13 霧と舞踏
ある国の殿様が隣国でとても強い国に決戦を強いられました。
殿様は策を練りましたが、どうしても勝つためにはもう一つ強みが欲しかったのです。
そこで殿様は謀臣に愚痴りました。
「近々決戦が起こる。それで勝つには、天運が必要じゃ」
「天運にございますか?」
「左様、具体的に言えば霧じゃ。霧さえあれば勝てなくも、負けない戦が出来る」
しかし、それは叶わないだろう、と続け謀臣はニヤリと笑って応えた。
「霧、もしかすると起こせるかもしれませぬ」
「まことか」
謀臣が語っていわく、霧を起こす踊り子が領内の山村にいるのだという。
「すぐに連れて参れ」
謀臣に指示し殿様は戦の準備をした。
ついに隣国から兵が出たという方が流れた。隣国の君主自ら出陣したという。今度の戦は隣国の鎧袖一触で終わるのではないか、という噂が領内に流れ逃散する領民たちを抑えながら殿様は踊り子を待った。
そして、謀臣は踊り子を連れてきた。あまり見目の良い娘ではなかったが殿様にとりその娘が希望の星に見えた。
だが、踊り子は申し訳無さそうにしていた、その態度から殿様は不審に思い訳を聞いた。
「すいません、たしかに私は霧を起こせるのですが、私の周りだけなのです」
殿様は落胆したが、それは殿様と踊り子だけだった。
謀臣は諦めていなかった。
「おい、聞いたか攻め入る小国、妖術使いを雇ったんだと」
「なんでも、霧を起こす妖術使いだそうだ」
「でも、大した力じゃなくて自分の周りにしか霧を起こせないんだとさ」
「しかも、小国の殿様はそのことを知らないらしい。大事に妖術使いを本陣に置こうって腹らしいぜ」
斥候からその話が兵たちに広まり隣国の殿様は気を良くした。だが、まだ安心できない。連絡将校に指示し小国の本陣を探らせた。
連絡将校は闇夜に忍んで敵の本陣を探した。篝火を焚いて夜を徹しようとする様子だった。更に妖術使いと思しい格好をしている女を見つけた。
喜び勇んで帰ろうとして連絡将校は失敗をした。物音を立てたことによって本陣の人間に気付かせてしまったのだ。
逃げ、更に情勢が変わることを予想し、予め支持していた通り部下を一人隠れさせて残し夜明けの決戦に備えた。
逃れた連絡将校はなんとか帰ってきた部下に話を聞き、本陣は変わらなかったという方を聞き隣国の殿様に報告した。
「すわ、決戦ぞ!」
そう言って主力を小国の本陣に向かわせた。辺りに靄が立ち込めていたが、一層霧の濃い場所に小国の殿様がいる。そう判断し突き進んだ。
だが、それが罠だった。
本陣と思しきところには踊り子が一人踊っているだけだった。
そのことに気が付き主力部隊を率いていた将軍はすぐさま反転し本陣に戻ろうとしたが、急行した大軍を反転するには相当な統率力を必要とされる。しかも、山に囲まれた狭隘な地だ、その難度は古の大英雄だとしても易いとはいえないだろう。
小国の策は図にあたり、敵本陣は壊滅し潰走、退路を断たれた主力部隊も瓦解し、結果として小国は大きく戦果をあげたのだった。
次はブラックホールとすれ違いをお題に掌編を書いてみたいと思います。では、また次回お会いしましょう。




