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武力チートの転生者(1)

死神といったらローブ姿に首切り鎌だよね

黒い穴を通り抜けた私はレンガ造りの街中に立っていた。

今私は黒いローブに巨大な鎌を持ちとても目立つ格好をしているが道行く人々は私に目もくれない。

人間には私を認識することが出来ないのだ。

これで余計な騒ぎを起こさなくて済む。


「さてと、この世界の転生者君はどんな人かね」


私が左手を虚空にかざすと少し大きめの真っ黒な手帳が黒い光の中からあらわれる。

この黒い手帳はいわば死の予定表だ。

手帳を開けば私が今いる世界の住民の死亡予定が書き込まれている。


あるものは病で死に。

あるものは事故で死に。

あるものは同族に殺され。

あるものは魔物に喰われる。


それぞれがそれぞれの生の終わりを記していた。

そして数え切れない程の名前の羅列の中からでも容易に見つけることの出来る三つの赤く発光する名前。

手帳に名を赤く記される者は本来の寿命に逆らった者たちだ。

すなわちこの三人の中にこの世界に転生した転生者がいる。

名を赤く記されている者はミラ・ケープ、アナスタシア・エステス、塔矢・井原の三名。

誰が転生者なのかは明白だった。


私は手帳に記された塔矢・井原の名を掴み取る。

すると塔矢・井原の名は手帳のページを離れゆっくりと人混みをすり抜けながら進んでいった。


「あっちか・・・」


私はそれに続く。

その先に見えたのは巨大な城だった。




・・・


まずは自己紹介だ。

俺の名前は井原塔矢。

何を隠そう転生者だ。

俺は前世でトラックにひかれそうになった子供を助けようと道路に飛び出し子供の身代わりとなって死んでしまった。


俺は目覚めると白い空間に寝そべっていたんだ。

そしたら今度はヒゲもじゃの爺さんが現れて俺の死は神のミスなんだと言う。

死んでしまったものはしょうがないと自分の死を受け入れようとした俺だったが神様は俺を不憫に思い異世界に転生させてくれると言ってきた。

しかも特典付きで。

そんなネット小説の様な展開が本当にあるのかと思ったよ。

勿論俺はその申し出を承諾し特典には体力無限、気配察知能力、超人的反射神経、そして始めて触った武器でも達人以上に扱えるという武力チートの能力をもらった。


こうして異世界で第二の人生を始めた俺は冒険者ギルドで名を上げその途中で盗賊に殺されそうになっていた二人の美少女を助けたりもした。

しかもそのうちの一人のアナスタシアという少女は内緒で城を抜け出してきた自国のお姫様だったのさ。

俺は命の恩人として城に向かえ入れられ王国軍の騎士団に入団することになる。

冒険者ギルド上がりの俺を見下す奴もいたがみんな俺の武力チートの前にはても足も出なかった。

そして半月前に行われた騎士団内の闘技大会。

当然俺は優勝しその圧倒的な強さから一気に新兵から部隊長にまでなった。

まだまだ下っ端だか近々起こるだろうとされている隣国との戦争で一気に名を上げてみせる。

上手くいけば貴族の称号が貰えアナスタシアと結婚して逆玉の輿なんてことも夢じゃない。


「おーい!トウヤー!そろそろ訓練時間だぞ・・・って何一人でニヤニヤしてるんだ気持ち悪い」

「ほっとけ!」


今までの事とこれからの事を頭の中で考えていたら同僚のスコットが俺を呼びに来る。

ちなみに同僚ではあるが俺は部隊長。

立場で言えば俺の方が確実に上だが毎日ずっと敬語なのは聞く方も(精神的な)疲労が溜まるので俺の部隊の奴らには訓練時間以外はタメ口をきかせている。


「トウヤ!今日も通常訓練が終わったら剣の稽古に付き合ってくれよ?」

「毎日確認しなくてもいいっての!分かってるよ」


そんな会話を交わしながら俺達二人は訓練場に向かった。



・・・



しかし無駄に広い城だ。

勿論神の宮殿には到底及ばないが。


「しかし、この数の部屋のいくつが使われないまま汚れていくのやら・・・」


私は視界の隅を流れる幾つもの扉を眺めがら呟いた。

どうも普段から一人仕事ばかりしていると自然と独り言が多くなる。


・・・とその時だっだ。

やっと廊下の突き当たりに差し掛かる時に一人の女と目が合った。

死神である私とだ。

私の姿は普通の人間には見えない。

私の姿を見ることが出来るのは寿命を使い切り既にこの世のもので無くなった者か何らかのイレギュラーにより寿命を延ばされた者だけ。

私は目の前で放心した様に固まっている女の顔と手帳の顔写真を照らし合わせる。


「なるほど、君がミラ・ケープか・・・」


そう私が呟くと女はそれが合図だったかの様に振り向きざまに走り出した。

恐らく彼女には私の顔が見えたのだろう。

私はフードを払う様に取り去る。


その顔には皮膚はない、肉もない、目がない、耳がない。

人が持つべき肉体が私にはなかった。


取り去ったフードの中から出てきたものは一つの髑髏。


「逃げるなら必死に逃げてくださいね。私には追いかけっこは大好きなので」


これだからこの仕事はやめられない。

死神といったら髑髏頭だよね

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