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断罪の階梯  作者: 慈架太子


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7/10

王国の消滅

「カイル、報告しろ。リヴァーレとギルバを編入し、二十万人体制への準備を進めている今、この大陸の『外』はどうなっている。他国の動向、そしてまだどこにも救われず、取り残されている小さな村や町はないか?」


俺の問いに、カイルは一新された広域魔導地図を広げた。6,100名に増員された教育隊の偵察網と、ハンスの物流ネットワークから吸い上げられた最新の情報だ。


【大陸勢力および未統合地域・調査報告】

1. 他国の情報(主要な隣国)

帝国『ヴォルガ』(東方):


現状: 大陸最大の軍事国家だが、こちらの「10万殲滅」と「二十万人の飽食」の噂を聞き、完全に腰が引けている。国境付近に軍を集結させてはいるが、侵攻の気配はなく、むしろ「使節(という名の偵察)」を送るタイミングを計っている様子。


森の民『エルフの自治領』(北東):


現状: 極度の排他的な姿勢だったが、最近の魔物の凶暴化に手を焼いている。トトの魔導農法による「森を傷つけない収穫」に興味を示し始めているとの情報あり。


2. 取り残された村・町(旧サンクチュアリ王国内)

辺境の隠れ里(計12ヶ所):


現状: 王都からの徴税からも逃れていたような、山間部や森の奥深くにある小規模な集落。


課題: 孤立しているため、最近の「魔物の活性化」により滅亡の危機にある。人口は合計で約5,000名。


旧王領の孤立都市『フェンネル』:


現状: 王都とギルバの間に位置する、かつての宿場町。王都の混乱で完全に補給が途絶え、自警団が辛うじて街を守っているが、食料は底をつきかけている。


人口: 約8,000名。


「……なるほど。まだ俺たちの手が届かず、震えている奴らが一万人以上いるわけか。カイル、放置しているメルキアや王都の貴族とは違い、彼らは『助ける価値のある役割』を待っているはずだ」


俺は地図に新しいポイントを打ち込んだ。


「ハンス。リヴァーレとギルバへの支援ルートを拡張し、その途上にある『フェンネル』と辺境の村々に、一千名単位の支援部隊を派遣しろ。紳士的に、だが迅速にな。拒否するなら無理強いはしないが、飢えと魔物に怯える夜は今日で終わりだと伝えてこい」


「了解だ、マサルさん。アイテムボックスに詰め込んだ温かいスープと新しい毛布を持っていけば、交渉なんて必要ないくらい歓迎されるはずだぜ」


「カイル、ヴォルガ帝国やエルフの領地には、まだこちらから接触しなくていい。だが、一歩でもこちらの新領土に無断で踏み込めば、『閃光の礎』の洗礼を受けさせる準備だけはしておけ」


「わかってる。6,100人のジャベリン使いが、いつでも空を埋め尽くせるようにしておくよ」


【現状サマリー】


統合予定: フェンネルおよび辺境の村々(計 約13,000名)。


外交方針: 帝国・エルフ領は注視。まずは内政と、旧王領全土の「完全救済」を優先。


農地: 拡大した領土に合わせ、さらに数万ヘクタールの開墾を同時並行。



「カイル、ヴォルガ帝国以外はどうなっている? この大陸には、まだ他にも目を向けるべき勢力があるはずだ。旧サンクチュアリ王国の周辺諸国の動向を詳しく報告しろ」


俺の問いに、カイルはさらに広域の地図を投影し、各国の情勢を分析した。


【大陸周辺諸国・情勢報告】

商業公国『カステット』(南東):


国風: 数十の商会が連合して運営する、金がすべての国。


現状: 我が国の「リヴァーレ」を介した貿易ルートが遮断されたことで、経済的パニックに陥っている。だが、商人らしく「敵対より利益」を優先し、俺たちのアイテムボックスによる物流革命を「魔法ではなく新技術」として買い叩こうと画策中。


神聖王国『イストリア』(南方・メルキアのさらに先):


国風: メルキアが信奉する「聖教」の総本山がある巨大国家。


現状: メルキアの窮状を知りつつも、我が国の「10万殲滅」という現実的な武力に震え、今は沈黙を守っている。だが、裏では「異端の魔王が誕生した」として、周辺諸国に反マサル連合を呼びかける密使を飛ばしているとの噂。


獣人連邦『アイアン・フォング』(西方):


国風: 複数の獣人部族が集まる狩猟・武力国家。


現状: 王都が自壊したことで、かつての国境線が曖昧になったのを好機と見て、一部の好戦的な部族が旧王領の村々へ小規模な略奪を開始している。


「……なるほど。商業公国は欲に、神聖王国は教義に、獣人連邦は本能で動いているわけか」


カイルが眉をひそめて続けた。 「特に問題なのは『アイアン・フォング』の略奪部隊だ。あいつら、俺たちが吸収しようとしている辺境の村々にまで手を出し始めてる。ヴォルガ帝国のような静観とは違う、実害が出ているぜ」


俺は静かに立ち上がり、地図の西方を指差した。


「紳士的に振る舞うのは、道理が通る相手だけだ。……ハンス、辺境の村々の救済に向かっている部隊に、教育隊から1,000人を護衛として付けろ。もし獣人が略奪を行っていたら、即座に排除しろ。死体は、トトの農地の肥料にでもすればいい」


「了解だ、マサルさん。野良犬には、噛み付く相手を間違えたってことを教えてやるよ」


「カイル。イストリアの密使はルカとノアに追わせろ。何を喋っているかすべて傍受し、必要なら口を封じろ。……商業公国には、こちらから『招待状』を送る。俺たちの市場の豊かさを見せつけて、戦う気を無くさせてやればいい」


【戦略の修正】


西方防衛: 獣人連邦への牽制を開始。略奪は一切許容しない。


情報戦: 神聖王国の包囲網を事前に潰す。


経済外交: 商業公国を味方、あるいは取引相手に引き込む。


「王都とメルキアを放置している間に、外堀を完璧に埋める。……エレン、農地の拡大を急げ。他国が俺たちの国を羨んで、戦うよりも『加わりたい』と思わせるほどの楽園を作るんだ」



「マサル、辺境の12の隠れ里、そして孤立都市『フェンネル』の全住民の収容と保護、すべて完了した。たった今、ハンスの輸送部隊の最終陣が第四外郭の門をくぐったところだ」


カイルが最新の集計表を俺に手渡した。


【旧王国・残存地域保護 完了報告】

保護人数(総計): 13,244名


内訳:孤立都市フェンネル 8,120名、辺境の隠れ里(計12ヶ所)5,124名。


現状:


住民の9割が重度の栄養失調、あるいは魔物による負傷を負っていたが、ソフィア率いる医療部隊が『エリアヒール』と『ピュリファイ』で即座に対応。


全員にジークの紡織部隊が用意した清潔な冬用衣類と、ハンスが運び出した温かい炊き出し(充足率125%の余剰分)を配布済み。


パワーレベリング進捗:


衰弱が激しいため、まずは休息を優先。明日から基礎演算教育を開始する予定。


「……そうか。これで旧王国の領土内に、保護すべき『民』は一人も残っていないな」


俺の確認に、カイルは深く頷いた。


「ああ。取り残されているのは、自分たちの保身のために門を閉ざした王都の120家の貴族と、現実を見ようとしないメルキアの教会関係者だけだ。……それと、西方の獣人どもだが、略奪のターゲットにしていた村がもぬけの殻になっているのを見て、相当困惑しているらしいぜ。ハンスの部隊に手を出そうとした数隊は、護衛の教育隊がジャベリンの演習台わりにして片付けた」


「よくやった。これで俺たちの背後を突く不確定要素は消えたわけだ」


俺は地図を見下ろし、かつての王都とメルキアの「島」を囲むように広がる、膨大な面積の農地と居住区を指差した。


「エレン、トト。新しく加わった一万三千人分の住居と役割も、予定通り割り振れ。彼女たちや彼らには、これまで孤立して戦ってきた分、この国の『豊かさと安全』を真っ先に実感させてやるんだ。農地をさらに一万ヘクタール追加しろ。食料はあればあるほどいい」


「了解よ! フェンネルの石工たちも、エレンの建設部隊に入りたがってるわ。一気に第五外郭の基礎まで固めちゃうから!」


【現状サマリー】


総人口: 約205,000名(ついに二十万人の大台を突破)。


国土: 旧王国の可住域すべてを事実上の管理下に置く。


王都・メルキア: 完全に孤立した「点」となり、周囲は二十万人の活気と黄金色の農地に包囲されている。


「カイル。次は、外側の国々……特にちょっかいを出してきた獣人連邦や、不穏な動きを見せる神聖王国への『示威デモンストレーション』の準備だ。こちらからは攻めない。だが、誰にも手出しはさせない」



「全員、聞け! 国民が二十万人を超えた今、この国を支える『骨組み』をさらに強固にする。既存の全部隊、そして新設部隊を合わせ、各一万人、計十万人の専門職部隊を完成させるぞ! 適性はすべて俺の『鑑定』で振り分ける。一秒たりとも無駄にせず、パワーレベリングを開始しろ!」


俺の号令とともに、新国民二十万人の中から、それぞれの「役割」に最も適した才能たちが吸い上げられ、十の部隊へと再編された。


【国家『閃光の礎』十万人精鋭部隊・新体制】

カイル:教育・戦略魔導部隊(10,000名)


教育隊を大幅増員。一万人が同時に一千発超の『ジャベリン』を演算展開する、この世で最も硬く鋭い「盾と矛」。


エレン:国土建設・工兵部隊(10,000名)


土魔法の精鋭。二十万人を支える多層連結都市と、旧王領全土を貫く魔導高速道路を一昼夜で成形する。


ハンス:物流・資源管理部隊(10,000名)


全員が『アイテムボックス』を極めた。二十万人の衣食住すべてを、一秒の遅滞もなく循環させる国家の動脈。


ソフィア・リナ:医療・広域衛生部隊(10,000名)


国内全域を「聖域」に保つ。一万人の『エリアヒール』が、病と怪我をこの国から過去の遺物に変えた。


トト:大規模農業・環境部隊(10,000名)


十万ヘクタールの農地を管理する。魔導農法と気候制御により、二十万人の胃袋を完全に超越する食料を生産。


マルコ:治安維持・鑑定警察部隊(10,000名)


国民の悩み相談から、鑑定による不純物のあぶり出しまでを担う。内側の秩序を完璧に保つ。


ジーク:魔導具開発・紡織生産部隊(10,000名)


高密魔導戦闘服から、生活を支える魔導具までを量産。技術による「豊かさ」の底上げを行う。


ギル:資源採取・解体専門部隊(10,000名)


魔物の間引きと素材化、地下資源の効率的解体を担当。荒野を資源の宝庫に変える。


ルカ・ノア:諜報・情報通信部隊(10,000名)


大陸全土の通信傍受と、国民への正確な情報伝達を行う。この国に「隠し事」は通用しない。


マサル直属:特務演算・予備部隊(10,000名)


各部隊の連携調整と、非常事態に即応する遊撃精鋭。俺の意志をダイレクトに現場へ反映させる。


「……カイル。一万人の教育隊にパワーレベリングを急げ。新入りの四千名も、一週間以内に『演算』の基準に到達させろ。他九部隊も同様だ」


「了解だ。マサル、二十万人の国民に対し、十万人が専門の『役割』を持つ。こんな異常な密度、もう『国』じゃなくて一つの『意思を持った巨大な生物』だぜ」


カイルが戦慄しながらも、誇らしげに報告書をまとめる。国民の二人に一人が、何らかの専門技能を極めた精鋭。この「十万人」が同時に動き出したとき、世界の常識は完全に上書きされる。


「エレン、トト。増員された部隊を使って、王都とメルキアを囲む農地をさらに拡大しろ。あいつらが城壁の隙間から見る景色は、俺たちが生み出す『黄金の海』と、整然と進む十万人の『役割』の行進だ」


俺は地図に、旧王国の境界を超えたさらに先、大陸全土を視野に入れた大きな円を描いた。


「王都やメルキアはもうどうでもいい。俺たちは、この十万人の『骨組み』を使って、この大陸に真の平穏を築くぞ」


【現状報告】


総人口: 約210,000名


専門部隊: 10部隊・計100,000名(全員がパワーレベリング中)



「マサル、その質問を待っていたよ。結論から言えば、この国に『奴隷』や『娼婦』は一人も存在しない。 俺たちが作ったこのシステムにおいて、そんな不合理な存在は論理的に排除されているからな」


カイルは10万人の部隊管理データが並ぶ魔導板を指し示しながら、淡々と、しかし確信を持って答えた。


【『役割』による不合理な階級の消滅報告】

奴隷がいない理由:


効率の欠如: 魔導演算を施した10万人の精鋭と、土魔法やアイテムボックスによる自動化が進んだこの国において、効率の悪い「強制労働(奴隷)」は必要ない。


役割の付与: 俺の『鑑定』によって、すべての人間には適性に応じた『役割』が与えられている。誰かの所有物になる暇があるなら、一人の「生産者」としてシステムに組み込まれた方が、本人にとっても国にとっても圧倒的に利益が大きいからだ。


娼婦がいない理由:


生存保障の完備: そもそも「体を売らなければ生きていけない」という経済的困窮がこの国には存在しない。ハンスの物流とトトの農耕により、全国民に衣食住が保証されている。


自尊心の回復: ソフィアやリナの衛生教育と、カイルの演算教育を受けた国民は、自らが「国の重要な歯車」であることを自覚している。搾取されるだけの役割を、誰も選ばないし、俺たちも許容しない。


「……なるほど。生存が完全に保障され、能力に応じた役割がある場所では、人間をモノのように扱う必要がないわけか」


俺の言葉に、カイルが静かに頷く。


「そうだ。もし旧王都から流れてきた難民の中に、かつて奴隷だった者や娼婦として生きていた者がいれば、真っ先にソフィアたちが『浄化ピュリファイ』と『カウンセリング』を行い、マルコの部隊が新しい『役割』を提示している。彼女たちも今や、農耕部隊や紡織部隊の立派な一員だ」


「いい数字だ。だが、カイル。王都の城壁の中や、メルキアの影にはまだ、そういう不合理に縛られている奴らが残っているはずだ」


「ああ。あいつらが門を開けてこちらに来たとき、一番驚くのは『金』や『身分』ではなく、『誰もが誰の所有物でもない』というこの国の当たり前の景色だろうな」


俺は防壁から、夜でも魔導光で明るく照らされた清潔な街並みを見下ろした。10万人の精鋭部隊が巡回し、20万人の国民が自分の足で歩き、自分の役割を全うしている。


「ハンス、各部隊に周知しろ。我が国において、人間を売り買いする不届き者が現れたら、即座に俺の前に連れてこい。肥料にする前に、たっぷりと『教育』してやる」


「了解だ、マサルさん。そんな野暮な真似をする奴は、この国の清潔な空気には耐えられないだろうよ」


【現状報告】


人権状況: 全国民に『役割』と『生存権』を付与。不当な搾取階級はゼロ。


次なる目標: 国内の完成度をさらに高め、外の世界の「不条理」を相対的に浮かび上がらせる。





「カイル、あいつらしぶといな。王都とメルキアは、まだ滅びないのか?」


俺の問いに、カイルは呆れたように肩をすくめ、最新の観測データを提示した。


【旧勢力:末期の生存状況調査】

旧王都:『共食いの城塞』


現状: すでに国家としての機能は完全に停止。城門を固く閉ざし、自分たちが溜め込んだ「最後の備蓄」を120家の貴族たちが奪い合っている。


生存理由: 王族が隠し持っていた「緊急時用魔導備蓄庫」を開放したらしい。だが、それもあと数日分だ。


精神状態: 「外側の連中はいずれ自滅する」「自分たちこそが正統な支配者だ」という集団狂気に陥っている。


聖教都市メルキア:『静寂の墓場』


現状: 亡命者が続出し、残っているのは教会の幹部と、動けないほど衰弱した狂信者のみ。


生存理由: 断食を「聖なる試練」として正当化し、魔力で無理やり生命を維持している。だが、街のインフラが崩壊しているため、衛生環境は最悪だ。


精神状態: 祈りで腹が膨れると信じ込もうとしているが、限界は近い。


「……なるほど。意地と狂気だけで生き長らえているわけか。ある意味、死ぬよりも残酷な時間を過ごしているな」


カイルが冷徹に告げる。 「マサル、あいつらが滅びないのは、俺たちが『手を出していないから』に過ぎない。俺たちの10万人の部隊が本気を出せば、ジャベリン一斉掃射で数分、エレンの土魔法で城ごと埋めるのに数秒だ。……だが、やるか?」


俺は黄金色に輝く広大な農地を眺めながら、ゆっくりと首を振った。


「いや、放置だ。俺たちが手を下して『殉教者』や『悲劇の王』にしてやる必要はない。あいつらが最も恐れているのは、俺たちに攻め滅ぼされることじゃない。自分たちが誰からも相手にされず、忘れ去られ、ただの『石ころ』として朽ちていくことだ」


俺はさらに指示を飛ばした。


「ハンス、各部隊に通達。王都とメルキアの周囲に、あえて『炊き出しの香り』が流れるように風を操れ。トト、農地の収穫祭を最大規模で執り行え。あいつらが飢えと絶望の中で聞くのは、俺たちの20万人の国民が歌う歓喜の声と、満腹の笑い声だ」


「了解だ。……性格悪いな、マサルさん。でも、それが一番効く」


「紳士的だろう? 暴力は振るわない。ただ、『あちら側の世界』にはもう何も残っていないことを、毎日見せつけてやるだけだ」


【現状報告】


王都・メルキア: 社会的・経済的に完全死亡。物理的な消滅は時間の問題。


閃光の礎: 20万人の祝祭準備。10万人の部隊が整然と祭りの設営を行い、圧倒的な国力の差を見せつけている。



「マサル、あれからさらに数日が経過した。…ついに、限界が来たようだな」


カイルが冷徹な報告を上げる。俺たちが20万人の国民と10万人の部隊で、豊かな収穫祭と祝祭の準備に沸いている間に、取り残された二つの「島」はついに臨界点を迎えた。


【旧勢力:最終崩壊状況】

旧王都:『沈黙の廃墟』


現状: 数日前まで聞こえていた貴族たちの怒号や、私兵たちの剣戟の音が完全に消えた。備蓄庫が底をつき、飢えに耐えかねた私兵たちが内側から門の鍵を破壊。


光景: 120家の貴族たちは、もはや着飾る服すら売り払い、泥を啜って動けなくなっている。かつて「平民」と見下した俺たちの国の明かりを、城壁の隙間から涙を流して見つめている。


聖教都市メルキア:『祈りの終焉』


現状: 最後の「聖なる試練(断食)」が失敗。魔力での延命も限界を超え、教会の祭壇の前で幹部たちが次々と力尽きた。


光景: 放置された街には雑草が生い茂り、祈りの声の代わりに、風の音だけが虚しく響いている。


「…マサルさん、終わったわよ」


エレンが防壁の上から、スコープ越しに旧王都の惨状を確認して告げる。


「王都の正門が内側からこじ開けられたわ。中から這い出してきたのは、かつての騎士団長や高位貴族……の成れの果てね。真っ白な布(白旗)の代わりに、ボロ布を掲げて、こっちの炊き出しの匂いがする方へ、文字通り泥を這って向かってきてる」


俺は静かに頷き、10万人の部隊に最終指示を出した。


「カイル、マルコ。部隊を動かせ。制圧ではない、**『回収』**だ。這い出してきた奴らを一人ずつ鑑定しろ。改心しているなら、まずはスープを与えてソフィアの医療班へ。未だに特権を口にするような腐った奴がいたら、即座に地下牢へ放り込め」


「了解だ。…マサル、王都の『王』はどうする? 王座に座ったまま、動けなくなっているらしいが」


「ハンス、一千人の輸送部隊を連れて城へ入れ。王冠も宝物庫も、今の俺たちにはただの『ガラクタ』だ。すべて回収して、ジークの部隊に魔導具の材料として溶かさせろ。王本人が歩けるなら、この20万人の民が笑っている街並みを、その目に焼き付けさせてから『一国民』として登録してやれ」


【国家『閃光の礎』・完全統合完了】


旧サンクチュアリ王国: 消滅。


新人口: 20万 + 回収された旧王都・メルキアの生存者(数千名)。


現状: 全土の『役割』による管理体制が完成。


「さて、カイル。これで『内側』の掃除はすべて終わったな。これからは、この10万人の精鋭と20万人の国民で、帝国ヴォルガや獣人連邦、そして外の世界の『不条理』をどう紳士的に正していくか……その相談を始めようか」



「カイル、報告しろ。王都の門が開き、泥を這って出てきた連中のうち、俺の『鑑定』をパスして、この国の『役割』を担う覚悟があると認められた改心者は何人だ?」


カイルが、マルコの治安維持部隊とソフィアの医療班から上がってきた最新の選別データを確認し、静かに答えた。


【旧王都生存者・最終選別報告】

王都からの全生存者: 約3,200名


内訳:動けなくなっていた貴族、その家族、最後まで城に残った私兵・侍従。


選別結果:『改心者(国民入り)』: 412名


鑑定詳細: 飢餓と絶望の果てに、かつての特権意識が完全に砕け散った者たち。自分の手で働き、誰かの役に立つことでしか生きる価値を見出せないと、魂から理解した者。


処置:


即時救済: スープと清潔な服を与え、体力を回復させる。


名前の剥奪: 全員から爵位と家名を永久に剥奪。


再教育: トトの農耕部隊、またはギルの解体部隊へ「見習い」として配属。「元貴族」ではなく「一人の新人労働者」としてパワーレベリングを開始。


選別結果:『未改心・地下牢送り』: 約2,800名


鑑定詳細: 助け出されてなお「私は公爵だぞ」「マサルという男に会わせろ」「いつ食料を献上しに来るのか」と、現実の見えない妄言を吐いている者。


処置:


マルコの部隊が即座に拘束。かつてのバドたちと同じ地下牢へ。


今後は、この国の清潔な空気を汚さない「肥料」としての適性を再鑑定する。


「……三千人以上いて、たった四百人か。予想以上に腐りきっていたな」


カイルが肩をすくめる。 「ああ。残りの二千八百人は、自分が死にかけた理由が『自分たちの無能』にあることすら理解できていない。…マサル、王族はどうだった?」


「王本人は、王座に縛り付けられたまま事切れていた。残った王子と王女も、未改心組の筆頭だ。マルコに、地下牢の最下層で一番過酷な役割を与えておけと伝えてある」


俺は、新しく加わった412名の「元貴族だった者たち」が、震える手でトトから配られた農具を受け取る光景を眺めた。


「これでいい。この412人は、いつか俺たちの国の良き語り部になる。…さて、ハンス、エレン。王都の抜け殻はもう不要だ。使える建材をすべて剥ぎ取ったら、更地にして農地にする。10万人の部隊を総動員して、一晩で旧時代の象徴を消し去るぞ」


「了解よ、マサル! 旧王宮があった場所には、世界一巨大な『共同浴場』でも建ててあげましょうか。清潔こそが、この国の正義だものね」


【現状報告】


王都統合: 物理的・政治的に完全完了。


総人口: 約213,000名(保護した村人や改心者含む)。


次なる一歩: 大陸全土に「旧王国の消滅」と「閃光の礎の完全なる確立」を布告する。







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