20 迷路と米
いつか長編として書きたいテーマでもあるなぁ。
伝説の迷宮、そう人々に呼ばれるダンジョンが極東の僻地にあった。ダンジョンとは古代文明が残した迷宮であるのだという。ダンジョンには危険な動物が住み、魔獣と呼ばれ忌み嫌われていた。
大航海時代に入り伝説の迷宮がその存在が迷宮に挑む家業、冒険者たちに知られるようになったのはつい最近だ。
そして現地住民からダンジョンを浄化してほしいという嘆願書が送られて、冒険者ギルドが本腰を入れて腕利きの冒険者達を送り込んだ。
そして――
「迷っちまったなぁ」
冒険者達のリーダー、ショートソードを腰に差した戦士が地図係にどうにかならないか、と水を向ける。
地図係も羅針盤を見ながら困り切った顔をしていた。
「グルグル、私達みたいにグールグル。全く笑えてきますね」
「実際笑い話にしかならないよなぁ」
「そんなことないデス」
そう切り出してきたのは極東出身の冒険者だった。腕利きという謳い文句で連れてきて、実際ダンジョンではまだ役に立っていないが、極東出身ということもあって現地住民との交渉に関しては光るものがあり、片言ではあるが一行には欠かせない存在だった。
「今日は、帰るデス」
「カエルって、蛙か?」
「違いマス、地上出るデス!」
「それも出来ないから困ってるんだが」
大丈夫デス、と笑顔で極東出身の冒険者、食事係が胸を張り煌々と光まだろうそくの長い燭台で地面を照らした。
「米?」
極東の主食とされる米粒が地面に落ちていたのだ。しかも、ずっと連なっている。
「五色米デス、コレ頼りに帰るデス!」
「おぉ、やるじゃないか」
よし、帰るぞ、となり一行は引き返すことにした。
ところが――
「五色米が、ない?」
「魔獣にでも食われたか? でも――」
魔獣は一匹たりとも出てこなかった。だから、戦士のショートソードも腰に差したままだったのだ。
そして気がつく。
「あれ?」
「どうした?」
「いや、ここの壁、たしか俺が傷をつけたんだが」
傷が消えている? 罠師がそうつぶやくと、リーダーが言葉を投げた。
「もしかしてこのダンジョン、生態型か?」
生態型、それは数あるダンジョンの中でもひときわ珍しく危険である。
生きたダンジョン、一言で言えばそんなものだ。
そして、このダンジョンは巨大な魔獣でもあるのだ。
「ノヅチ」
食事係が呟いた。
「このダンジョン、ノヅチです」
――魔王野槌。
生態型でも伝説に残る魔獣の一つだ。極東神話にその文献は見られ、その大きさは霊峰富士に迫るというのだ。
「なら、これだけの部隊じゃ足りないな、大隊を編成しなければならないぞ」
「は、早く帰るデス。米食べた事は消化始まる事」
「その前に、だ」
リーダーがショートソードを抜き、食事係の喉元に突き当てた。
「何故、極東はこのダンジョンを浄化しろと言ってきた?」
「そ、それは私達ダケ出来ないから」
「それはそうだ、俺達にだって出来ない。ダンジョンを踏破し核を破壊して魔獣発生を抑える浄化はな」
何を隠している、そう言うと食事係は笑い出した。
「アハハハハハ、隠し通せると思ってたけど、結構、頭いいね」
「――狂信者か」
そのとおり、流暢な大陸語で食事係は答えた。
狂信者とはダンジョンの核に汚染され思考がダンジョンのために動く人間のことである。
「俺らを野槌に食わそうとしたんだな?」
「そぉだよ? そして、今からそうなる」
そう切り出すと食事係だった教信者はすぐに姿を消した。
「――ち、魔法か」
残響だけが残るなか、絶望だけが残った。
――食事が始まる。
経過報告
――極東に発生した魔王級ダンジョン「野槌」の覚醒は未然に防がれました。狂信者も発生している大規模迷宮被害ですが、冒険者たちの勇者化によって野槌の核を休眠状態にまで抑えることに成功。以後、連隊規模を構築し野槌の排除を計画されたし。
そして、ダンジョンから生還した冒険者達は一息ついた。
「リーダーの無茶ぶりには参ったよ、簡易役割変更によって全員勇者化するとか、ヘタしたら過負荷でダウンするかもしれなかったですよ」
「しかも、引き返している状態でまた戻るとか、自殺行為っしょ」
「それでも、何とかなっただろう?」
そう言ってリーダーの戦士、現在は勇者になっている状態だが、気絶させた食事係を見ながら、罠師の声がかかった。
「こいつどうします?」
狂信者は基本的に冒険者達にとって殺害対象だ。だが、とリーダーは口にする。
「なりかけだ、だから戻ろうと提案した」
「そのフリかもしれない」
「そうかもな」
だが、と口にする。
「勇者は希望の担い手だ、希望があるやつを潰しちゃ名乗れないだろう?」
そういって彼等は食事係を担いだ。
冒険者の旅は続くのだ。
思ったより長くなってしまいました(^_^;)
設定のオンパレードで申し訳ありません、書いてたらズルズルと出てきてしまい、何とかまとめることは出来た、と思いたい。
では早い再会を祈って失礼します。




