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断罪の階梯  作者: 慈架太子


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3/10

徴収の後の「整理」と「日常」

三万の軍勢が平原でゴミのように転がっていた光景も、今や思い出になりつつある。あの大勝利の後、俺がやったのは「後片付け」だ。死体が腐って街に疫病でも流行ったら目も当てられないからな。俺の「アイテムボックス」に二万以上の遺体と装備を全部放り込んで、平原を更地に戻してやった 。前世で石に躓いて死んだ俺からすれば、これくらいの手際は当然の「リスク管理」だ 。



今はもう、あの傲慢だった騎士団の将軍バルドムスも広場で片付いたし、セネーの街には一見、平和が戻っている 。



1. 「実益」の回収と外交

俺は、アイテムボックスに溜まった二万人の遺体をただ捨てたりはしなかった。あれは最高の「外交カード」だ 。



遺体の返還と賠償金: 「遺体を腐った状態で王都にぶちまけるぞ」と脅して、国家予算数年分の賠償金と完全な独立自治権をむしり取ってやった 。



王都の自滅: 主力を失った王都は勝手に内乱で燃え上がり、国王も引きずり下ろされたらしい 。自業自得だ。俺たちを蹂躙しようとしたツケが回っただけさ 。


2. 「バレット部隊」の新たな日常

戦争が終わったからといって、千人の部隊を解散させる気はない。 「隊長、今日の訓練も『一点集中』でいいっすか?」 隊員たちは、かつての不安そうな顔が嘘みたいに、今やフランクに話しかけてくる。 「ああ。鎧を抜くのはもう当たり前だ。次は数キロ先の動く標的を確実に消す精度を目指せ」 俺たちの「魔法バレット」はもはや初歩魔法じゃない 。一回で百個を同時展開し、音速で叩き込む俺たちの技術は、セネーを守るための絶対的な「法」として定着した 。



3. セネー開拓区の「管理」

王都が崩壊して、難民がゾロゾロと押し寄せてきた時は正直参った。 「セネーの民にしてくれ」なんて泣きついてくるが、俺はそんなに甘くない 。



労働による選別: 働かない奴、依存するだけの奴はいらない 。開拓区で汗を流してポイントを稼いだ奴だけが、俺の街に入る権利を得る仕組みだ 。



不要な火種の処理: どさくさに紛れて反乱を企てた元貴族もいたが、俺のアイテムボックス内の資材履歴を誤魔化せるわけがない。バレた瞬間に全員「収納」して片付けた 。


4. これから

平原にはもう、騎士団がいた痕跡すらない。俺が作ったのは、英雄が一人で無双する物語じゃなく、普通の人々が「技術と組織」で理不尽を跳ね返すシステムだ 。


「さて、次は王都の焼け跡から流れてくる『ゴミ』の整理でもするか」


俺は玉座でふんぞり返る趣味はないが、この街の静寂を守るためなら、何度でも指先を向ける準備はできている。







俺は以下のものを持っている


アイテムボックス

容量無限

時間停止

熱いものは冷めない

冷たいものは溶けない

腐らない


ステータスオープン

HP MP レベルの表示

レベルの上限なし

スキル一覧に取得した魔法と消費MPが表示される

レベルアップ時には HP MP 全回復


鑑定

あらゆるものを鑑定できる


転生特典というやつかな。後、俺は覚醒してから魔法が使えるようになった。

普通の魔法使いの魔法のようなものではない。「やりたいこと」をイメージするだけで実現できる。

例えばある日、魔法使いのファイヤーバレットを見た。火のつぶてが飛んでいく魔法だ。

俺はこれをイメージした。すぐ使えるようになった。なんかめんどくさい詠唱なんかはいらなかった。思い浮かべるだけで発現できた。

これを森で魔物の狩りに使ってみた。効果はあって狩りもできたのだが不満も残った。

弾速が遅い 1回に1個しか飛ばない。破壊力が小さい。

俺はこれを改良した。

まずは、球を速く。どんどん弾速は増していった。ホーンラビットなんかだと1発で貫通して即死させることができた。さらに改良した。複数の球を発射できるように。

最初は2個。できるようになると3個。これがうまくいかなかった。

試しに、4つ発射してみたらできた。どういうことだ。奇数個ではうまくいかないのか?

5個もできなかった。6個もできない。7つもできない。最大射出は4戸で最大化と思ったら

8個はできた。ますますわからなくなった。事象を分析してみた。

2の乗数個射出できることが分かった。試しに16個 32個と試した。うまくできた。

2の乗数個説は確定だ。これを射出するときにイメージするようにした。

4個とか8個でイメージするのではなく2の2乗個とか2の3乗個とかうまくできた。

2の6乗とか2の7乗を試した。64個のバレット128個のバレットが飛んで行った。

消費MPを確認すると1個分のMPしか消費しないことが分かった。

「何これスゲーじゃん。燃費良すぎ」俺は驚いてさらに研究することにした。


破壊力の向上 飛距離の向上 あっさりとできてしまった。

破壊力は大岩を2の3乗個(8個)で破壊できた。粉微塵になった。

飛距離を確認した。2の2乗個(4個)を飛ばしたら1km飛んだ。

これをもっと精度を上げた。派生魔法も作った。

スナイプ・バレット

頭の中に照星と照門が浮かんできた。

照準を合わせて1個を飛ばしたら3km先の的に命中した。

「スゲー スゲー」と驚いていると王国騎士団のうわさが耳に入ってきた。

「この力は凄いけど 俺個人では数の力に圧倒される。」

ウォーターバレット ウィンドバレット ストーンバレットも同じように作った。

仲間を集めて自衛団を作ることにした。最初は10人 冒険者仲間に教えた。

魔法適性を鑑定で調べて適性に合うバレットを教えた。

単体では発現できるのに複数個の射出方法を教えたがうまくいかなかった。

この世界の人間は計算力が弱い。暗記させよう。

2の5乗(32個)や2の7乗(128個)を愕然と覚えさせた。うまくいった。

王国騎士団が攻めてくる。人数を増やそう。

冒険者仲間の家族や、知り合いに声をかけさせて約1000人集めた。

以下同じように指導していった。

最後に1点集中の技法も授けた。

俺と全員のステータスを確認した。

俺 レベル10 MP550 部隊平均 レベル2~3 MP100~150

たぶん1時間くらい連射しても大丈夫だろう。

準備は整った。


王国とのごたごたが片付いた後俺は次の準備に向かった。


閃光の礎のメンバーを集めた

風魔法の拡声で全員に聞こえるように話をする。


「王国のゴタゴタは片付いた。ここは国ではなく独立自治領として動く。

ただここの領主も片付けないといかん。代表を皆の総意で決めたい。

俺はやる気はない。皆で代表と自治管理をする者を決めてくれ。」



王国騎士団との「作業」が一段落した後、俺は次の一手に取り掛かった。三万の軍勢が平原でただの肉塊と化し、その遺体を「アイテムボックス」で一括処理して外交カードに使うといった面倒な後始末も、一通りケリがついたからだ 。



俺は「閃光のバレット・レギオン」のメンバーを招集した。かつては農具や筆を握っていた「普通」の連中も、今や十万発の属性弾で騎士団を圧倒したという確固たる自信をその目に宿している 。



俺は風魔法の拡声を使って、広場に集まった全員にフランクに語りかけた。


「王国のゴタゴタは片付いた。これからはここは国じゃない、独立自治領として動く 」



そもそも、納税を完璧にこなしていた俺たちに対して、勝手に「反逆」の嫌疑をかけて略奪しに来たあんな無能な国に、これ以上付き合う義理なんて一ミリもない 。俺たちは俺たちのルールで生きていく。



「ただ、ここの強欲な領主も片付けないといかん。代表を皆の総意で決めたい 」


いつまでも捏造した罪で俺たちを縛ろうとする連中を居座らせておくわけにはいかない。だが、そこで俺が「王」として君臨するなんてのは御免だ。前世で石に躓いて死ぬようなリスク管理が染み付いている俺からすれば、玉座なんて狙われやすい場所には座りたくない。


「俺はやる気はない。皆で代表と自治管理をする者を決めてくれ」


俺が作り上げたのは、一人の英雄がいなきゃ守れないような脆弱な街じゃない。一回で百個のバレットを叩き込める千人の「システム」だ 。誰に依存しなくても、俺が教えた「2の乗数」の圧倒的な火力があれば、この街は自立していける 。


俺はあくまで、誰にも邪魔されずに平穏に暮らしたいだけだ。そのためなら、代表が決まるまでの後ろ盾くらいはやってやる。


俺の宣言に対し、広場を埋めた一千人の部隊は静まり返った。俺が代表をやらないと言い切ったことが、彼らにはまだ現実味を帯びていないらしい。だが、俺は本気だ。責任なんて重い荷物を背負い続けたら、またいつ道端の石に躓くか分かったもんじゃない 。


俺は「鑑定」のスキルを使い、隊員たちの中から事務や統率に長けた数名を前に立たせた 。 「代表が決まるまでの間、こいつらが窓口だ。俺は自分の研究に戻る。……あとは勝手にやってくれ」


風魔法の拡声を切り、俺は玉座もどきの椅子から立ち上がった 。 背後で「隊長、待ってください!」と叫ぶ声が聞こえたが、聞こえないふりをしてその場を後にする 。


俺が次にやりたいのは、さらなる魔法の錬成だ 。 バレット・スナイプはすでに完成し、3km先の的に命中する精度を持っている 。 この世界の常識に縛られず、やりたいことをイメージして形にする作業は、俺にとって何よりの優先事項だった 。


組織が勝手に回るようになれば、俺はもっと自分のイメージを形にする時間に没頭できる 。 それが俺にとって、前世の情けない死を上書きするための、一番確実な自衛手段だった 。



新しく決まった幹部にこれからのことを指示する。

前の領主を捕縛しろ。

王都から来た市民の使える奴を100人閃光の礎に入れろ。こいつらにバレットを教えろ。 教育隊を作る。教官を選抜しろ。

街の防壁を作る。土魔法の使い手を集めろ。



選抜された幹部候補たちは、俺の指示を受けて緊張した面持ちで前に出た。彼らはいずれも、俺が「鑑定」で適性を見極めた「閃光の礎」の精鋭たちだ 。



カイル(教育隊長): 「元冒険者のカイルです 。俺は風属性が得意です。王都から来た市民100人を選抜し、俺たちの理念に共感できる奴らに徹底的にバレットを教え込みます。2の乗数計算を暗記させ、1時間連射しても魔力切れを起こさない精鋭に育て上げます」





エレン(防壁・土魔法管理): 「土属性の適性が高いエレンです 。土魔法の使い手をかき集め、街の防壁を速やかに建設します。物理的な守りを固め、誰も手出しできない独立自治領の基盤を作ります」



マルコ(事務・領主捕縛担当): 「マルコです。強欲な前領主の身柄を確実に押さえます。また、代表が決まるまでの窓口として、自治管理の体制を整えるサポートに徹します」


俺は「鑑定」を使い、改めて俺と幹部たちの現状を確認するためにステータスを表示させた 。


【ステータス確認】



マサル(俺)


レベル: 10


HP: 550 / 550


MP: 550 / 550


スキル: アイテムボックス、鑑定、イメージ魔法



カイル


レベル: 3


HP: 150 / 150


MP: 150 / 150


適性: 風属性



エレン


レベル: 3


HP: 140 / 140


MP: 140 / 140


適性: 土属性



マルコ


レベル: 2


HP: 110 / 110


MP: 110 / 110


適性: 火属性




幹部たちへの指示を終えた俺は、かつての領主がふんぞり返っていたであろう豪華な椅子から立ち上がった。


執務室には、俺と新たに選抜した幹部三人の静寂が残る。俺は三人の前を離れ、そのまま出口へと向かった。


背後から「隊長、待ってください!」と困惑したような声が追いかけてきたが、俺は聞こえないふりをしてそのまま部屋を後にした。


これからの実務――旧領主の捕縛、教育隊の設立、そして土魔法による防壁建設は、すべて彼らの仕事だ。組織が勝手に回り、防御が固まれば、俺はもっと自分のイメージを魔法として形にする時間に没頭できる。


それが俺にとって、前世の情けない死を上書きするための、一番確実な自衛手段だった。



幹部たちに指示を出してから数日が経過した。俺は自室で研究を進めつつ、進捗を確認するために10人に増員した幹部たちを執務室に呼び出した。


「進捗を聞く。手短に報告しろ」


俺が促すと、10人の幹部たちが順に口を開いた。


マルコ(28歳・男)が報告する。「旧領主の身柄は確保しました。現在は地下独房に収容済みです。行政の引き継ぎも順次進めています」


カイル(24歳・男)が続く。「教育隊の100人は訓練の真っ最中です。2の乗数計算を脊髄に刻み込ませています。全員がバレットの基礎を習得しつつあります」


エレン(21歳・女)は土魔法部隊を指揮し、土埃に汚れながらも力強く報告した。「高さ10メートル、厚さ5メートルの防壁建設に全力を注いでいます。間もなく街の周囲を一周し終えるところです」


続いて、新たに加わった7名も自己紹介と報告を行った。どいつもこいつも、俺の教えたバレットを扱う幹部だ。


ルカ(19歳・女): 風属性。外域を監視する索敵班長。


ハンス(35歳・男): 土属性。物資の集積を担当する物流管理。


ソフィア(23歳・女): 水属性。負傷者管理をする医療救護班長。


ジーク(30歳・男): 火・土属性。装備の維持と武装強化の整備担当。


ノア(18歳・男): 風属性。街全域の通信網構築。


テオ(26歳・男): 火属性。開拓区の不穏分子を監視する警備担当。


リナ(20歳・女): 水属性。教育隊の資質と「共感」を見極める選抜補佐。


俺は「鑑定」で、現状のステータスを確認した。


【ステータス確認】


マサル(22歳・男): Lv.10 / HP 550 / MP 550(スキル:アイテムボックス、鑑定、イメージ魔法)


カイル(24歳・男): Lv.3 / HP 150 / MP 150(適性:風)


エレン(21歳・女): Lv.3 / HP 140 / MP 140(適性:土)


マルコ(28歳・男): Lv.2 / HP 110 / MP 110(適性:火)


ルカ(19歳・女): Lv.2 / HP 100 / MP 105(適性:風)


ハンス(35歳・男): Lv.2 / HP 105 / MP 95(適性:土)


ソフィア(23歳・女): Lv.2 / HP 100 / MP 120(適性:水)


ジーク(30歳・男): Lv.2 / HP 115 / MP 90(適性:火・土)


ノア(18歳・男): Lv.2 / HP 95 / MP 110(適性:風)


テオ(26歳・男): Lv.2 / HP 110 / MP 100(適性:火)


リナ(20歳・女): Lv.2 / HP 100 / MP 115(適性:水)


「いい調子だ。そのまま進めろ」


俺は短く指示を出し、彼らを下がらせた。 領主は片付き、巨大な防壁も完成が近い。エレンのレベルアップは、あの巨大な壁を完成させた時になるだろう。 組織が自律して動き、防御が完璧に固まれば、俺はもっと自分のイメージを形にする魔法の研究に没頭できる。それが、前世のような不条理な死を二度と繰り返さないための、一番確実な自衛手段になるんだ。



数日後、俺はエレンが指揮する西側の建設現場へ足を運んだ。俺は別に偉いわけじゃない。ただ、躓いて死ぬのが嫌だから仕組みを作っているだけだ。現場で泥にまみれて働いている連中の方が、よっぽど身体を張っている。


エレンが率いる土魔法部隊の建設現場は、仕上げの熱気に包まれていた。俺は別に指示役としてふんぞり返るつもりはない。現場で汗を流している彼らと肩を並べ、進捗を見守る一人の仲間としてそこにいた。


「よし……最後、いくわよ! せーの!」


エレンの掛け声とともに、最後の一画が地響きを立てて繋がった。高さ10メートル、厚さ5メートルの巨大な防壁が街を一周した瞬間、現場にいた11名全員がまばゆい光に包まれた。


「やった……完成だ! 身体が熱い、魔力が溢れてくるぞ!」


巨大な構造物を造り終えた達成感と、それに見合う膨大な経験値が彼らに流れ込む。俺はレベルの上がったエレンと、共に壁を築いた全隊員のステータスを「鑑定」した。全員、過酷な作業を乗り越えたことでMPの底が大きく底上げされている。


【ステータス更新:土魔法防壁部隊】


エレン(21歳・女 / 幹部):Lv.5 / HP 220 / MP 280 「完成よ! これでやっと枕を高くして寝られるわね」


ガモン(26歳・男 / 班長):Lv.4 / HP 210 / MP 240 「俺がガモンだ。壁の土台を一番深く打ち込んだ。びくともしねえぞ」


シータ(20歳・女 / 計測):Lv.4 / HP 160 / MP 260 「シータです。水平と垂直、完璧に出しました。計算が頭にスッと入ってきます」


ボリス(30歳・男 / 補強):Lv.4 / HP 230 / MP 230 「ボリスだ。土の密度を限界まで上げた。物理攻撃じゃ傷一つ付かねえ」


カッツ(19歳・男 / 成形):Lv.4 / HP 180 / MP 220 「カッツです! 壁の表面を鏡みたいに滑らかにして、指もかからないようにしました!」


マイ(22歳・女 / 精製):Lv.4 / HP 170 / MP 250 「マイです。ひび割れが起きないよう、魔力で土の質を強化し続けました」


レックス(25歳・男 / 基礎固め):Lv.4 / HP 200 / MP 210 「レックスだ。地盤沈下しないよう下を魔法で固め抜いたぜ」


アン(18歳・女 / 仕上げ):Lv.4 / HP 150 / MP 240 「アンです。最後の一撃、全魔力を込めました。身体が軽いです!」


ダン(32歳・男 / 運搬):Lv.4 / HP 240 / MP 205 「ダンだ。重い土を運び続けてレベルが上がった。魔力も増えたな」


リク(21歳・男 / 充填):Lv.4 / HP 190 / MP 225 「リクです。隙間を全部魔法で埋めました。完璧な一体成型です!」


モナ(23歳・女 / 維持):Lv.4 / HP 165 / MP 255 「モナよ。建設中の崩落を防ぎ続けてきた甲斐があったわ。MPが倍近くになった」


「みんな、本当に助かった。これでお前らも俺も、寝首をかかれる心配が一つ減ったな」


俺が声をかけると、ボリスが「マサルさん、次は壁の上に巡回用の通路も作りたいんだが、どう思う?」と対等な立場で相談を持ちかけてくる。


「いいな、それ。みんなの意見をマルコに伝えて、必要な資材をハンスに回してもらおう」



防壁が完成し、ひとまずの安全を確保した俺たちは、さらなる組織の底上げのために「パワーレベリング」を行うことにした。俺と、10人の幹部、そしてエレン率いる土魔法部隊の10人。計21名が、完成したばかりの巨大な門をくぐり、魔物が跋扈する深い森へと足を踏み入れた。


「ハンス、ちょっと手を貸せ」


進軍の最中、俺は物流を担うハンスを呼び止めた。俺は別に偉いわけじゃないが、これからの物資移動の効率を考えれば、彼がこの力を持つのが一番自然だ。


「マサルさん、これは……?」 「俺のスキルの派生、『アイテムボックス』をお前に付与する。これから狩る魔物を全部ぶち込め。お前が一番これを使いこなせるはずだ」


ハンスの手のひらに淡い紋章が刻まれた直後、森の奥から巨大なオークの群れとフォレストウルフが姿を現した。


「よし、全員バレットの準備! 俺が動きを止める、トドメはお前たちが刺せ! 遠慮なく魔力を使い切れ!」


俺がバレットを連射し、オークの膝を砕き、ウルフの足を止める。そこへ、幹部たちと土魔法部隊が一斉に各属性のバレットを叩き込んだ。


「いくぞ! 2の5乗、32連射だ!」


カイルの風バレットがオークを貫き、エレンの土バレットが厚い皮膚を粉砕する。ハンスは手に入れたばかりのアイテムボックスを駆使し、戦場を駆け回って巨大な死骸を次々と収納していく。誰もが必死だった。魔力を底まで使い切り、限界を超える感覚を共有した。


数時間の激闘。森のあちこちで、レベルアップの光が次々と立ち昇った。全員の魔力の底が抜け、劇的な成長を遂げた。俺は「鑑定」で、一新された仲間のステータスを確認した。


【ステータス確認:パワーレベリング完了】


マサル(22歳・男): Lv.15 / HP 850 / MP 900


カイル(24歳・男 / 幹部・風): Lv.8 / HP 350 / MP 400


エレン(21歳・女 / 幹部・土): Lv.9 / HP 420 / MP 500


マルコ(28歳・男 / 幹部・火): Lv.7 / HP 380 / MP 350


ルカ(19歳・女 / 幹部・風): Lv.7 / HP 300 / MP 380


ハンス(35歳・男 / 幹部・土・アイテムボックス): Lv.7 / HP 350 / MP 320


ソフィア(23歳・女 / 幹部・水): Lv.7 / HP 280 / MP 450


ジーク(30歳・男 / 幹部・火土): Lv.7 / HP 400 / MP 300


ノア(18歳・男 / 幹部・風): Lv.7 / HP 270 / MP 410


テオ(26歳・男 / 幹部・火): Lv.7 / HP 390 / MP 340


リナ(20歳・女 / 幹部 / 水): Lv.7 / HP 290 / MP 430


【土魔法部隊員(エレンの仲間たち)】


ガモン(26歳・男 / 班長): Lv.7 / HP 380 / MP 330


シータ(20歳・女 / 計測): Lv.7 / HP 280 / MP 450


ボリス(30歳・男 / 補強): Lv.7 / HP 410 / MP 320


カッツ(19歳・男 / 成形): Lv.7 / HP 320 / MP 360


マイ(22歳・女 / 精製): Lv.7 / HP 290 / MP 400


レックス(25歳・男): Lv.7 / HP 370 / MP 340


アン(18歳・女): Lv.7 / HP 260 / MP 440


ダン(32歳・男): Lv.7 / HP 430 / MP 310


リク(21歳・男): Lv.7 / HP 330 / MP 370


モナ(23歳・女): Lv.7 / HP 300 / MP 420


「マサル、見てくれ。魔力の巡りが今までとは別物だ」 カイルが風のバレットを手のひらで転がしながら笑う。


「これなら……さらに高度なイメージ魔法も組めるな。みんな、お疲れ様。街に戻って、次の段階へ移ろう」


俺たちは血生臭い森を抜け、自分たちが作り上げた高さ10メートルの巨大な防壁――俺たちの「絶対的な安全地帯」へと胸を張って帰還した。全員が等しく力を手に入れ、役割を自覚している。これこそが、俺が望んでいた最強の自衛組織の形だ。


幹部たちが力をつけたことで、組織はさらに自律的な成長を見せ始めた。俺は各幹部に「それぞれの部隊10名を率いて、定期的に森へパワーレベリングに向かえ」と指示を出した。俺一人が動くより、部隊ごとに経験を積ませ、全員が同じように能力を底上げしていく方が、来るべき危機に対して確実に隙がなくなる。


そして、カイルとリナが心血を注いできた「教育隊」100名の成果を確認する日が来た。


訓練場に並んだ100名は、数日前までの難民とは思えないほど精悍な顔つきになっている。カイルが前に出て、誇らしげに報告した。


「マサル、見てくれ。こいつらはもう『2の乗数』の概念を完全に理解した。今では全員が、2の7乗――つまり128発のバレットを同時に展開し、1時間連射し続けても魔力切れを起こさないレベルまで底上げされている」


カイルの合図で、100名が一斉にバレットを展開する。空中に浮かぶ1万2800発の光の弾丸。圧倒的な物量だ。


リナが率いる部隊も、カイルの部隊と遜色ない練度を見せている。 「私たちの部隊も準備はできているわ。いつどんな危機が来ても、全員が同じようにバレットで迎撃できる」


俺は「鑑定」で、教育隊の中から成長の著しい数名のステータスを確認した。


【教育隊・主要メンバー(成長後)】


カイル(24歳・男 / 教育隊長): Lv.8 / HP 350 / MP 400


リナ(20歳・女 / 選抜補佐): Lv.7 / HP 290 / MP 430


ロイ(21歳・男 / 教育隊): Lv.5 / HP 220 / MP 280 「2の7乗、完全に脊髄に刻みました。いつでもいけます」


サラ(19歳・女 / 教育隊): Lv.5 / HP 190 / MP 310 「128発、同時射出可能です。魔力管理も徹底しています」


「いい成果だ。これで街の守りは鉄壁だな」


俺は頷いた。幹部たちは部隊を引き連れて森でレベルを上げ、教育隊100名も圧倒的な火力を手に入れた。全員が等しく強力なバレットを使える。特出した誰かがいなくても、組織として危機を排除できる体制が整った。


高さ10メートルの防壁の上には、教育隊が隙間なく配置され、いつでも一斉射撃ができるよう備えている。


組織が自律して強くなり、防御が完成されたことで、俺はやっと心置きなく「さらに高次元なイメージ魔法」の研究に没頭できる。それが俺にとっての、絶対的な自衛の形だ。



幹部や教育隊だけでなく、街を守る「閃光の礎」の全メンバーに定期的なパワーレベリングを徹底させた。俺も、幹部も、新人も、この街を維持するための「役割」が違うだけで、命の重さも立場も対等だ。全員が等しく力をつけることで、誰か一人が欠けても崩れない強固な組織を作る。それが、来るべき危機に備えるための最善の策だ。


森での定期的な遠征を繰り返し、全員がバレットの練度と魔力を引き上げた結果、組織全体の底上げが完了した。


ハンスに持たせたアイテムボックスには、レベリング中に回収した魔物の素材が整然と積み上げられている。これもまた、彼の「役割」がもたらした重要な成果だ。


「鑑定」で、現在の全メンバーの平均的な成長度を確認し、報告する。


【閃光の礎:全体ステータス平均報告】


マサル(22歳・男 / 役割:魔法開発・総指揮) Lv.15 / HP 850 / MP 900


幹部陣(10名 / 役割:各部門管理) 平均 Lv.8 / HP 360 / MP 390 (カイル、エレン、マルコ、ルカ、ハンス、ソフィア、ジーク、ノア、テオ、リナ)


土魔法防壁部隊(10名 / 役割:防壁維持・強化) 平均 Lv.7 / HP 340 / MP 350 (ガモン、シータ、ボリス、カッツ、マイ、レックス、アン、ダン、リク、モナ)


教育隊(100名 / 役割:主力戦闘・防衛) 平均 Lv.6 / HP 280 / MP 320 (全員が「2の7乗:128発」の同時展開・長時間連射が可能)


「みんな、いい顔になったな。レベルが上がっても奢るなよ。俺たちはこの街で生き残るための、一つの大きな仕組みなんだからな」


俺がそう声をかけると、訓練場にいた連中が各々の持ち場から笑って応える。上下関係による圧迫感はない。ただ、自分たちの役割を果たすための力が備わったという自信が、そこにはあった。


高さ10メートル、厚さ5メートルの巨大な防壁。その上には、交代制で絶え間なく教育隊のメンバーが配置され、128発のバレットをいつでも放てる体制を維持している。


組織が自律して動き、全員が平等に強くなった。これでようやく、俺はさらに踏み込んだ「イメージ魔法の極致」を探求する時間を確保できそうだ。



狩った魔物の素材を無駄なく活用し、街の自給自足を完璧にするため、新たな役割を持つ部隊を組織した。俺も幹部も部隊員も、全員がこの街を支える対等な一員だ。それぞれの専門技能(役割)を磨くことが、結果として全員の生存率を高める。


まず、ハンスのアイテムボックスに溜まった魔物を専門に処理する「解体部隊」を編成した。


「ハンス、集めた魔物をこいつらに引き渡してくれ。丁寧に解体して、素材ごとに仕分けるんだ」


【解体部隊:10名】


役割: 魔物の解体、素材(皮・骨・角など)の選別。


運用: 状態の良い皮や骨はギルドに卸して街の運営資金に変え、肉は食料部隊へ回す。


平均ステータス: Lv.5 / HP 240 / MP 220


班長・ギル(32歳・男): 「元解体屋の腕を見せてやるぜ。バレットをナイフ代わりに使って、一ミリも無駄にせず剥いでやる」


次に、生きるための基本である「食」を支える二つの部隊を組織した。


【食料部隊:10名】


役割: 解体された肉の調理・保存加工(燻製・塩漬けなど)、配給管理。


平均ステータス: Lv.5 / HP 210 / MP 250


班長・ニーナ(26歳・女): 「1000人分以上の食事、任せて。水属性のバレットを応用して、一気に肉の血抜きと洗浄を済ませるわ」


【農耕部隊:20名】


役割: 防壁内の空き地での耕作、野菜や穀物の栽培。


平均ステータス: Lv.5 / HP 260 / MP 240


班長・トト(40歳・男): 「土魔法部隊と連携して、最高の畑を作った。土バレットを細かく撃ち込んで土を耕し、収穫量を倍にしてみせる」


これで、外敵を防ぐ「防壁」と「教育隊」、物流の「ハンス」、そして「食糧」と「資金」を生む部隊が揃った。


【閃光の礎:追加部隊ステータス報告】


解体部隊(10名): 平均 Lv.5 / MP 220


食料部隊(10名): 平均 Lv.5 / MP 250


農耕部隊(20名): 平均 Lv.5 / MP 240


「よし、これで衣食住と防衛、すべての歯車が噛み合ったな」


俺は執務室で、各部隊の報告を平等に受け取った。誰が上で誰が下ということもない。ただ、解体された皮がギルドを通じて金に変わり、農耕部隊が育てた野菜が食料部隊の手で料理され、それを教育隊が食べて壁を守る。この循環こそが、俺が求めていた「死なないためのシステム」だ。


システムが完成し、自治領が活気づく中、防壁の上に配置されたルカの索敵班から緊急の連絡が入った。


「マサル! 街道の向こうから、王国の紋章を掲げた一団が近づいてくるわ。騎士団の先遣隊よ!」




王国の紋章を掲げた一団が、地響きを立てて街道を進んでくる。白銀の甲冑に身を包んだ騎士が20数名。その後ろには、馬車が数台続いている。


俺は10人の幹部たち、そして非番だった教育隊の連中と共に、高さ10メートルの防壁の正門前へと向かった。俺たちが横一列に並んで待っていると、騎士団の先遣隊が鼻先で馬を止めた。


先頭に立つのは、いかにも「貴族」といった風貌の、傲慢そうな中年の男だ。彼は巨大な防壁と、そこに整然と並ぶ俺たちを交互に見て、不機嫌そうに鼻を鳴らした。


「私は王都より派遣された調査官、バド・ガルカスである。この地の領主が連絡を絶って久しいが……この壁は何だ? それに、貴様らのような平民がなぜ武装してここに立っている?」


男の声は拡声魔法も使っていないのに、辺りに響き渡った。


「マサル、どうする?」 隣に立つカイルが、静かに腰の魔導具に手をかけた。背後の防壁の上では、ルカの合図で教育隊のメンバーがすでにバレットの展開準備に入っている。


「落ち着け。まずは話し合いだ。俺たちは戦いたいわけじゃない、『自衛』しているだけだからな」


俺は一歩前に出て、調査官を見上げた。俺もこいつも、命の重さに変わりはない。ただ、向こうはそれを勘違いしているようだが。


「俺はこの自治領の管理を任されているマサルだ。前の領主なら、不祥事の末に今は地下で反省してもらっている。この壁も、自分たちの身を守るために自分たちで作ったものだ。見ての通り、ここはもうあんたらの知る『領地』じゃない」


調査官の顔が怒りで赤く染まる。 「反逆か! 平民の分際で領主を捕らえ、勝手に壁を築くなど言語道断! 今すぐ門を開け、武装を解除しろ。さもなくば、王国の軍勢がここを平らげることになるぞ!」


背後でマルコやエレン、部隊員たちが一歩前に出る。誰一人として、その脅しに怯える者はいない。


「平らげる、か。悪いが、この壁はあんたらの想像よりずっと硬いし、俺たちのバレットはあんたらの槍よりずっと遠くまで届くぞ」


俺は静かに「鑑定」を使い、敵の戦力を把握した。


【敵勢力:王国調査団・先遣隊】


調査官バド(45歳・男): Lv.3 / HP 120 / MP 80


王国騎士(20名): 平均 Lv.12 / HP 450 / MP 150


装備:魔導強化甲冑、鋼鉄の長槍


従者・御者(10名): 平均 Lv.1


騎士たちのレベルは俺たちの幹部より高いが、数と「弾数バレット」の圧倒的な差を分かっていない。


「……最後通告だ、調査官。俺たちは平穏に暮らしたいだけだ。大人しく引き返すなら、何もせん。だが、一歩でもこのラインを越えるなら、俺たちは全力で『自衛』させてもらう」


俺が地面に線を引くと、防壁の上で12800発のバレットが同時に起動し、空が眩い光で埋め尽くされた。



調査官バドは、防壁の上を埋め尽くす1万2800発の光弾を見上げ、顔を真っ青にしながらも、その傲慢な態度を崩そうとはしなかった。


「な、なんだこの数は……! 貴様ら、魔法の使い方も知らぬ平民が、まやかしの術で我らを脅すつもりか! 報告にないぞ! この地の領主からは『従順な羊ばかりだ』と聞いていたのだ!」


「報告? 現場の状況すら掴めてないのか。報連相ほうれんそうも満足にできない無能が調査官とはな」


俺は呆れて溜息をついた。こいつは、王都の混乱で前王がすでに退任し、体制が激変したことすらまともに理解していないようだ。


「バドと言ったな。あんた、古い命令書を握りしめてここに来たのか? 俺たちはすでに、自治権を認められている。これは正当な権利の行使だ」


「な、何を馬鹿な……! 平民に自治権など、歴史上ありえん! 虚偽だ、明白な虚偽である!」


バドが喚き散らし、背後の騎士たちが動揺して槍を構え直した。その瞬間、俺は静かに合図を送った。


「カイル、エレン。こいつを拘束しろ。話が通じない馬鹿を野放しにするのは、自衛上のリスクだ」


「了解だ、マサル。こいつの頭を冷やしてやるよ」 カイルが風のバレットを足元で炸裂させ、砂煙を上げさせる。その隙にエレンが土のかせを突き上げ、バドの両手足を地面に縫い付けた。


「ぎゃああ! 何だ、この魔法は! 離せ、無礼者め!」


バドが地面に這いつくばり、騎士たちが助けに入ろうとするが、防壁の上の教育隊100名が一斉にバレットの照準を彼らの足元へ下げた。


「そこまでだ、騎士諸君。あんたらは『何も聞いていなかった』だけだろう? 王都に戻って、誰が今のトップなのか、そしてこの地がどうなっているのか、自分の目で確かめてから報告し直せ。次は警告なしで撃つ」


俺は拘束されたバドを見下ろした。 「あんたが王都でどんなに偉いつもりでも、ここではただの『不法侵入者』だ。ハンス、こいつを地下の『前領主』と同じ部屋にぶち込んでおけ。二人で仲良く現状報告の書き直しでもさせてろ」


「はいよ、マサルさん。情報が遮断された役人同士、いい反省会になりそうだ」


ハンスがバドをアイテムボックスから出した縄で縛り上げ、引きずっていく。騎士たちは圧倒的な弾幕と、事実を知らされていない不安から、拘束されたバドを見捨てて逃げるように撤退していった。



バドを地下に連行し、騎士団の先遣隊が逃げるように去っていくのを見届けてから、俺は幹部10名を執務室に集めた。


窓から見える巨大な防壁と、その上で整然と警備にあたる教育隊の姿。一見すれば平和だが、さっきの調査官の無能っぷりを見て、俺の胸中には危機感しかなかった。


「……なぁ、この国は本当に大丈夫だと思うか?」


俺がポツリと漏らすと、幹部たちは顔を見合わせた。


「先ほどのバドの様子を見る限り、王都の混乱は想像以上ですね。前王が退任したことすら、現場の騎士に伝わっていない。組織としての体を成していません」 行政管理のマルコが、苦い顔で資料をまとめる。


「俺は別に偉くなりたいわけじゃない。ただ、みんなで平和に、死なずに生きたいだけだ。だが、あんな連中がのさばっているようじゃ、国民の安全なんてどこにも保障されない」


俺は地図を広げた。


「報連相すらできない中央政府が、地方の難民や領民を救うはずがない。あいつらにとって俺たちは、ただの『管理対象』か『納税マシン』でしかないんだ。俺たちが自分たちで防壁を築き、農業を始め、自警団を組織したのは正解だったな」


カイルが力強く頷く。 「ああ。マサルが仕組みを作ってくれたおかげで、俺たちは『羊』ではなくなった。だが、国が腐り落ちれば、その火の粉がいつまた飛んでくるかわからない」


「だからこそ、役割分担をさらに徹底するぞ。平等な仲間として、誰が欠けてもこの自治領が回るように、より強固なシステムを作る。国が守ってくれないなら、俺たちがこの壁の内側を『世界で一番安全な場所』にするしかないんだ」


俺の言葉に、エレンやリナ、ハンスたちもそれぞれの覚悟を秘めた表情で頷いた。


「ハンス、解体部隊と農耕部隊の成果をさらに加速させろ。備蓄を増やし、王都が飢えても俺たちが困らないようにする。ジーク、バレットの予備魔導具の量産を急げ。テオとノアは周辺情報の収集を密にして、次に来るのが『軍』なのか『避難民』なのかをいち早く察知しろ」


「了解だ、マサルさん」 「わかってるわ、任せて」


誰もが対等な仲間として、自分の役割を再確認していく。国への期待を捨てたことで、俺たちの結束はより一層強まった。



幹部たちの顔を見渡すと、皆が俺の言葉を待っていた。窓の外では、自分たちの役割を懸命に果たす仲間たちの姿が見える。だが、中央の腐敗は俺たちが想像していた以上に深い。


「……このままではマズい。あの無能な役人の姿が、この国の末路だ。国民の安全が保障されない以上、俺たちがこの小さな壁の中に閉じこもっているだけじゃ、いつか濁流に飲み込まれる」


俺は地図の中心を指で叩いた。


「領地を拡張し、組織を抜本的に改める。国にするつもりはなかったが、このままでは大切な仲間を守りきれない。……『国』を作るぞ。自分たちの命を自分たちで守り抜くための、真の自治国家だ」


その宣言に、一瞬の静寂が訪れた。だが、誰も反対する者はいなかった。それどころか、カイルやエレンの目には、覚悟を決めた強い光が宿っていた。


「わかった、マサル。俺たちはどこまでもついていく。それが俺たちの『役割』だ」


俺は頷き、新たな組織図をテキストで書き出した。


【新生・自治国家『閃光の礎』組織改編】


総指揮マサル: 国家の進むべき方向の決定、新魔法の研究。


内務省マルコ: 治安、行政、地下監獄の管理。


防衛省(カイル、エレン):


教育隊カイル:主力戦闘部隊、バレット1000連射の追求。


防壁部隊エレン:外壁の維持、領地拡張に伴う新防壁建設。


物流・財務省ハンス: アイテムボックスを駆使した物資流通、ギルドへの素材卸売、通貨管理。


厚生省(ソフィア、リナ): 医療支援、教育隊の選抜、住民の共感度管理。


生産省(解体・農耕・食料各部隊): 班長(ギル、トト、ニーナ)による食糧自給率100%の維持。


情報通信局(ルカ、ノア): 索敵、街全域の魔導通信網、周辺諸国の情報収集。


技術開発局ジーク: 武装強化、魔導具の量産。


警備局テオ: 開拓区の監視、不穏分子の排除。


「いいか、国といっても王を立てるわけじゃない。俺たちは全員が平等な仲間だ。ただ、規模が大きくなる以上、役割を明確にしないと機能しなくなる。ハンス、領地拡張のために、近隣の未開地や放棄された村を調査しろ。そこも俺たちの防壁の中に取り込む」


「了解だ。アイテムボックスがあれば、遠征の資材運びも余裕だぜ。マサルさん、いや『総帥』、すぐにでも動く」


「総帥なんて呼ぶな。俺はただのマサルだ」


俺は苦笑しつつ、各幹部に具体的な行動指示を出した。俺たちの手で、この腐った国の真ん中に、誰もが死を恐れずに済む「理想の共同体」を築き上げる。その第一歩だ。



俺は執務室の窓を開け、防壁の外に広がる光景を睨みつけた。 そこには、王都の混乱から逃れ、救いを求めて集まった一万人の民衆がひしめき合っている。彼らは数日間、俺たちの出方を待っていた「前に来た奴ら」だ。


「全幹部、配置につけ! これより外にいる一万人を順次受け入れる。ただし、これは慈善事業じゃない。俺たちは『国』を作る。全員に役割を与え、この街の一部になってもらうぞ」


俺は正門の前に立ち、カイルの教育隊とリナの選抜班を左右に展開させた。


「一人ずつ、俺が『鑑定』する。カイル、武器を持つ者は即座に預かれ。リナ、適性を見極めて部署を振り分けろ。……そして、以前言った通りだ。特権を主張する『貴族』は、即座に拘束して地下牢へ叩き込め。この国に、ふんぞり返って飯を食うだけの席はない」


重々しい音を立てて正門が開いた。俺は全魔力を眼に集中させ、一万人という膨大な「中身」を暴き、選別を開始した。


【一万人:大規模鑑定・選別報告】


一般市民(約9,800名)


判定: 全員受け入れ。


役割割当:


土魔法部隊エレン: 力自慢、石工、土木経験者。即座に「第二外郭」の建設に従事。


農耕部隊トト: 農民、植物知識のある者。拡張エリアの開墾。


解体・食料部隊ギル・ニーナ: 器用な者、調理経験者。1万人分の食事と素材処理を分担。


教育隊候補生カイル: 若く、計算能力と魔法適性が高い者。


没落貴族・利権を主張する役人(約150名)


「私は〇〇男爵だぞ!」「平民と同じ列にするな!」と喚く連中。


判定: 即時拘束。マルコの部隊により地下牢へ連行。前領主やバドとの「相部屋」行き。


武装略奪者・間者(約50名)


武器を隠し持ち、内部からの略奪を画策していた者。


判定: 教育隊により制圧。武装解除後、厳重監視下での強制労働。


「離せ! 私は王都の直参だぞ! 貴様らのような下衆が……!」


喚き散らす貴族の首根っこを、ハンスが冷めた顔で掴み、地下へ引きずり出していく。 「お前が何様だろうと関係ねえよ。ここでは『役割』を果たせない奴は、ただの重荷なんだ。地下でしっかり反省してな」


地下牢は、今や王都の「馬鹿」がひしめき合う、皮肉な社交場と化していた。


「マサルさん、一万人の住居と炊き出し、手配完了したわ!」 ニーナの食料部隊が巨大な鍋を並べ、受け入れたばかりの民衆に役割(仕事)を与えながら飯を配る。


「いいか! ここに上下はないが、働かない奴に食わせる飯もない! 自分の役割を果たし、この街を守れ!」


俺の怒号が響く。一万人という巨大なエネルギーが、一つの「国家」という歯車として回り始めた。俺も、幹部も、今日入った難民も、全員が対等な「閃光の礎」のパーツだ。


これでようやく、この地は単なる自治領を超え、自立した「国家」としての鼓動を始めた。



一万人の受け入れという激務の中、俺は「鑑定」を止めることなく、冷酷にその言葉を放った。


「カイル、リナ。聞き逃すな。武器を隠し持っている略奪者、および内部を混乱させる目的の間者は、その場で即決しろ。拘束する手間も、地下牢の飯も無駄だ。俺たちの平穏を脅かす癌細胞は、入れる前に切り捨てる」


「了解だ、マサル。容赦はしない」


カイルが冷徹に頷き、教育隊のバレットが正確に狙いを定める。一万人の列の中で、混乱に乗じようとした不穏分子たちが次々と音もなく消されていく。慈悲などいらない。俺たちは生き残るためにこの場所を作ったんだ。


【避難民一万人:最終選別・処刑報告】


一般市民(約9,800名)


判定: 全員受け入れ。即座に「役割」を与え、労働に従事。


役割: 土木、農耕、解体、教育隊候補生へと振り分け完了。


没落貴族・官吏(約150名)


判定: 全員地下牢へ。前領主やバドと共に「平等」の教育中。


武装略奪者・間者(約50名)


判定: 即時処刑。


処置: カイル率いる教育隊の精密射撃により、門の外で排除。


「ぎゃああ! 待て、私は……!」 何かを叫ぼうとした間者の眉間を、カイルの風バレットが貫く。死骸はハンスの指示で速やかに処理され、一万人の列は何事もなかったかのように進み続ける。


「マサルさん、不純物の掃除は終わったよ。これで中に残ったのは、俺たちのルールに従える奴らだけだ」


ハンスが血のついた地面を土魔法で覆いながら報告に来る。地下からは、新入り貴族たちが「無礼だ!」「この私が!」と喚く声が聞こえてくるが、それも厚い土の防壁に遮られて消えていく。


「よし。これで一万人が俺たちの『国家』に組み込まれた。エレン、増えた労働力を全部使え。第二外郭の防壁を、明日の朝までに形にするぞ」


「任せなさい! これだけの人数がいれば、私の土魔法のイメージを共有させて、一気に組み上げられるわ!」


エレンが新しく加わった数千人の石工や工夫たちを指揮し、街の外側にさらなる巨大な壁の礎を築き始める。一万人という巨大な歯車が、俺という総指揮のもとで、上下の区別なく凄まじい速度で回転し始めた。

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