表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/100

33 水と天使

アイデアを思いつくまでに時間はかかったけど、オチが思いついたらあっさり。

 池がある。そこは昔から天使が住むと言われる。落とした物を尋ねそれと同じ種類のいい物と凄くいい物を提示し、落としたものを正直に答えたら両方共もらえるというのだ。よくある民話であるためこの天使に出会った落とし主は正直に答えるというのだ。

 だが、戦争が起こり池を訪れる人がいなくなった。

 そのため池の天使はすっかり見なくなり、伝承も絶えてしまったのだった。

 そして、戦争が終わり、とある少年が池を訪れた。

 理由は道に迷ったから、だ。

 ふぅ、と息をつき電子ブックを持ちながら歩き出したら、石に毛躓いてしまい、転んでしまった。

「あぁ、電子ブックが」

 手にしていた端末が池に落ちたではありませんか。

 途方に暮れ、どうしようと思っていると少年に語りかける声がした。

「貴方が落としたのは金の本、それとも銀の本?」

 まるで違うものだったので、少年は伝承を知らなかったから反射的に「電子ブック」と答えた。

 そして、決まりきったセリフを天使が言おうとして口ごもった。

 問いが降る。

「電子、ブック? え? これって本じゃないの?」

「本だよ、端末を使うだけで色んな本が読めるんだ」

 金の本と銀の本を小脇に抱えて天使は初めて見る機械に目を輝かせていた。

 天使のこの契約魔法とでも言うべき現象は、天使の理解を超えるものを提供することが出来ないのだ。今で言えば昔はなかった電子ブックのせいで天使が提供するものはかろうじて定義が同じである「素晴らしい本」というくくられる金と銀の本を提示するしかなかった。

 それ故天使はこの珍妙なものに興味を示し、本来の契約を超えて少年に強請った。

「お願い、金と銀の本をあげるからこの電子ブックというものを譲ってくれないかしら」

 少年はう~んと困ったような顔をして、それからいいよ、とシブシブではなく喜んで答えた。

 そして少年は金と銀の本を受け取り天使は電子ブックを受け取った。

 それから天使はまた池の中へと戻った。

 少年はつぶやく。

「濡れていないからいっか、この本は高く売れるだろう。それに電子ブックは防水性じゃないからもう故障しているだろうし、電子マネーがないと他の本も読めないから悪さも出来ないだろう」

 少年はこの不可思議な現象に驚きもせず、淡々と現実的だった。

次回は指輪と車輪です。


では早い再会を祈って失礼します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ