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28 馬と鎧

夜勤明けで眠い。書きためです。

 とある戦国時代の若君が初陣を飾ろうとしている。その若君はこれまで歌に絵画におよそ武人らしからぬ研鑽を積んできた。

 故、若君の傅役である爺は苦心した。

 そして初陣当日。

 当時のならいとして初陣はできるだけ小競り合いに出そうというものだった。大事な跡継ぎ、もしくはその候補が激戦によって死んでしまっては元も子もないというわけだ。

「爺、だ、大丈夫かな?」

「若君、馬乗りに自信は?」

 首をフルフルと横に振って若君はたよりなく応える。

 爺はそれを待っていたと言わんばかりに秘策を告げた。

「馬に鎧をつけます、そうすることによって馬が怯む事なく落馬の心配も少なくなります」

「おぉ、爺、それはいいな!」

「兵もつけさせます、若君は兵の言うとおりになされば大事ありません」

 そうか、そう言って若君と馬、そして兵士たちは戦場へと赴いた。

 見る間にいなくなるわけではなかった、そこまでの速さは得られず初陣は終わりを迎えようとしていた。

「ふぅ、馬鎧をつけたら馬は早く走れない。兵士たちも若君を守り通すこともたやすいだろう」

 爺の思惑はそれだけではなかった。

 この時代、初陣で活躍できなかった跡継ぎは侮られる。兵たちに初陣での活躍を言われ聞かれ若君は恥をかくだろう。

 爺が見るに若君は英雄型の人物ではない。皆に頼りそれに報いる形で生きていく方の地味な人物だ。

「故、爺の死後も皆に頼りそれに報いて下さい、若君」

 時節は冬。嵐雪遊ぶ飯の取り合い、名も無き国に仕えた老臣が一人、浄土へ誘われた。

 老臣の睨んだ通り若君は侮られる業を背負って生きていくのだが、良き君主として才を発揮し戦国として珍しく、また恥とされる畳の上での死を遂げた。

 だが、若君は幸せだった。

 最後に目を瞑る時思い出したのは父親よりも情深く指導してくれた爺の差配がわざとだったのか、ということだった。

 浄土にてまた語らいたい、貴方こそ我が生き方の鎧であり指標だった、そう思い若君を超えて君主となった彼は逝った。

次は宗教と罰です。


では早い再会を祈って、失礼します。

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