。
「要約するとあれか、そなたは生みの親に見捨てられてここに来た、それどころか捨てたそなたを厚かましくも利用して私にめとられた、と」
言葉に、まず美姫はきょとんとした。虚をつかれたのであろう、そう言う顔をしたので、王様はなにか間違ったことを言ったのか、と返した。
「いえ、わかりません」
「そなたの言葉を、私が私の頭で訳したのだ。少なくとも私はそう思ったのだ」
怒れ、王様は言いました。
「怒れません、私は貴方たちが雲上人という存在に対してその種の環状を持つことを禁止されています」
「お主、自分を自立型だとか何とか言っただろ? 自分で立つだ、自分で立つことを禁じる親がいるものか」
美姫が困っている顔をした。慣れてきたのか、変わらない顔の中に感情を見出すことが、王様にとり苦ではなくなってきた。むしろ、面白いと思えるように。
「私はそなたを困らせたい、困ったそなたの顔は見ものだぞ?」
「ありがとうございます」
謝意を述べ美姫は深々と頭を下げた。
「雲上人も様々よな」
「王は、どうして王なのですか?」
「政治家としてか? 一人の臣下も、民すらいない私を皮肉ってか?」
いささかおどけた調子であるため、美姫は自虐的な事を言い自分を困らせようとしている、と先ほど手に入れた言葉で定義付けた。
「つまらんのぉ、まぁいい、私はな、返してもらいたいだけなのだ」
なにを、美姫の問に王様は答える。
「思考の自由だ」
「思考の、自由」
繰り返し囀る匹の唇を摘む。
「雲上人は偉大だ、今ある恩恵は全て雲上人のもの、その統治は完璧で争いは起こらない、なにもかも雲上人に従えば成功する、間違いはない」
「ならば――」
「そんなものがつまらないと感じてしまったからだ」
つまらない、美姫の王を見る目が変わる。それは恋情に似る、雲上人への批判が彼女の胸を躍らせた。
「人は間違える、間違えることが罪なのではない、正さないことが罪なのだ。現に私の親は完璧な統治をする雲上人の支配下にあって殺人を犯した者によって殺されたのだ」
故、私はそのものに怒りはない、王様は語る。
「私の怒りは殺したことすらなかったことにした雲上人だ、それから私は生きるのが楽になった」
「それは、なぜでしょう、普通そのような体験をしてしまっては苦しいのが一般的なのでは?」
「姫よ、なぜ苦しいか、その先を考えなければならない」
「考えるのは、苦手です」
「なら、応えねば、簡単だ。その状況に貶めた仇敵がわかったのだ、そしてそれは私と同じ境遇を持った相手もいるとわかったからなのだ」
王は吠える。
「だから、私は仇敵の喉笛を掻ききりたいのだ。それが解れば大きな目標が決まる、姫よ、人生目標が決まったヤツのほうが楽なのさ。最も――」
今の世の中で私以外それを知るものはいないだろうがな、王は自嘲したように綴じた。
王は心のなかで思う。本当は雲上人に支配される全ての人間が知っていることだ、と。だが、それは雲上人に行使されるというものだ。王様はそれが嫌だった。自分の親が殺されて尚、雲上人に唯々諾々と従うのが酷く醜悪で汚いように思えたのだった。
そして、姫はつぶやく。
「それすらも、雲上人の掌中だとしたら王様」
貴方はどう思います? 美姫は問いかけた。しかし、顔は下を向いている。
「私は掌中の猿か」
「そうです、雲上人は真に創造的な人類を作り上げるため今の社会を作りました、しかし、最初は良かったのですが、だんだんと雲上人に依存する形となりました、故、貴方は可愛い可愛い小さな小さなお猿さんです」
「合点がいった、そなたは私を見極めに来たのだな」
「――そうです」
ならば、王様は笑う。
「その全能ぶりを演じている道化らに幕を引くものとなろう。
これが人類が人類として自らの文明を切り開く開祖となり人類はじめての英雄王のお話である。
よく、全くつかみどころがない、といった話を雲をつかむような、というがこの王様はまさに人類が雲を掴めると自覚させた偉大な王様であった。
というわけで雲と人類でした。
この話をかきながら自分の中で無表情系がイケるなと思えるようになったあたり自分も結構変態になってきたとレベルアップを喜んでいましたw
ちなみに小ネタでAS20090721には意味があります、ヒントはメカ子、ゲーム、意味のある数字、デス。わかったらすげー。結構ヒントは与えましたがググるだけでは難しいかも。プレイ動画を見てたらわりかし直ぐかな、なんのゲームかは言わないがな(まさに外道)いや、結構ヒント言ってますよw
なんでこの数字なのかな、と考え意味に共感を覚えられたらいいなぁ。あ、もう一個ヒントで美姫ちゃんのあり方もヒントですね。
日本語って楽しい言語ですね、だから変態が生まれやすい土壌だったりするのかなー。ラップとかすごいですよね、呂律が回らないんで難しいんです。なのに歌おうとしますw
では早い再会を祈って失礼します。




