ガリアス帝国
「カイル、報告を修正しろ。人口は約25万人だ。一人ひとりに『役割』を与え、その人生に責任を持つのが俺たちの流儀だ。数を誤魔化して、個人の存在を埋もれさせるような真似はするな」
俺の叱咤に、カイルは表情を引き締め、手元の魔導端末の数値を正確に固定した。
【国家『閃光の礎』人口・勢力 正式集計】
基本人口(旧王国+難民+保護村): 213,000名
ヴォルガ帝国からの亡命・救済者: 28,640名
内訳:先行亡命18,500名 + 転移魔法による救済10,140名。
エルフ自治領・他小国からの合流: 約5,000名
内訳:若手技術者および、その家族。
【現在の総人口】: 約246,640名
「……了解だ、マサル。約25万人。各1万人、計10万人の専門部隊が、国民2.5人につき1人の割合でサポートに付いている計算だ。これなら、一人ひとりの健康状態から適性、生活の悩みまで、俺たちの鑑定と演算で完璧にフォローできる」
カイルが弾き出したのは、単なる「支配」ではなく、究極の「個別最適化社会」の数字だ。
「よし。ハンス、25万人分の食料流通を再点検しろ。トト、農地の拡大は25万人が飽食してなお、他国を数カ国救えるほどの余剰を持たせろ。エレン、居住区は25万人がそれぞれ『自分の城』だと思えるほど快適に、かつ清潔に保て」
俺の指示が飛び、10万人の精鋭たちが、大陸中に網羅された転移ゲートを介して即座に持ち場へと飛ぶ。
「……マサルさん、メルキアと王都跡地の件だけど」 ハンスが、地図上の二つの重要拠点を確認してきた。
「王都跡地は俺たちの『中央管制区』として、この25万人の頭脳にする。一方、地方都市だったメルキアは、宗教の垢をすべて落とした。あそこは今後、ソフィアとリナの医療部隊が管理する『広域衛生研究所』として、この国の健康を守る要にするぞ」
「了解だ。王都(中央)とメルキア(地方)……これで、この国の背骨が一本通ったな」
【現状報告】
総人口: 246,640名
専門部隊: 100,000名(フル稼働)
状況: 中央都市(王都跡)と地方拠点(メルキア、リヴァーレ、ギルバ)が転移ゲートで直結。移動コストゼロの超高速社会が完成。
「……さて。国内の25万人が、誰もが羨むような『紳士的な日常』を送り始めた。カイル、次は放置している連中……空っぽの帝都にいる皇帝や、枯れゆく森で祈るエルフの長老たちだ。彼らに、自分たちが守っているものがどれほど『空虚』か、俺たちの幸福な笑い声で教えてやれ」
「カイル、報告を詰めろ。商業公国の富裕層が逃げ出した『外国』とやらはどこだ? この大陸に俺たちの目が届かない場所など残っているのか? それと、残された民衆の動向もだ。彼らはまだ、沈みゆく泥舟に執着しているのか?」
カイルが大陸全図を広げ、未踏域と現状の心理分析データを提示した。
【1. 富裕層の逃亡先:『海の向こう』と『未開の地』】
カイルが指し示したのは、大陸の北端と西の果て、そして広大な海域だ。
西方:軍事帝国『ガリアス』:
大陸西端の海を越えた先にある、蒸気機関と鉄鋼の国だ。商業公国の富裕層は、自分たちの金銀財宝が「価値」として認められる、まだ俺たちの『役割理論』が浸透していない旧態依然とした強国へ、私有船で逃げ込んだ。
北方:氷獄の未開域:
追っ手を逃れた一部の貴族たちは、魔導文明の及ばない極北の集落へ。だが、そこは「金」よりも「一欠片の干し肉」が優先される世界。彼らがそこでかつての栄華を取り戻すことは、物理的に不可能だ。
「……なるほど。逃げた先も、いずれは俺たちの『管理』が行き届く場所だな。今は放置していい」
【2. 残された民衆の意志:『沈黙』から『渇望』へ】
カイルが次に提示したのは、ルカの情報部隊(10,000名)が収集した、商業公国と宗教国に残された民衆の**「意思鑑定データ」**だ。
亡命への同意率: 約98%
現状の心理:
意思の有無: もはや「意思」という高尚な段階ではない。彼らにあるのは、生への執着だ。商業公国の民衆は、富裕層が自分たちを見捨てて財宝を持ち逃げした事実に絶望し、激しい怒りを抱いている。
唯一の懸念: 「自分たちのような『持たざる者』が、あの光り輝く国に入れてもらえるのか?」という恐怖。俺たちの国が「完璧」すぎて、自分たちが「不純物」として排除されるのではないかと怯えている。
「……カイル、答えは出ているな。彼らは亡命を拒んでいるんじゃない。**『自分たちは選ばれない』**と思い込んでいるだけだ」
俺は、25万人の国民を支える一万人の教育隊に次の指令を出した。
「ハンス、エレン。商業公国の廃墟と、宗教国の焼け跡に直接『転移ゲート』を一時開放しろ。門を建てる必要はない。ただ、そこへ行けば『役割』が与えられ、温かいスープが飲めるということを、俺の声を拡声魔導具で大陸中に響かせて伝えろ」
【マサルの大陸全土放送】 「商業公国の民、そして宗教国の彷徨える羊たちよ。貴様らの主は逃げ、神は沈黙した。だが、俺はここにいる。金も信心もいらん。ただ『生きたい』という意志と、『役割』を全うする覚悟がある者だけ、そのゲートを潜れ。俺の鑑定は、貴様らの過去ではなく、未来を見る」
「……さて、カイル。これで門前に何人並ぶ?」
「マサル、予測では数日のうちにさらに5万人以上がゲートへ殺到するだろう。25万人の管理体制を30万人規模へ引き上げる準備はできているぜ」
「いいな。エレン、居住区の増設だ。一人の例外もなく、泥を落として清潔な服を与えてやれ。富裕層が持ち逃げした金貨よりも、一人の『やる気のある労働力』の方が、この国には価値がある」
「カイル、自分で生きる意志がない奴、神や何かにすがりついて口を開けて待っているだけの依存体質は、この国にはいらん。」
俺の言葉に、カイルが静かに頷き、教育隊に展開していたゲートの出力を絞った。
【イストリア生存者:最終選別】
選別基準:『生存本能と自立意志の有無』
対象者: イストリアの残存者 約3,500名。
手法: ゲートから食料を投げ与えるのではなく、ゲートの先に「自力で歩いてくる」ための最低限の距離と、そこで課される「適性試験」を提示。
結果:
『自立志向者』:約800名 「神に祈っても腹は膨れない」と悟り、ボロボロの体で自らゲートまで這い、泥を拭って「働かせてくれ」と訴えた者たち。
『依存継続者・狂信者』:約2,700名 ゲートの先に救いが見えてもなお、「神が迎えに来るまで動かない」「マサルが跪いて迎えに来い」と祭壇に張り付いている者たち。
「……カイル。自力で歩いてきた800人だけを受け入れろ。残りの2,700人は放置だ。他人の力で生かされるのが当たり前だと思っている連中に、俺たちの血と汗の結晶である食糧を分ける道理はない」
カイルが冷徹に魔導板を操作し、イストリアへ繋がるゲートを物理的に封鎖した。
「了解だ、マサル。歩いてきた800人は、その『生きようとする意志』を評価して、ソフィアの医療班で即座に回復させる。残りの2,700人は、自分たちの信じる神と心中する道を選んだ……ということで処理完了だ。無駄なリソースを割く必要がなくなって、効率的だな」
【国家『閃光の礎』人口・勢力 修正集計】
基本人口+ヴォルガ+エルフ: 約246,640名
商業公国からの亡命(自力到達者): +約45,000名(※意志の強い層)
イストリアからの亡命(自力到達者): +800名
【現在の総人口】: 約292,440名
「よし。約29万3千人か。甘ったれた奴を削ぎ落とした分、国民の平均的な『意志の強さ』はさらに上がったな」
俺は、ゲートを潜り抜けてきた800人が、まだ震える足で立ち上がり、配られたスコップや魔導端末を「これがあれば生きられるのか」と必死に握りしめる姿を鑑定した。
「ハンス、エレン。この29万人には、手取り足取り教える必要はない。『役割』と『道具』だけ渡しておけば、勝手に自分たちで豊かになろうとするはずだ。俺たちはその効率を最大化するシステムだけを維持しろ」
「分かってるぜ、マサルさん。甘えを許さないこの空気、俺たちの国らしくて最高だ」
「カイル。これで大陸内の『選別』は終わった。生き残る価値のある29万人だけがここにいる。……さて、海の向こうで金貨を抱えて震えている富裕層やガリアス帝国が、この『精鋭化した29万人』の力を知った時、どんな顔をするか楽しみだな」
「カイル。不純物はすべて削ぎ落とした。約29万3千人の『自ら歩く意志』を持つ国民と、10万人の部隊。これこそが、俺が望んだ理想的な国家の形だ」
俺の宣言とともに、大陸全土に張り巡らされた魔導ネットワークが、一段階上のフェーズへと移行した。もはやこの国に「命令を待つだけの無能」は存在しない。
【国家『閃光の礎』:超効率・独立自尊フェーズ】
『役割』の完全定着(教育隊10,000名)
イストリアから這い出してきた800名も、商業公国の4万5千名も、合流して数日で「自分の足で立つ」喜びを知った。
彼らは他人の施しを待つのではなく、自らの鑑定された適性に基づき、農業、工業、物流、演算の各セクターで、まるで精密機械の歯車のように自発的に動き始めている。
大陸全土の『要塞都市化』(建設部隊・特務部隊)
エレンとジークの部隊が、大陸を横断する「超高速魔導回路」を敷設。29万人が住む全居住区が、転移ゲートと魔導防壁で結ばれた。
外部からの干渉は物理的に不可能。内側の自律性は極大。
『神聖王国イストリア』の最終報告
ゲートを閉ざして数日。依存心に染まった2,700名が残る聖都は、完全に沈黙した。
助けを乞う声すら届かない。なぜなら、彼らは「助けられるのが当然」だと思い込み、最後まで自らの手でゲートを叩こうとしなかったからだ。
「……カイル。イストリアの座標を地図から抹消しろ。あそこはもう、ただの石ころの集まりだ。俺たちのリソースを1ビットたりとも割く価値はない」
「了解だ。座標データをアーカイブへ移動、ライブ観測も終了した。……マサル、これでこの大陸に残っているのは、俺たちの29万3千人と、森の端で震えているエルフ、そして空っぽの城にいるヴォルガの皇帝だけになったぜ」
カイルが冷徹に報告する中、エレンが防壁の上で海を指差した。
「マサル! 西の水平線に、ガリアス帝国のものと思われる『黒煙を吐く鉄の船』が見えるわ。商業公国から逃げた富裕層が、あそこの皇帝を焚きつけたみたいね。『大陸に莫大な富と魔法技術が眠っている』って」
俺は、アイテムボックスから特別製の遠隔鑑定レンズを取り出し、その鋼鉄の艦隊を眺めた。
「……金貨に釣られてやってきたか。カイル、教育隊に告げろ。俺たちの平和な日常を邪魔する『不条理な暴力』が近づいている。だが、迎え撃つ必要はない」
「え? 放置するのか?」
「いや。『圧倒的な文明の差』を分からせてやる。 ハンス、物流部隊の転移ゲートを使って、あいつらの船の真上に『一万トン分の浄化された水』と『一万枚の宣戦布告書』を同時に転移させろ。武器を向ける前に、自分たちの無力さを水浸しになりながら理解させてやれ」
【現状報告】
総人口: 292,440名(自立した精鋭国民)
敵対勢力: ガリアス帝国(蒸気機関艦隊)が接近中。
戦略: 物理攻撃ではなく、概念と技術の差による「精神的無力化」。
「カイル、ハンス。準備はいいな。ガリアス帝国の艦隊がこちらの領海を侵犯した瞬間に執行しろ。一滴の血も流さず、あいつらの『誇り』だけを溺れさせてやる」
俺の合図とともに、ハンスの物流部隊(10,000名)が、カイルの教育隊(10,000名)の精密な座標計算に基づき、転移ゲートをガリアス艦隊の直上に展開した。
【ガリアス帝国艦隊:無力化報告】
執行内容:
敵戦艦12隻の直上に、各500トンの『浄化』済みの真水を瞬時に転移。
同時に、船の全動力を司る「ボイラー室」の周囲の酸素を、ピンポイントで一時的に『アイテムボックス』へ収納。
結果:
物理的損害: ゼロ。ただし、全戦艦の甲板が突然の「淡水の滝」に飲み込まれ、兵士たちは溺れかけながら甲板を転げ回った。
機能停止: 火を失った蒸気機関が完全に沈黙。鋼鉄の巨艦はただの「浮いた鉄屑」と化して波間に漂うのみ。
精神的衝撃: 大砲を撃つどころか、何が起きたのかすら理解できないまま、目の前の海面が一瞬で「真水」に変わった光景に、ガリアスの将兵は恐怖で凍りついた。
「……カイル、レンズで見ろ。あいつら、水浸しの甲板で跪いて祈り始めたぞ」
カイルが冷淡な視線でレンズを覗き込む。 「無理もないな。石炭を燃やして水を沸かしているような文明にとって、座標を定義して物質を入れ替える俺たちの魔法は、神の業にしか見えないだろうぜ」
俺は拡声魔導具を起動し、海上に浮かぶ鉄屑たちへ告げた。
「ガリアスの兵士たちよ。貴様らの船に乗っている『富裕層』が、金貨を持って逃げ延びようとしたこの大陸は、もはや貴様らの知る世界ではない。この大陸の主は、祈りも金も、そして暴力も受け付けない。受け付けるのは『自立の意志』だけだ。」
【新局面:帝国の降伏と富裕層の末路】
富裕層の摘発:
船の浸水に慌てふためき、金貨の袋を抱えて逃げ惑っていた商業公国の元富裕層たちは、自分たちが連れてきたガリアス兵によって真っ先に拘束された。「お前たちの嘘のせいで化け物の国に来てしまった」というわけだ。
ガリアスの使者:
艦隊司令官が小舟を出し、白旗を掲げて我が国の港へ近づいてきた。彼らが求めているのは「命乞い」ではない。**「どうすればその圧倒的な力を得られるのか」**という、畏怖に基づいた問いだ。
「……さて。29万3千人の国民はどうしている?」
「マサルさん、みんな防壁の上でピクニック気分で眺めてるぜ。あんな黒煙を吐く鉄の塊が、一瞬で池になったのを見て、大笑いしながら『自分たちの役割』に戻っていったよ」
ハンスが笑いながら報告する。国民にとって、もはや他国の脅威は「エンターテインメント」に過ぎない。
「よし。カイル、ガリアスの使者にはこう伝えろ。**『船を捨て、泳いで来い。意志を見せた者だけを鑑定してやる』**とな。金貨を持って小舟で来るような奴は、その場でゲートを開いて海の底へ送ってやれ」
【現状報告】
総人口: 292,440名(変動なし。これから選別が始まる)
外交: ガリアス帝国艦隊を事実上の無力化・拿捕。
技術: 転移魔法による物質置換を実戦投入。
「カイル、報告をまとめろ。海へ飛び込み、自力でこちら側の岸壁まで辿り着いた『意志のある奴ら』は何人だ?」
俺の問いに、マルコの治安維持部隊(10,000名)とソフィアの医療部隊(10,000名)が、引き上げられた者たちの最新データを同期させた。
【ガリアス艦隊・生存選別報告】
海へ飛び込んだ者: 約3,000名
自力で岸に辿り着いた者: 1,240名
リタイア・救助拒否: 残りは途中で力尽き、あるいは船に残った富裕層と運命を共にした。
内訳:
ガリアスの下級兵士: 1,180名(「こんな鉄の箱の中で死ぬより、あの光の国で生きたい」と判断した若者が中心)
富裕層に仕えていた召使・船員: 60名(主を見捨て、自分の人生を掴みに来た者)
【現在の総人口】: 293,680名
「……1,240名か。ガリアス艦隊一万人のうち、自分の命を自分の力で運ぼうとしたのは一割強。まあ、そんなもんだろうな」
カイルが、びしょ濡れで震えながらも、差し出された温かいタオルを「ありがとうございます」と受け取った兵士たちの映像を見せる。
「ああ。マサル、こいつらはいい目をしてるぜ。今まで『命令』と『蒸気』に支配されていた反動か、俺たちの国の清潔さと、誰にも媚びずに動く10万人の部隊を見て、魂が抜けたような顔をしてる」
「よし。ソフィア、彼らに『クリーン』をかけ、最低限の食事を与えろ。その後、一時間の休息を経てから俺が一人ずつ鑑定する。ガリアスの技術……蒸気機関の知識を持っている奴がいれば、ジークの魔導具開発班へ。体力自慢はトトの農地か建設部隊の見習いだ」
【富裕層と艦隊の「その後」】
「……で、残った船の方は?」
「ハンスの物流部隊が、船内に残っていた『金貨の袋』だけをピンポイントで海へ投棄したぜ。富裕層たちは、海に沈んでいく金貨を見て発狂してたが……放置だ。動力のない鉄の塊で、勝手に漂流してガリアス本国へ帰ればいい」
俺は、29万3千人から29万4千人規模へと膨らみつつある国の活気を感じた。新しく加わった1,240名は、この国の「自立の掟」をその身で体験した、最も忠実な新国民になるだろう。
「カイル、次のフェーズだ。ガリアス帝国本国は、この艦隊の惨状を知れば、恐れをなすか、あるいはさらなる大軍を送ってくるか。どちらにせよ、俺たちの『完璧な庭』を汚させるつもりはない」
「分かっている。教育隊一万人の演算で、大陸全土の沿岸部に『不可視の座標境界線』を定義した。許可なき船は、二度とこの大陸の土を踏むことはできない」
【現状報告】
総人口: 293,680名
専門部隊: 100,000名(新規入国者の教育・配属を同時進行)
状況: 西の海に浮かぶガリアスの残骸は放置。国内はガリアスの技術体系を取り入れた「魔導×蒸気」のハイブリッド進化を開始。
「カイル、ガリアスの1,240名の配属はどうなった?」
俺は管制塔の窓から、新しく建設された『魔導蒸気研究区』を見下ろした。そこでは、自力で泳ぎ着いたガリアスの元技術兵たちが、ジークの魔導具開発部隊と熱心に議論を交わしている。
【新国民:ガリアス技術兵の配属報告】
配属先区分:
魔導蒸気開発班(ジーク部隊直轄): 420名
彼らが持ち込んだ蒸気機関の「圧力制御」の知見と、俺たちの「魔導演算」が融合。燃料効率が従来の1,000倍を超える『高密度魔導ボイラー』のプロトタイプが完成した。
重機建設見習い(エレン部隊): 820名
鋼鉄の加工技術に長けた彼らは、魔導ゴーレムの外装強化に貢献。建設スピードがさらに向上。
現状:
29万4千人の国民全員に「蒸気魔導式の自動調理器」や「定時転移便」の試作機が配布され、生活水準がさらに一段階跳ね上がった。
「……マサル、あいつら面白いぜ」 カイルが、一人の元ガリアス兵が魔導端末を握りしめて涙を流している映像を提示した。
「『自分たちの国では、蒸気の煤で空が見えなかった。ここでは、呼吸をするだけで体が清められる。この国を汚す奴がいれば、俺たちが真っ先に蒸気で焼き払ってやる』……だとさ。依存を捨てて自力で来た奴らは、一度『役割』を与えられると凄まじい忠誠心を発揮するな」
「いい傾向だ。ハンス、その『魔導蒸気』を使った新しい物流ネットワークを構築しろ。転移ゲートを維持する魔力コストを、この新しい動力で肩代わりさせる。そうすれば、教育隊の演算リソースをさらに別のことに回せるはずだ」
「了解だ。……で、マサルさん。西の海に残ったガリアスの本隊と、あの富裕層どもだが」
【海の上の『地獄』と、新たな噂】
ガリアス残存艦隊:
動力を失った鉄屑の船内で、食料を巡る内紛が勃発。
商業公国の富裕層たちは、金貨の袋を枕にして飢えに震えているが、泳ぎ着いた仲間たちが「光の国」で清潔な服を着て温かいパンを食っている様子を遠目に見せつけられ、精神的に崩壊しつつある。
「放置だ。あいつらが海流に流されてガリアス本国に辿り着いた時、あちらの皇帝は『魔法の真理』と『自分たちの無力さ』を知ることになる」
俺は地図に新しい印を書き込んだ。 「カイル、エルフの森の状況はどうだ? 結界が消えて数日。そろそろ、プライドだけで腹を膨らませる限界だろう」
「……ああ。長老の三割が、若者たちの亡命を止められず、ついに沈黙した。残った二万人余りのエルフも、自力で森を出て、こちら側の検問所へ向かって歩き始めている」
【国家『閃光の礎』・最新集計】
総人口: 293,680名(+自力移動中のエルフ数万人)
技術レベル: 【魔導】×【蒸気】のハイブリッド進化。
状況: 大陸全土が「無煙・高出力」のクリーンな工業化を達成。
「よし。エルフたちが辿り着いたら、まず『クリーン』と『教育』だ。森を管理するだけの存在から、この星の植生を科学する『役割』へ。……自力で来た奴だけは、俺が鑑定してやる」
「カイル。エルフたちが森を捨てて動き出したな。彼らが『長老の言葉』ではなく『自分の空腹と未来』を信じて歩き出したのは評価してやる。だが、基準は変えんぞ」
俺の言葉に、カイルは冷徹な数値データを更新した。29万3,680人の国民に、新たな「自律した層」が加わろうとしている。
【エルフ自治領からの自力到達報告】
歩いてきた者: 22,150名
内訳: 若手魔導師、薬草師、そして森の維持が不可能だと悟った一般住居層。
脱落者: 門まで辿り着けず引き返した、あるいは「森と心中する」と動かなかった長老たち約6,000名は、そのまま放置。
受け入れ処置:
物理的浄化: リナの衛生部隊による『クリーン』。数百年分の「森の垢」を落とし、清潔な衣服を支給。
知力の上書き: エルフたちが数千年かけて積み上げた「経験則」を、カイルの教育隊が「魔導演算理論」として数時間で再構築し、脳内へフィードバック。
「……カイル。エルフたちの様子はどうだ?」
「マサル、驚愕してるぜ。彼らが秘奥義としていた大魔法を、ジークの部隊が開発した『魔導蒸気ボイラー』の余熱だけで再現してみせたからな。今や彼らは『自分たちは何を守っていたんだ』と、プライドを粉々に粉砕されながらも、新しい知識を必死に貪っている」
「いい。プライドが砕けた場所には、新しい『役割』が根付く。彼らにはトトの農地における『品種改良』と、ソフィアの医療班での『新薬開発』の補助を任せろ。植物と魔力に関する知見だけは本物だからな」
【国家『閃光の礎』:人口と勢力の確定(大陸内最終)】
前回の人口: 293,680名
自力到達エルフ: +22,150名
【現在の総人口】: 315,830名
「……三十一万人か。これでこの大陸の『生きる意志ある者』はすべて回収したと言っていいだろうな」
俺は中央管制塔のモニターを切り替え、大陸全土の俯瞰図を表示させた。
中央(王都跡): 演算と指揮の心臓部。
地方: 医療、物流、資源の拠点。
外縁部(旧帝国・エルフの森): 今や広大な「実験農場」および「自然保護区」へと再編。
「カイル。国内の31万人は、10万人の部隊による完璧な管理と、国民自身の自立心によって、もはや俺が指示を出さずとも自律的に進化を続けている。……となれば、次は『外』だ」
俺は西の水平線、ガリアス帝国がある方向を指差した。
「ハンス。ガリアスのボロ船で、命からがら逃げ帰る連中に、俺たちの国の『豊かさ』が記録された魔導映像をたっぷりと持たせたな?」
「ああ。あいつらが本国に帰り着く頃には、ガリアスの民衆の間で『海の向こうに、神すら跪く楽園がある』っていう噂が、蒸気機関の圧力みたいに爆発するはずだぜ」
【現状報告】
総人口: 315,830名
技術: 魔導演算、蒸気動力、エルフの植物魔導が融合した「超文明」へ。
外交: 大陸全土の平定完了。意識は海の向こうの「ガリアス帝国」へ。
「さて、カイル。31万人の国民に告げろ。これより我が国は、この星の『不条理な境界』をすべて取り払う。準備のできた奴から、新しい『役割』――世界開拓員に志願しろと」
「カイル。31万5,830人の国民、そして10万人の部隊。この国の『密度』は今、頂点に達した。これ以上、この大陸内で内向きにリソースを割くのは非効率だ」
俺の言葉に、カイルは深く頷き、管制塔のメインスクリーンに海の向こう――ガリアス帝国の最新動静を映し出した。
【ガリアス帝国:『恐怖と羨望』のパンデミック】
現状:
命からがら逃げ帰った数隻のボロ船が、ガリアスの港に到着。
帰還した兵士たちは、魔導映像を街中で流し、「金貨よりも価値があるパン」と「一瞬で戦艦を無力化する神の力」を語り歩いた。
帝国の反応:
皇帝と軍部は、これを「未知の魔導兵器による洗脳」と断定。
国の威信をかけ、全蒸気機関をフル稼働。大陸を力でねじ伏せるための**「超弩級・鋼鉄空中艦隊」**の建造を開始した。
「……なるほど。あいつら、蒸気で空を飛ぶつもりか。紳士的な警告を、武力への挑戦と受け取ったわけだな」
カイルが冷徹に演算結果を表示する。 「マサル、あちらの技術レベルでは、あと数ヶ月で一万トン級の浮遊艦が完成する。……だが、俺たちの『魔導蒸気ハイブリッド』の足元にも及ばない」
「ハンス、エレン、ジーク。国民に告げろ。これより我が国は、この星の空を支配する。防衛ではない。**『管理』**だ」
【国家『閃光の礎』:星間管理フェーズ突入】
空中旗艦『アブソリュート・オーダー(絶対秩序)』の進宙:
ジークの魔導蒸気、エルフの浮遊結晶、エレンの超硬度建材が融合。全長2キロを超える巨艦が、王都跡の中央管制塔を覆うように浮かび上がった。
『役割』の拡張:
31万人の国民の中から、さらに意志の強い5万人が「星間開拓員」に志願。彼らは10万人の部隊と連携し、空中艦隊のクルーとして機能する。
大陸の『隠蔽』:
カイルの教育隊(10,000名)が、大陸全土を覆う「広域認識阻害結界」を展開。ガリアスからは、この大陸が「ただの荒れ狂う嵐」にしか見えなくなった。
「……マサルさん、準備完了だぜ。ガリアスのボロ船が空に浮く前に、俺たちの影であいつらの太陽を隠してやろう」
ハンスが不敵に笑う。俺たちの背後には、31万人を支える揺るぎないシステムと、10万人の精鋭が控えている。
「カイル。ガリアス帝国へ向けて、旗艦を発進させろ。武力制圧はしない。ただ、あいつらの帝都の真上に居座り、**『自分たちの文明がいかに稚拙か』**を、24時間体制で見せつけてやれ」
「了解だ。……マサル、ガリアスの民衆が、空に浮かぶ俺たちの『清潔で巨大な街』を見上げたら、どうなると思う?」
「決まっている。自分たちの皇帝に石を投げ始め、こちらに手を伸ばすだろう。俺たちは、その中で**『自分の足で泳いでくる者』**だけを、再び鑑定してやるだけだ」
【現状報告】
総人口: 315,830名
戦略: 物理的破壊ではなく、圧倒的な「文明格差」による内側からの崩壊。
ターゲット: ガリアス帝国本国。




