第7話 幸せな空間×ストロングポイント
フィールドの激戦に視線を戻して3分が経とうとした時。
─ガシャンッ!!
衝撃音と共に1本の剣が宙を舞った。長い手合わせの果て、フリューゲルさんがフレイ君の剣を弾き飛ばしたのだ。
互いに少し肩で息をしながらその剣を目で追い、大きく息を吐いた。さっきまで周囲を支配していた、肌がピリつくほどの殺気と闘志は消えた。勝負は決した。
「…俺の負けだ。楽しかったよ」
「相変わらずお前との手合わせはくたびれるよ…いい勝負だった。また強くなったな」
「アニキもな」
玉のような汗がしたたり落ちる清々しい表情の中でがっちりと握手を交わすと、誰が始めるでもなく会場からは溢れんばかりの拍手と声援が飛びかった。俺も拍手を送った。
文句のつけようがない素晴らしい手合わせだったのだ。こうなるのは当然ともいえる。
逆もまたしかりで、当てが外れその様子が面白くないのであろう一部の人間はそそくさとその場から離れ、オブライエン隊長とのその取り巻き達は『フンッ…あとは全て第七騎士に任せる』と吐き捨て、足早に会場から姿を消した。その後ろ姿に『承知しました!』と返すトリスタン試験官。
少ししてその場の熱気は落ち着き、通常の試験へと戻った。試験官の案内の元、受験者は散り散りになっていく。今の熱気に当てられてか、受験者の顔はどこか先ほどよりもやる気と熱意が増していた。それは俺やミラちゃんやライナーも例外ではなく。全員の瞳からは覇気が漏れ出ていて、滾る気持ちを胸に収めておくのに必死だった。
マナ操作力のテストや筋力測定や武器の扱い方を簡単に見ていく基本的な試験をこなす。手ごたえはばっちりで受験者相手の手合わせに。
「では次。エドガー・アクセル・スターリースカイ、マーク・シルヴァーストーン。前へ」
誰が相手だろう?とフィールドに足を踏み入れる時にチラッと相手を探せば一組の男女がフィールドに近づくのが見れた。
「マーク、しっかりしてきなさいよ!応援してるから!」
知人らしき女性に笑顔で喝を入れられていた。黒髪のウェーブヘアを揺らしながら少年の肩を軽く叩き、薄紅色の髪をした少年はそれに笑顔で応え、サムズアップして見せている。なんかいい雰囲気だね。
あの人が俺の対戦相手のマーク君か。良い目をしている、強そうだ。
というか形は違えでど、さっきもこれに近いような光景を見た気が…。
「任せてくれ、リーシャ。いっちょやったりますよ。だから…いつものあれが欲しい」
「もう仕方ないわね!」
リーシャと呼ばれる少女は少し呆れたように言った後、マークの腕をグッと引っ張り自分の方へと引き寄せる。その瞬間、周囲に環境音に紛れ『チュッ─』というリップ音が空気を震わせた。リーシャさんがマーク君の頬にキスをしたのだ。
「おぉ…」
一瞬の静寂の後に周囲が軽くざわめく。受験者だけではなく試験官も含めて。そりゃ試験会場で、それも人がそれなりに集まっている場所で頬っぺたとはいえキスシーンが突如湧いてくるとは思ってもみなかっただろうから。正直驚いたし、普通に声が漏れた。
でも周囲の反応など意に反さず、見つめ合ってカラッとした笑顔で笑いあい、満足そうにしている。青春時代の延長戦のようなあまりにも眩しい様子にどこか心が温かくなったが、出鼻をくじかれたのは間違いない。
改めてリーシャさんに背中を叩かれフィールドに送り出されたマーク君は、少しへにゃっとした笑顔から一変して一気にやる気に満ちた表情へと変わった。どうやら今ので完全にスイッチが入ったようだ。
「エドガー君の相手は随分と熱烈ですね」
「そうだねー…あぁいう眩しいのを見るのは初めてかも。でも悪くないね」
「ですね。私にはできないので、軽く応援だけはしておきます。健闘を祈ります」
そう言って軽く肩をもんでから軽く叩き、送り出してくれた。
「エヘヘ、ありがとう!それだけあれば十分だよ!」
キスしてもらわなくとも、ミラちゃんからこれだけの事をしてもらえれば十分やる気が溢れてくる。まるで空を飛んでいるかのような浮遊感に包まれ、触れてくれた場所が少し熱い。
俺にとってミラちゃんからの応援ほど心強いものはない。
「いいね!良い目をしているな」
向かい合うと俺に視線を向けたマーク君が嬉しそうに笑った。そう言う気持ちはわかる気がする。だって俺と同じように大切な人から声援を受けたマーク君の瞳は爛々と輝いている。きっと俺も似たような輝きを放っているだろうから。というか俺がさっき心の中で感じた全く同じだ。まさかここで被るとは。
「そっちも良い目をしているよ」
「リーシャから応援されたら、こんな目にもなるさ。まぁ…君にもその内わかる。今はまだその域には達していないからわかなくていいが、覚醒の兆しはあるって感じだな」
「…ほぇ?」
満足げにそう話してくれはするが、残念ながら今の意味はよくわからない。『その域』とか『覚醒の兆し』とか。位置に着くまで歩きながら少し考えてみるが、答えは出ず。
今はわからなくていいと言っていたし、手合いに気持ちを切り替えよう。いざ向き合う。
互いに支給された剣を構え、まっすぐ向ける。
「準備は整ったな…では、始め!」
開始の号令が響いた瞬間、勢いよく地面を蹴った。
幾度も剣は交錯し、火花散る金属音が響き渡る。自慢のスピードを生かし手数で攻めてみるが上手く対処させ、所々で体術も混ぜられ返され互角の展開。でも、それが楽しい。
一瞬でも油断すれば、一気に持っていかれるのは目に見えている。明暗の境界線の上を綱渡りしている緊張感が、生きているというか実感を与えてくれるから。
だが今回はただの手合わせ。互いに決定打の無いまま時間は過ぎて残り数秒。
『無心で』─剣を振った。
「そこまで!」
号令と共に動きを止めた。
俺の剣がマーク君の首元に添えられている。だが、逆もまたしかりで。マーク君の剣も俺の首に添えられている。引き分けだ。勝てなかったけど実力は発揮できた。
「やるな…まさか相打ちになるとは思わなかったぜ」
「ナイスファイト!楽しかったよ」
互いの健闘を称えて拳を合わせた。本当に清々しい気分だ。先ほどのフリューゲル兄弟の手合わせに、完全に影響されてしまったようだ。
「名前を呼ばれたから知っていると思うが、改めて名乗る。俺の名前はマーク・シルヴァーストーンだ。これからも付き合いがありそうだ、よろしく」
「こちらこそよろしく、マーク君!俺はエドガー・アクセル・スターリースカイ」
「スカイ国でスターリースカイか、良い名前だな。それと俺の事は呼び捨てで良いぜ。俺も呼び捨てするし。ところで、エドガーよ」
「ん?」
「生き急いでいるなんて粋じゃねぇなぁ。あの子の事を悲しませるなよ」
「…」
わかっていたんだ。最後の攻撃が相打ちになるのをわかっていて、突っ込んでいったのだという事を。決して最初から引き分けを狙っていたわけではない。ただその時にチャンスだと思ってしまったのだ。自分の命を使ってでも仕留めて相手を倒すのだと。
もし実戦なら、互いの刃が喉元を同時に切り裂き、その場で命を落としていただろう。
「近くにいてくれてるんだ。もしもの時は、フッと顔を思い出してから行動しろよ。それじゃ、大切にしろよ」
リーシャさんの元に戻っていくマークの表情は凄く嬉しそうで、それでいて幸せそうだった。迎え入れたリーシャさんも嬉しそうで、1つの家庭を見ているかのようで。その空間だけ切り取られように周りの世界とは違いすぎて、どこか異質でもあった。
頭の中では言われた言葉が何度もループし続けていて、俺はただその姿を見続けてしまった。
(いつか俺にも…あの時みたいな…)
「エドガー君」
フッと我に返り振り返れば綺麗なスカイブルーの瞳とぶつかった。一瞬だけ見えてしまった。どこか寂しそうで、儚げな色が。
心臓が締め付けられるように圧迫感を抱く中でドキリと跳ねた。申し訳なくて苦しい。
だがその色はすぐに消えて、いつもと変わらない光を放った。
「お疲れ様でした。さぁ次の試験を受けに行きますよ」
「…うん!」
いつかこの光を失わせてしまうかもしれないのが怖い。たとえ自分の命と引き換えでも、敵を倒すとあの日からずっと決めていたのに。そんな思いが確実に変化していくのを感じながらミラちゃんに案内されるがままついていった。
次の試験は弓矢。試験内容はいたってシンプル。30メートルほど離れた的に3射放つというものだ。
学校などで基本的な扱いは学んできているし大して難しいものではなく、ほとんどの受験者が的に命中させていた。他の試験で喧騒な会場だが、的に当たる度にタンッ!という心地の良い命中音が他の音をかき消して響き渡る。
すでにこの試験を終えたライナーが満足げな表情で帰ってきた。
「お疲れ様~。どうだった?」
「まぁ適度にできたさ。今の所、副隊長の弟であるフレイ・フリューゲルが全ての矢を、ほとんど真ん中に命中させているのが最高成績だな。小耳にはさんだ事だが、マナの出力も優秀らしい。剣術だけじゃなく、それに加えて弓矢の腕前も良いとは…恐れ入ったよ」
純粋に心の底から敬意を込めてそう呟くライナーの視線の先には、エステルさんと笑顔で話すフレイ君やフリューゲル副隊長とシュヴァルツ補佐官の姿があった。
もし噂が本当ならミネルバは俺の敵の事を知っているかもしれない。もしかしたら、敵そのものなのかも知れない。その時は、彼らと戦う未来もあるのだろうか。まぁ…可能性はないだろうね。
「ミネルバには国直属の護衛隊が付くけど、それに奢ることなく自分たちの身を守れるようにと鍛錬を欠かさないと聞いているわ。ミネルバの民の多くは騎士相当の実力を持っているとも噂されているけども、間違いではなさそうね」
「飛竜と共生した上で、欲深い人間からも自分の身を守る。強い人達だね」
きっとミネルバの人たちは、さっきのオブライエン隊長みたいな欲深い人達が絶えず近づいてきていたんだろう。周囲の視線や反応がその苦悩を容易に想像させる。きっとこの想像すら軽くなるほどの苦悩の中で、信念を貫くために並々ならぬ鍛錬を積み、心も体も強くしていて生きてきただろう。あの動きを見ていれば、何となくだけど生き様が見えたような気がした。
「次、ミラ・コート・フライハイト!」
「はい!」
次に呼ばれたのはミラちゃんだ。昨日の動きを見ていて、どれほどまでの腕前を見せてくれるのか楽しみだ。今にも待ちきれないように胸がドキドキしてくる。
「頑張ってね!応援してるよ!」
「得手ではありませんが、貴方の心に火をつけるくらいにはできますよ。しっかり見ていてくださいね」
そう言うとミラちゃんは定位置に向かう。
心に火をつける、か…。今の俺の心理を見透かしているかのように…いや、完全にわかり切っているのだろう。本当に人の事をよく見ている。なんだかそれが嬉しくて、悩んで曇っていた心がスッと晴れたような気がした。
(この期待には応えなくてはいけないよね…!)
そう決意を固めている間にも瞬時に弓を引きしぼり、射る体勢を整えていた。素早く美しい、よどみのない動作で肘を曲げ、少しもブレていない綺麗な姿勢を作り出す。基本に忠実で綺麗で、教科書にお手本として載るべきだよ。
構えた瞬間には矢は放たれ、的に向かって矢が当たる瞬間にパンッ!─と力強くも心地のよい命中音が空気を切り裂いた。見事にど真ん中に命中。
軽快な音とその所作に見ていた人からは感嘆の声が漏れた。
余韻に浸ることなく素早く次の矢をセットし、続けざまに残りの2本も射る。カラッとした命中音が響き渡る中、全ての矢は的の真ん中に深く突き刺さった。ほとんど矢の間に隙間はなくくっついている。凄い!
周囲からは感嘆の声が上がり、拍手も沸き起こった。
「おめでとう、合格だ。さっき出た最高成績とほとんど同じだな。甲乙つけがたい。今回の受験者は有望だな…次!エドガー・アクセル・スターリースカイ!」
試験官が思わず舌を巻く中、軽く頭を下げて満足げに帰ってきた。
「お疲れ様!得手じゃないなんて謙遜してたけど、凄く良い射撃だったよ!構えも綺麗だったし」
「いえいえ。この10年を鍛錬に費やしただけの実力は身についてますので、これくらいは当然です。良い感じに御膳立てはできたので、あなたの実力でこの喝采を起こしてください」
「ミラちゃん…随分とプレッシャーをかけてくれるね。ちょっと足が震えてくるよ」
いや本当に。結構緊張してきた。
にこやかにプレッシャーをかけてくるなんて…凄く楽しそうないい笑顔で言っているし、間違いなくわざとだ。
「足が震える程度で狙いを外すほど、やわじゃないでしょうに。それに少しくらい緊張してもらわないと。あの弓を射る姿は好きなので、適当にされてほしくありませんからね」
「確かに得意だけど、あの少しだけ見ただけで俺の腕が見抜けるなんて流石だね」
「フフン。『大切な人』ですからね、あれだけ見れば十分わかります。エドガー君だってわかってくれたじゃないですか」
爛々と煌めく可愛らしい得意顔は太陽の光りよりも眩しくて、純粋で綺麗だった。
あの弓の腕とこの笑顔で、俺の心は宣言通り燃え上がっていた。
「そっか…なら、俺も『大切な人』の期待に応えるために本気を見せないとね!頑張ってくれるよ!」
「いってらっしゃい。一瞬たりとも見逃しませんよ」
俺は単純な人間だ。さっきまでの緊張は、ミラちゃんからの応援により消えた。むしろ今はやる気に満ち溢れている。人生最高の行射をしてみせる。それにしてもミラちゃんは俺の扱いがうまい。
試験用の弓矢を受け取り位置へと向かう。優しいそよ風が頬を撫で、陽の光が温かく包み込んでくれる。そして、大切な人が見ていてくれる。弓を射るにはこれ以上ない良い日だ。
「準備はできたな。では、始め!」
開始の号令と共に弓を構えると同時に、何の溜めもなく矢を放った。
糸を引いたように矢は直線に伸びていき、的に深く突き刺さる。同時に『パンッッ─!』と空気を割き、高く重厚な命中音が肌を揺らす。その音に少しだけ周囲がどよめく。
「なんだ今の音…」
「あんな速い弾道見た事ねぇよ…!同じ試験用の弓矢なのに何だこの違い!?」
「むしろ今の矢の軌道、気持ち悪いくらいに真っすぐじゃなかったか?」
周囲のざわめきをかき消すように次の矢を放つ。もう次の矢はセットし終わっている。
矢はみるみると先の矢の筈に吸い込まれるように向かい、ビキッ!と鈍く重い破裂音に近いような音が木霊する。先に射った矢の筈に放った矢が突き刺さり、その身を少し引き裂いて、まるで2つの矢が連なっているように見える。
『継ぎ矢』。
普通は狙ってもできるものではない、奇跡的な出来事とされる。
一瞬の静寂の後に一気に歓喜の声が湧き上がった。
「おぉー!!スゴイ!!」
「偶然にしてもできるなんてな…初めて見た。マナや魔法を使っても制御が難しくてほとんど成功しないっていうのにスゲェな、おい!」
「今回の受験者は粒ぞろいだな。セットも速いぞ!」
驚くのもまだ早いよ。
言葉が飛びかう中、1歩下がってから次の矢をセット。弓を引き搾り、指に力を入れる。
だがその時、一陣の風が吹いた。髪をなびかせ、土埃が舞い上がらせる。
でもこの程度は俺にとっては、そよ風と同じだ。
指を弾き、矢は放たれた。一陣の風を切り裂き、糸を通すように的に向かい、そのまま先の矢の筈に命中。
重厚音と共の一射前の矢の筈に突き刺さり継ぎ矢となった。その衝撃で最初の矢は破裂音と共に弾け飛ぶ。
(いいね!完璧に狙い通りだ!)
そう笑った瞬間、先ほどの倍以上の割れんばかりの歓声が巻き起こった。1回見れるだけでも稀な光景を2連続で見れたのだから、こうもなるだろうね。
歓声に混じり信じられないという驚愕の声が飛んでいく。喝采の波が包み込み、大地を震わせた。声の波で肌が震えるなんて初めてで、なんだかヒリヒリする。
チラッとミラちゃんを見れば、満足そうに微笑んでいて静かに頷いてくれた。その表情が本当に綺麗で可愛くて、胸のあたりがじわりと熱くなる。
もしかしなくとも、ミラちゃんは俺の暗い気持ちを拭き飛ばそうとしてくれたのかな。本当に感謝してもしきれない。恩人だ。
「ありがとう、ミラちゃん」
「私は何もしていませんよ。ただ応援していただけです」
そう言いつつもその表情は少し得意げで、満足した様子だった。言葉と表情のギャップが良い!
「にして全てが完璧でしたね。構えも、セットの早さも、命中精度も。風すらも関係なく狙った場所に当たる。鍛錬を積んだとはいえ、ここまで行くと魔法よりも魔法ですね」
「エッヘン!百発百中です!」
胸を張って答えるけど、弓矢の腕は誰にも負けない。狙った場所に必ず当てる事ができる。
生きる決意を決めたあの日、まずは自分の事を知ろうと思った。どんな才能が有り、何ができて、どうすればその強みを生かせるか、敵に届くのか。自分自身を研究した。
その結果わかったのは剣術や魔法の才能はほどほどだけど、弓矢の才能は自分でも引くほどに飛び抜けていたという事。物語の主人公じゃん、と思ったくらいだ。さらには風のマナを持って生まれたからか、特に何もしていなくとも風の動きも読めし、どう利用すればいいかも本能的に理解できた。
これを生かさない手はない。その強みを中心に、その日から死に物狂いで鍛錬を積んだ。他をおろそかにせずに、長所を極限まで伸ばす。魔法をこの弓矢の腕を強化、サポートするために学んだ。
結果が、今さっきの光景という事だ。狙った場所に絶対に当たる。
そしてそんな事もあってか…今はまだ明かせない『奥の手』も─。
ここまで来れたのも、ミラちゃんが心の支えになってくれたからだ。どんなに辛くとも大切な人がいてくれるから頑張れた。あのかけがえのない時間を過ごしていなかったら、こうはならなかったと確信できる。
「本当に、よく頑張りましたね」
そう言って、優しい手つきで頭を撫でてくれた。穏やかで慈愛に満ちたスカイブルーの瞳が、陽の光に照らされて俺をまっすぐ捉える。
撫でられ心地が最高に良い。なんか日向ぼっこをしているかのような心地良さ。
何よりもミラちゃんに褒められたのが嬉しすぎる。もう死んでもいいかな?と思ってしまうほどに有頂天になれてしまう。
「エヘヘ、ミラちゃんのおかげだよ~ありがとう」
撫でるのも好きだけど、撫でられるのもいいね。ずっと撫でられていたし、ずっと撫でていたい。なんだかこんなに幸せ事が続くなんて、明日は雪でも降ってくるんじゃないだろうか。
「でも…」
フッと撫でる手を引っ込めて俺の耳に口を近づけ、誰にも聞かれないように呟く。
「それが前座になるくらいの『奥の手』…隠してますよね?どんなのかはわかりませんが」
その声色はどこか嬉しそうで、心が躍っているみたい。
しかし流石ミラちゃんだ。誰にも感づかれ事すらない事を気付いている。一番最初に気付いたのがミラちゃんなのが、たまらなく嬉しくてついにやけてしまった。
敵を討つために、誰にも見せていない俺の奥の手に気付くなんて。
「…ミラちゃんには敵わないなぁ。いつか見せてあげるね」
「フフフ、楽しみしてますよ。約束ですからね」
俺とミラちゃんだけの誰の耳にも届かない約束の言葉。また生きていく理由が増えた。
でもこれを見せる時は、俺はもしかしたら生きてはいないのかもしれない。できるだけ頑張ってみる事にする。
「…」
「どうかしましたか?」
「ミラちゃん、お願いがあるんだ」
生きるために、手は尽くそう。
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