25 歳の差と幼さ
簡単ミスリード、一応お題はクリアしているはずw
好きな女の子がいるのに別な子に目が行くのはどうしてなのだろう、彼は思う。
彼女から言わせれば男の目移りは甲斐性か単に本能だ、ということらしいが彼が見つけた女の子はそれはどストライクだった。
田舎の県庁所在地、首都に比べれば雑踏は少ないが代わりに街路樹が並び風に揺れている。駅前から少し歩いた所に橋があり、川がある。少女は川原で一人佇んでいた。
物憂げに川を見つめている。少し近くに立つと聞いたことのない歌を口ずさんでいるのが解る。小さな唇が形作る、左目の下にほくろが二つあり、付き合っている彼女と同じ特徴に彼は驚きながら声をかけた。
「いい天気だね」
馴れ馴れしいと思う。そして、諧謔のないことも。
そうですね、と返してくれた少女は川に向ける視線を彼に移し、彼を見上げた。
そうして、彼は少女を改めて見つめる。
似ている、まるで双子のようだ、と彼は付き合っている彼女と今佇んでいる少女の相似を認めた。小さな唇も黒目がちな大きな瞳、肩口まで伸びつややかな黒髪も。
少女は驚きに心奪われた彼に問いを投げた。その問いを彼は尋ね返した。あまりにも不可解なものだったからだ。
そして、少女は重ねて言葉を投げる。
「貴方と私の歳の差は何歳でしょう」
言葉に応じて彼は改めて少女の顔と服装を見た。
よく見れば近くの有名女子校その制服を着ている。リボンタイは二年生のものだと解り、彼は応える。
「零歳、かな? 同年代でしょ」
「そのとおり」
慎ましく笑い、でも、と続ける。
「今は、だよ」
そういって少女は彼に抱きついてきた。彼は驚きながらも匂いを感じた。
フェティシズムはない。匂いに好悪を感じるほど女慣れしているわけではないが、ここでもやはり近似を感じた。
この少女は――彼女に似すぎている。
その上で、違いが解る。
彼女は自分に対して、うぬぼれであるだろうが、恋の焦がれよりも深い感情を持っているだろう。
だが、この少女は恋の焦がれだ、しかもそれは異性に対する、といったものではない。
言葉が続く。
「会いたかったよ、父さん」
その言葉に彼女は続ける。
「私は今から二十二年後から来た、貴方の娘です、父さん」
荒唐無稽な言葉に、彼は応じ、噛み砕けはしなかったものの、ひとつの言葉を投げる。
「なんで来たの?」
会いたくなかった、という誤解にはつながらなかった様子で、そこから少女の素直さが伺える。冗談でからかっているのならばそう疑いの言葉を投げるはずだ、故彼は確信する。
――少女は確かに未来から来た、と。
春風に乗せ少女は話した。
その話では少女の父親は幼少の頃死に別れた、のだという。つまり彼は自分の死を知ったのだ。
「母さんとも相談して、父さんの若い頃に会いに来たのです」
未来ではもう父さんには会えないから、死別が絶対なのは未来でも変わりのないことなのだな、彼は少女の言葉から察した。
「どうして、この歳の時に来たんだ」
「父さんの死を防ごうとか変えようと思ったわけじゃないの」
「薄情な娘だ」
「未来ではそう言う法律になっているの、母さんの願いでもあったの」
「どんなだ?」
「えっと、ね。母さん、お父さんの浮気症に悩んでたみたいだから、それをちょっとでも変えて欲しかった、ってこと」
そっか、彼は微妙な苦笑いを浮かべる。
そして、少女は離れる。
「それじゃ、そろそろ行くね」
「帰るのか?」
「うん」
少女は彼に背を向ける。
「あの、さ」
彼の言葉に何、と惜別に臨んで笑顔を向ける少女。
促され彼は問いかける。知らない人を知るために、人がまずする質問を。
「君の、君の名前は?」
少女はそれも言えないの、と応える。彼はうつむき、少女の言葉を聞く。
「もっといい名前つけてね、父さん」
そう言うと少女は消えた。
春の残響に、桜がたなびく。梢枝鳴らして打ち震え、花が散りゆく。
まず、子供に浮気性を心配されるような大人にはならないよう気をつけよう、彼はそう思い、砂利から平たい石を拾い水切りをした。
川を超えいい音がして石は落ちた。
死生観達観しすぎな主人公ですねぇw まぁ、それも若さということで、一つ。
次のお題は羊飼いと擬人化ですね。
では早い再会を祈って、失礼します。




