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断罪の階梯  作者: 慈架太子


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5/10

殲滅

ルカとノアが血相を変えて、司令部に飛び込んできた。


「マサル、緊急事態よ! 街道の地平線が鎧の反射で埋め尽くされているわ。王国の騎士団、その数、およそ10万の大軍勢よ!」 「ノアの魔導通信でも確認しました。前回の先遣隊とはわけが違う。王国の本隊、本気でここを潰しに来ています!」


二万人の国民が暮らすこの国に、その五倍の軍勢が迫る。だが、俺の心は驚くほど冷静だった。俺たちは、この瞬間のために役割を磨き、1024発の演算能力を手に入れ、ジャベリンを完成させたのだ。


俺は即座にカイルを呼び出した。


「カイル、聞いたな。10万の軍勢だそうだ。報連相もできず、国民の安全も保障できない腐った国の残骸が、俺たちの平穏を壊しにやってきた」


カイルは静かに、だが凄まじい魔力を全身から立ち昇らせて頷いた。 「ああ。教育隊100名、すでに防壁の上で配置についている。全員が2の10乗(1024発)の展開を完了し、俺の合図を待っているぜ」


俺は防壁の外、地平線を埋め尽くす鉄の群れを見据え、冷徹に言い放った。


「カイル、教育隊に指示を出せ。『ジャベリン・2の10乗(1024)』を許可する。 警告は不要だ。この国の土を踏ませるな。……一人残らず、殲滅せよ」


「了解だ、総帥。……いや、マサル。俺たちの役割、完遂させてもらうぜ」


カイルが防壁の上で右手を高く掲げた。 「教育隊、聞け! マサルより全火力の解放許可が降りた! 目標、10万の侵略者! 全員、1024発のバレットを凝縮、ジャベリンへと変換せよ!」


100名の精鋭が、一斉に超高度演算を開始した。 防壁の上が、直視できないほどの光に包まれる。一人につき1024発。100人で計10万2400発の『ジャベリン』が、空中に構築された。一本一本がバレットの数百倍の破壊力を持つ必殺の槍だ。


「放てッ!!」


カイルの怒号と共に、10万を超え光の槍が夜空を、いや世界を引き裂いた。


【戦況報告:防壁前広域殲滅戦】


王国騎士団(10万騎):


状態:一瞬にして消滅。


詳細:10万発のジャベリンによる飽和攻撃を受け、重装甲も魔導障壁も無意味化した。街道の地形そのものが削り取られ、後に残ったのはただの静寂と、深々と抉れた大地のみ。


『閃光の礎』教育隊(100名):


消耗:極小。1024発の演算制御を完璧に行い、反動もジークの新開発戦闘服で吸収。


一瞬だった。 地平線を埋め尽くしていた10万の軍勢は、ジャベリンの猛火に焼かれ、塵一つ残さず霧散した。


「……終わったな」


カイルが呟く。防壁の上では、教育隊が息一つ乱さず、次の命令を待っている。 地下牢では、その音と地響きを聞いたバドたちが「何が起きた……? 10万の軍勢が、一瞬で……?」と、理解を超えた恐怖に腰を抜かして震えていた。


「よし、カイル。深追いする必要はない。死体も残っていないだろうが、エレンに指示して荒れた地形を土魔法で整えさせろ。トト、その場所も新しい農地にするぞ。奴らが流した血も、明日からは俺たちの糧だ」



10万の軍勢を一瞬で消し去ったという事実は、周辺諸国や王都にとって想像を絶する恐怖となっただろう。だが、俺に王都を救う義理も、今すぐ攻め落として支配する興味もない。


「ルカ、ノア。王都の方向は引き続き監視しろ。だが、こちらから接触する必要はない。使者が来ても門前払いだ。しつこいようなら捕縛して、地下の貴族たちの世話役にでも放り込んでおけ」


「了解。関わっても時間の無駄だもんね」 「はい、魔導通信の傍受だけ続けて、不穏な動きがあれば即座に報告します」


俺は幹部たちを呼び戻し、これからの国家運営の方針を伝えた。


【国家『閃光の礎』今後の方針:絶対的中立と内政特化】


王都への対応: 完全黙殺。使者は捕縛。


「対等な対話」ができない相手に割く時間はない。あちらが勝手に自壊するのを待つ。


紡織部隊の本格稼働ハンス・ジーク・ギル・トト:


教育隊には、1024発の魔力負荷に耐えうる「高密魔導繊維」の戦闘服を。


一般国民には、清潔で動きやすい「クリーン魔法高耐性」の普段着を全員分配備。


第二外郭の大農地化エレン・トト:


先ほどの戦場で耕された大地を、ハンスが持ち帰った種籾で埋め尽くす。


10万の軍勢が消えた跡地は、皮肉にも良質な肥料を含んだ広大な穀倉地帯へと変わる。


回復・浄化魔法の全土普及ソフィア・リナ:


100名の医療部隊を指導員として各区画へ派遣。


「病気で死なない」「怪我で働けなくならない」体制を完璧なものにする。


「いいか、外がどうなろうと知ったことじゃない。俺たちの役割は、この壁の内側にいる二万人が、今日より明日、少しでもいい服を着て、いい飯を食えるようにすることだ」


俺の言葉に、幹部たちはそれぞれの現場へと戻っていった。


数日後、街は見違えるような光景になった。 全員が新しい服を纏い、街角ではソフィアたちが教える「ピュリファイ」の光が優しく灯っている。エレンとトトが作り上げた大農地からは、魔導肥料による早生作物の収穫が始まり、二万人の胃袋は完全に満たされた。


「マサル、地下牢のバドたちが『王都の重税から逃げたい役人がまだ大勢いる』『彼らをこちらで雇ってくれないか』と泣きついてきているけれど、どうする?」 マルコが呆れ顔で報告に来た。



「カイル、報告しろ。10万の軍勢を退け、第二外郭が実質的に機能し始めた今、この国の『数字』はどうなっている。面積、キャパシティ、人口、住居、そして食料充足率だ。今度は誤魔化しのない正確な数字を持ってこい」


俺の叱咤を受け、カイルは表情を引き締め、手元の最新データを提示した。


【国家『閃光の礎』現状報告書】

人口(総計): 21,211名


内訳:旧住民 約10,000名、王都からの避難民 約10,100名、各部隊員 約1,111名。


領土面積:


第一外郭(旧市街): 約100ヘクタール。


第二外郭(新拡張区): 約1,000ヘクタール。外壁は完全に閉鎖済みだが、内部のインフラ整備は道半ば。


収容キャパシティ(住居確保率): 82%


現状: 約17,400名は石造住宅に収容。残りの約3,800名がいまだ仮設テント、あるいは公共施設での雑魚寝状態。


食料充足率: 102%


現状: 極めて危険な綱渡り。


内訳:ハンスのアイテムボックス備蓄(40%)、ギル部隊による連日の魔物肉(45%)、トトの農耕部隊による初期収穫(17%)。


課題:10万の軍勢を消した跡地は「耕しただけ」であり、収穫はまだ先。備蓄を食いつぶしながら、次の収穫を待つ予断を許さない状況。


「……充足率102%。これが今の俺たちの正体か」


10万の軍勢を『ジャベリン』で消し去る力があっても、二万人の腹を満たし続けることさえ、今の俺たちにはこれほどまでに険しい。俺は改めて、自分の組織を突き放すように見据えた。


「いいか、カイル。102%ということは、輸送が一日止まるか、苗が一日枯れるだけで、この国に飢えが出るということだ。浮かれるな。王都が自壊して、さらに難民が押し寄せれば、その瞬間にマイナスへ転じるぞ」


「……わかっている、マサル。派手な魔法で敵を倒すより、こっちの数字を維持する方がよっぽど心臓に悪いぜ」


「エレン、住宅建設の速度を上げ、同時に灌漑施設を最優先で作れ。トト、お前は難民からさらに二千人を動員して、第二外郭すべてを農地へ変えるんだ。俺が教えた『ピュリフィケーション』で土を精製し続ければ、収穫期は必ず早まる」


俺は幹部全員に、この「102%」という数字の重みを叩き込んだ。魔法は万能ではない。それを使う人間たちが泥にまみれて働き続けなければ、国は砂の城のように崩れる。


「ハンス、お前の部隊100名をフル稼働させろ。物流の停滞は死を意味する。ジーク、紡織部隊は現場で働く連中のための『丈夫な作業服』を最優先で仕上げろ。見た目より機能だ」


「了解だ、マサルさん。この崖っぷちを、俺たちが押し上げてみせるよ」



「マサル、朗報よ! トトの農耕部隊から、第一波収穫の確定値が出たわ!」


エレンが報告書を手に、司令部に駆け込んできた。その後ろからは、泥にまみれながらも晴れやかな表情のトトと、冷静な眼差しを崩さないカイルが続く。


「見ろよマサル、俺が教えた『ピュリフィケーション』と、エレンの土魔法師たちが整えた土壌が見事に噛み合った。第二外郭の先行開墾地100ヘクタールから、予定を大幅に上回る収穫があったぞ」


カイルが最新の数字をボードに書き出した。


【国家『閃光の礎』食料充足率・最新報告】

食料充足率:140%(確定値)


内訳:


トトの農導農法による超速収穫:55%(※従来の3倍の収穫速度を達成)


ギル部隊による魔物肉:45%


ハンスのアイテムボックス内既存備蓄:40%


評価: ついに「その日に食べる分」以上の余剰が生まれた。これにより、備蓄を食いつぶす段階を脱し、「蓄えを作る」段階へと移行した。


「よし……。102%の崖っぷちから、ようやく一息つけるところまで来たな」


俺は数字を見て、わずかに肩の力を抜いた。だが、安堵している暇はない。ルカとノアが険しい表情で進み出た。


「マサル、王都の件について報告よ」


ルカが魔導通信の傍受記録を広げる。


「10万の軍勢が『消滅』したという事実は、王都を完全なパニックに陥れたわ。王族や高位貴族たちは、責任を押し付け合って内紛を始めた。その影響で、王都内の物流が完全に停止……今、あそこは地獄よ。飢えた民衆が暴動を起こし、治安が完全に崩壊している」


ノアが映像魔法で、王都周辺の様子を映し出した。


「王都を見捨てた市民や、戦う意志を失った末端の兵士たちが、数千、数万という単位でこちらへ向かって移動を開始しています。彼らはもはや侵略者ではなく、ただの『飢えた難民』です。……数日以内に、ここの門前に到達します」


カイルが俺の顔を見た。 「140%に上がったばかりの食料が、また一瞬で食いつぶされるな。どうする、マサル? 門を閉じるか、それとも……」


「……受け入れる。ただし、これまでの難民と同じだ。まずは鑑定で選別し、不純物は排除する。そして、この国に来た以上、誰であっても『役割』を持ってもらう。トト、140%になったからといって気を抜くな。新しく来る数万人のために、第二外郭の残り900ヘクタールの開墾をさらに加速させろ」


「了解だ。食わせる飯はある。あとは、そいつらが俺たちの『歯車』になれるかどうかだな」


王都が自滅し、押し寄せる絶望の波。 俺は、新しく支給された丈夫な戦闘服の袖を捲り上げ、押し寄せるであろう数万人の「未来」を迎え撃つ覚悟を決めた。



王都の自壊に伴い、地平線を埋め尽くすほどの難民が押し寄せてきた。その数、およそ3万人。10万の軍勢を消し去った時とは違う、生気のない「絶望」が波のように正門へ迫る。


「カイル、教育隊を配置につけろ。ジャベリンは不要だが、威圧は切らすな。リナ、ソフィア、医療班100名は消毒と初期治療の準備を。……ハンス、アイテムボックスから門の前に柵と検問所を組め。一気に流れ込ませるな」


俺は防壁から降り、正門の真ん中に立った。背後には、140%まで引き上げた食料と、新しく支給された作業服を纏い、自信を取り戻した二万人の「国民」たちが控えている。


「開門。……一人ずつ通せ。これより、全員の『役割』を決める」


俺の眼に魔力が宿る。大規模鑑定の開始だ。


【第二回・大規模難民選別報告(3万人規模)】

一般市民・下級兵士(約29,000名)


状態: 極度の飢餓、疲労。


鑑定: 敵意なし。生きるために役割を求めている。


処置: 受け入れ許可。


リナ、ソフィアによる「ピュリフィケーション(浄化)」と「ヒール」の実施。


直ちにトトの農耕部隊へ送り、開墾作業に従事させる。働ける者にはその場で「クリーン」の魔法を教え、尊厳を取り戻させる。


王都の残党貴族・汚職官吏(約850名)


状態: 「自分たちは特別だ」「食料を優先しろ」と叫び、列を乱す。


鑑定: 傲慢、寄生心。


処置: 即時拘束。 マルコの治安部隊により地下牢へ。


先に入っているバドたちと一緒に、この国の「上下なし、役割あり」のルールを体で覚えさせる。


混乱に乗じた潜入工作員・暗殺者(約150名)


状態: 隠し持った毒針、魔導爆弾。


鑑定: 明確な殺意と破壊工作の意志。


処置: その場でカイルの教育隊が排除(即殺)。 慈悲はない。


「私は伯爵夫人だぞ! なぜこんな泥だらけの平民と一緒に並ばせる……!」 喚き散らす女貴族を、ハンスの部下たちが無言で摘まみ上げ、地下牢へと引きずっていく。


「ここでは『伯爵』なんて役割はない。地下で『囚人』という役割をこなしてろ」


一方で、震えながら俺の前に立った元農民の男には、肩を叩いて告げた。 「お前はトトのところへ行け。土を耕す役割だ。今日からお前は、誰の支配も受けない『閃光の礎』の国民だ。……おい、次の奴をクリーンしろ!」


ソフィアたちの放つ「ピュリファイ」と「クリーン」の光が門前を包み、泥と絶望にまみれた難民たちが、次々と小綺麗に、そして目に力を宿した「労働力」へと変わっていく。


「マサルさん、これで人口は一気に五万人を超えるわ。住居も食料も、またギリギリの戦いになるわよ」 エレンが現場の指揮を執りながら、不敵に笑う。


「ああ。だが、五万人の土魔法と五万人の農耕があれば、この荒野を数日で緑の平原に変えられる。カイル、教育隊の中から演算能力の優れた奴をさらに1000人選抜しろ。5万人を守るには、今の100人じゃ足りない」


俺たちの国は、王都の残骸を飲み込み、さらに巨大な「機能する怪物」へと膨れ上がっていく。


「カイル、教育隊の中から演算能力の優れた奴をさらに1000人選抜しろ。5万人を守るには、今の100人じゃ足りない。選ばれた1000人には、徹底的に2の10乗(1024発)までの演算を叩き込め」


俺の命令が飛ぶと同時に、各部隊のリーダーたちが一斉に動き出した。5万人という膨大な人口を支えるため、全組織がこれまでの規模を脱し、真の「国家」としてのレベルへと昇華する。


【国家『閃光の礎』全組織レベルアップ報告】


教育隊(カイル:1,100名体制)


強化: 演算特化の1,000名を追加。全員が『ジャベリン』の予備動作に入り、1024発のバレットを展開可能。


布陣: 5万人の全居住区を24時間体制で、空の隙間もなく監視・防衛。


土魔法部隊(エレン:中核1,000名・作業員数万名)


強化: 100名だった精鋭を1,000名に拡大。


成果: 数千ヘクタールの「第三外郭」建設に着手。石造の集合住宅が、一日に数百棟のペースで大地から競り上がっている。


物流・紡織部隊(ハンス:1,000名)


強化: 全員が『アイテムボックス』を使いこなす。


成果: 5万人分の新しい服と物資が、滞りなく隅々まで届く。旧王都のボロを着た者は、この国から一人もいなくなった。


医療・衛生部隊(ソフィア・リナ:1,000名)


強化: 全員が『エリアヒール』と『ピュリファイ』を習得。


成果: 5万人が密集しているにもかかわらず、街の空気は常に清浄。疫病発生率は0%。


農耕指導部隊(トト:1,000名・農民数万名)


強化: 『ピュリフィケーション』による超速農法を、新入りの難民3万人に徹底指導。


成果: 土地不足を解消。開墾された数千ヘクタールの農地から、途切れることのない収穫が約束された。


「いいか、人数が増えたからといって、個の『役割』が薄まると思うな。1,000人の部隊員がそれぞれ100人の新人を率いれば、10万人までなら余裕で管理できるはずだ」


俺の言葉に、各1,000名の精鋭を従えた幹部たちが、防壁の上で居並ぶ。壮観な眺めだ。


「マサル、これで準備は整ったわ。5万人の胃袋も、住居も、安全も、私たちの『役割』が完全にカバーしている」 エレンが胸を張る。


「カイル、教育隊の1,000人に伝えろ。お前たちがいる限り、この国に手を出せる者はこの大陸に存在しない。……さて、王都の混乱を尻目に、俺たちは俺たちの『理想郷』をさらに広げるぞ」



ルカとノアが、王都の潜入調査と魔導通信の傍受による最新の報告を持ってきた。 10万の軍勢が消滅し、さらに3万の難民が「閃光の礎」へ流出した後の王都は、もはや国家の形を成していない。


「マサル、王国の『死に体』の数字が出たわ。惨憺たるものよ」


【旧・サンクチュアリ王国 現状調査報告】


残存人口: 約70,000名(※全盛期の4分の1以下)


内訳:


逃げ遅れた貧困層・老人・病人:約50,000名


私兵を抱え、城塞に引きこもる貴族とその縁者:約15,000名


王宮内に固執する王族と近衛兵:約5,000名


残っている貴族の数: 約120家


現状: 領地を捨て、全財産を持って王都の「内城アッパーエリア」に逃げ込んでいる。


動向: 120家が限られた食料と物資を巡って内紛中。昨日まで「同盟」を組んでいた家同士が、夜には暗殺者を送り合う泥沼の権力闘争を続けている。


食料充足率: 推定15%以下


物流網が完全に崩壊。農村部はすべて「閃光の礎」側に吸収されるか、魔物の餌場と化している。王都内では、金貨一袋でパン一つすら買えない状況。


治安・衛生: 最悪


「クリーン」の概念がないため、ゴミと遺体が放置され、疫病の兆候が出始めている。


「……ひどいものね。あんなに威張っていた連中が、今は城壁の中で餓死を待っているわ」 ルカが冷ややかに吐き捨てた。


「マサルさん、残った120家の貴族たちは、自分たちの失態を棚に上げて『閃光の礎』が王国の財産(難民や物資)を不当に奪っていると主張しているようです。近々、国王の名の下に『全財産の返還と謝罪』を求める公式文書を送る準備をしているとか」


ノアの報告に、傍らで聞いていたカイルが鼻で笑った。 「全財産の返還だと? 10万の軍勢を溶かされた恐怖をもう忘れたのか。それとも、腹が減りすぎて頭がイカれたか」


俺は玉座(と言っても、エレンが作った機能的な石の椅子だ)に深く腰掛けた。


「放置だ。王も貴族も、自分たちの『役割』を放棄して民を見捨てた時点で、その身分に価値はない。だが、疫病がこっちに流れてくるのは御免だ。ソフィア、医療部隊1,000名に、国境付近の『浄化ピュリファイ』を強化させろ。一歩も病原菌を入れさせるな」


「了解よ、マサル。死にかけの王国に付き合う必要はないわね」


俺たちの国「閃光の礎」は人口5万人を超え、1,000人単位の精鋭部隊がそれぞれの役割を完璧にこなしている。片や、かつての王国は120家の貴族が醜い争いを続け、自壊を待つのみ。



俺は地下牢へと向かった。そこにはバドをはじめ、これまで捕縛してきた元貴族や汚職役人、王都からの使者など、合わせて300名を超える「かつての特権階級」が押し込められている。


「マルコ、全員を広場へ引きずり出せ。これより最後の選別を行う」


俺の言葉に、治安維持部隊1,000名が動いた。怯え、あるいは未だに傲慢な目を向ける貴族たちが、5万人の国民が見守る前で並べられた。俺は一人一人の目を見据え、魔力を込めた「鑑定」を放つ。


【地下牢収容者・最終選別(約315名)】


改心者(約40名)


状態: 己の無力さと罪を認め、泥をすすってでも「役割」を持ちたいと魂から願っている。


鑑定: 傲慢さが消え、労働への意欲と生存への執着が「役割」として昇華可能。


処置: 国民として受け入れ。


称号と家名を剥奪し、平民としてトトの農耕部隊、あるいはエレンの土木作業員へ配属。「働かざる者食うべからず」を徹底させる。


未改心者(約275名)


状態: 「自分たちは選ばれし者」「いずれ王軍が助けに来る」と信じ、国民を見下し続けている。


鑑定: 寄生根性が骨まで染み付いており、この国の調和を乱す害悪でしかない。


処置: 死刑。


「なっ……死刑だと!? 私は侯爵だぞ! 貴様のような平民にそんな権利が――」


一人の元貴族が叫びかけた瞬間、カイルの教育隊が放った『バレット』がその額を正確に撃ち抜いた。悲鳴すら上げる間もなく、未改心者たちが次々と処刑されていく。


「死体に価値はないが、素材にはなる。……ギル、ジーク、トト。こいつらを『処理』しろ」


「了解だ、マサル。無駄にはしない」


ギルの解体部隊1,000名が動き、処刑された死体は即座に解体・加工へと回された。ジークが開発した魔導分解機により、肉体は高純度の有機リンや窒素、つまり**「魔導肥料」**へと分解される。


「トト、この肥料を第二・第三外郭の農地に撒け。こいつらが一生かけて国民から吸い取った養分だ。最後くらいは、土に返して国民の食料を育てる役に立ててやる」


「ああ、皮肉なもんだが、これで来月の収穫量はさらに跳ね上がるぜ」


広場に残ったのは、震えながらも「役割」を与えられた40名の元貴族たちだけだった。彼らは目の前で肥料へと変えられた元同僚たちを見て、特権階級の時代が完全に終わったことを理解した。


【結果報告】


地下牢の清掃完了: 有害な寄生虫(未改心貴族)の排除成功。


副産物: 特級魔導肥料の確保。


国民の士気: 悪徳貴族への断罪により、5万人の国民の結束がさらに強固に。


「さて、カイル、ルカ、ノア。王都に残っている120家の貴族にも伝えてやれ。『閃光の礎』の門を叩くなら、家名もプライドも捨ててこい。さもなければ、お前たちも畑の肥やしになるだけだとな」







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